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レイカノ。~『霊(アレ)』に好かれてから、俺の人生が180度変わった件~  作者: すみ いちろ
第一章 呪霊解きの世界……。『ウィズ ゴースト レインボー』
32/88

開けてはイケない……。




「オープン!! さあ、(カエデ)!! 頑張って!!」



「オープン!! (カエデ)くん!! ファイっ!!」



 な、何を言うのか、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃん……。


 『扉の向こうには何かがいる』とは、某有名妖怪(アヤカシ)アニメの次回予告編で、いつも主人公さんが、言ってた台詞(セリフ)じゃあないかっ!!



 いる。


 確実に、いる……。


 俺の全身を鳥肌(トリハダ)と寒イボが覆う。


 いや。

 真夜中の高速道路バス(ストップ)は寒く、ほとんど何も無い周辺は、まだ雪が降り積もっていて、俺の吐く息だって白い。


 俺の後ろ側へと続く山道が暗く、不気味だ。


 トンネル内の蛍光灯の白い(あか)りと、自動(センサー)で点いたり消えたりするトイレ内部の明かり。


 もはや、俺が開ける前から、共用スペースの車椅子用のトイレの明かりが、ナニかに反応して、既に(とも)っているではないか。


 い、一体、な、何に反応している?


 言わずもがな……あぁ、言わずもがな。


 俺よ。答えないでくれ、俺。


 ものすごく開けたく無い。


 普段の俺なら、絶対開けない。


 俺は、右腕に巻かれたデジタル電波腕時計を見る。


 午前『02:15』と、表示されている。


 始まった? あぁ、始まった。始まりましたよ? 


 『丑三時(うしみつどき)』だ。


 泣く泣く震える手に力を込めてトイレのドアノブを頼りなく握りしめる俺。


 仕事だ。あぁ、これは仕事なのだ──


 薄れゆく意識の中で、しっかりせねばと想う俺。


 アレな存在ならば、もはや、強力な夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんが側にいる。


 俺は、開けるだけ……開けるだけ……。


 そっと、俺は、トイレの扉を開ける。



「え!?」



 俺は、目を丸く見開いて驚く。


 美しいご婦人が、可愛らしい女の子と手を繋ぎ、頭を下げている。



「ママ……」



 ふへっ!? 

 しゃ、しゃべった!?

 

 小さな可愛らしい女の子が、指をくわえて、お母さんと想われる美しいご婦人の顔を覗き込むようにして、見上げている。



「この度は、遠路はるばる、このような辺鄙(へんぴ)な場所にお越し頂きまして、本当にありがとうございます……」



 顔を上げたご婦人。

 う、美しい……。



「何、(カエデ)? 黙ってないで、何か言ったら?」



「そうだよー。(カエデ)くん。心拍数上がってるよー?」



 後ろで、野次馬(ヤジウマ)のようにして、俺を(はや)し立てる夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃん。


 い、いや。

 俺だって、アレな存在な人と話すのは、君たち以外じゃ初めてなんだ。

 しかしながら、この度も想うが、目の前のアレな美しいご婦人と小さな女の子は、至って普通に見える。

 生きてる人と何も変わらない。

 ただ、やっぱり、二人とも(うっす)ら半透明なお姿をされているワケだが……。



「初めまして。『(かのう)グループ』常世(ワールド)道先案内(ナビゲーション)相談員(コンサルタント)川岸(かわぎし)と申します……」



 俺も、ご婦人と女の子に深々と頭を下げて、「持ってけ!」と会長(じいさん)から手渡された『幽霊(ゴースト)名刺(カード)』を二人に手渡す。


 なんでも、会長(じいさん)が霊気と波動で特別に加工して作ってくれた名刺(カード)らしい。


 アレな存在である方々でも、もちろん触れられるし、会長(じいさん)の浄化の念も込められていて、触れるとアレな存在な方々も気持ちがとても落ち着くらしい。



「本日は、本当にありがとうございます。川岸さん。いつもとは違って、今日は特別な方が起こしになられると、予感しておりました……」



(遠隔未来予知型だ。そうだよね? 黒音(クロネ)?)



(だねー? 夢葉(ユメハ)。そう遠くはない未来を離れた場所から感じとれる能力(チカラ)だね)



 何やら、俺の後ろで、ボソボソと二人で話している夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃん。


 俺は、もっぱら、この日のために久しぶりにスーツを着て、ネクタイを締めている。


 夢葉(ユメハ)もメイド服からタイトな正装(ミニスカスーツ)にいつの間にか着替えてて、イメチェンをしている。


 もちろん、黒音(クロネ)ちゃんも、夢葉(ユメハ)と同じタイプのタイトな正装(ミニスカスーツ)を身に(まと)い、出来る秘書風なスタイルを装っている。


 どうやら、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃん。

 『(ファースト)浄霊指令(ミッション)』のために、二人で相談して『(かのう)グループ』常世(ワールド)道先案内(ナビゲーション)相談員(コンサルタント)秘書(アシスタント)として俺と働いてくれるようだ。

 二人とも「たゆんたゆん」の「ぱっつんぱっつん」だ。



「初めまして。秘書課主任秘書の金井(カナイ)と申します」



 ん? 金井(カナイ)? 

 あれ、夢葉(ユメハ)? 

 あ、そうか! 本当の名前を知られてはイケないから、仮名ね?


 あー。俺、本当の苗字、言っちゃったな。

 ま、いっか。

 

 夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんは、いざという時の頼みの綱だし、俺は本当の名前を明かした方が、後々の信頼にも繋がるだろうし。

 

 まあ、良いだろう。

 

 アレな方々とは言え、もともとは、普通の人だ。

 ビジネスは、信頼が大事。

 そうでなくとも、人間関係を築く上じゃあ、信頼関係(ラポール)を築くのが、基本だ。



「初めまして。秘書課『常任』主任秘書の黒井(クロイ)と申します」



 あ、黒音(クロネ)ちゃんの苗字は、黒井戸(くろいど)だから、黒井(クロイ)ね。

 黒音(クロネ)ちゃんも、夢葉(ユメハ)に負けじと、出来る秘書風に言う。

 それにしても、『常任』主任秘書とは!

 言うねー。黒音(クロネ)ちゃん。

 バチバチに、夢葉(ユメハ)にかぶせて来たねー。黒音(クロネ)ちゃん。



「なにとぞ、よろしくお願い致します……」

  


 夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんに、頭を下げるご婦人。

 ところで、このご婦人は、ご自分の名前を名乗らなかった。

 何か、ワケありなのか?


 ワケありだからこそ、こんな真夜中の高速道路のバス(ストップ)に居続けたのだろう。


 しかし、何が起こるか分からない。


 気の抜けない俺は、「たゆん」と揺れるご婦人のセーターの上の膨らみを見つめながらも、この美しいご婦人と女の子の素性を聴くことにした。













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― 新着の感想 ―
[一言] できる秘書風……誰か描いてくれ( ´∀` )
[一言]  読ませていただきました。 なんだか、凄い展開になってますね~。 退魔師のようなお話へと。 最初のお話から、この展開を考えていたらすみさん・・・いえ、清さん凄いなあ。 新ペンネームもいいで…
[良い点] 「たゆんたゆん」に「ぱっつんぱっつん」まで足されましたか( *´艸`) 除霊がビジネス的で面白いです! この親子同どうなっちゃうの!?
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