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レイカノ。~『霊(アレ)』に好かれてから、俺の人生が180度変わった件~  作者: すみ いちろ
第一章 呪霊解きの世界……。『ウィズ ゴースト レインボー』
30/88

初仕事……。




 深夜のバス停。


 それも、高速道路の、だ。


 夢葉(ユメハ)の実家でもある会長(じいさん)たち『(かのう)グループ』の棲む山の裏手には、高速道路が走っている。


 とは言え、例のアレが出る高速道路のバス停には、夢葉(ユメハ)の実家から、1時間以上もかかる。


 俺は、社用車の四駆の軽トラに、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんを乗せて運転している。


 狭い車内。


 予想どおり三人は、夢葉(ユメハ)と俺と黒音(クロネ)ちゃんの横並び。

 山道の凸凹(デコボコ)のたびに、「たゆゆんたゆゆん」揺れる二人のアレな胸を余すことなく見て味わう俺。


 しかしだ。


 これから向かう現場は、『アレ』が、出ると言う。

 

 いや、しかしながら、俺はもう既に『アレ』なお二人さんを両隣に乗せて運転しているワケだが。


 緊張感が、走る。



「あー。やっぱり流行りのアニソンは良いねっ! 萌えるー!」


 

 夢葉(ユメハ)が、俺のスマホで、お気に入りアニメ(ソング)を勝手にポチポチと(いじ)る。



「あ、コレなんて良いんじゃない? (タマシイ)揺さぶられるよねー?」



 黒音(クロネ)ちゃんも、社用車の軽トラに搭載された『有線(ユーセン)』のボタンを(いじ)くり、ランキング入りした曲が車内に流れる。



 さながら、ゴーストな車である。


 誰もいない深夜の山道をアニメ(ソング)と最新ランキング曲を爆音にして爆走する軽トラ。


 怪奇である。


 深夜の山道を歩く人はいないが、対向車が来ないことを祈る。


 

「ちょ、待って。いる」


 

 最初に言ったのは、夢葉(ユメハ)だった。



「あー。いるね」



 続いて、黒音(クロネ)ちゃんが、言う。


 俺は、慌ててアニメ(ソング)とランキング曲を消して、車速を落とし車を徐行させる。


 山道の180度は曲がる峠に切り立つ急カーブ。断崖絶壁。


 そのカーブ手前には、積雪時に車のタイヤにチェーンを装着させる区間がある。


 その場所──


 いる。

 

 老女だ。


 俺の目にも、はっきりと()えたが、車のハイビームが薄ボンヤリと立つ老女に当たった瞬間──


 老女は、雪が溶けるようにして消えた……。


 

「お知らせ的なアレだねー。こっから、すんごい急カーブだからさ? 減速させて崖に落ちないようにって」



「だねー。夢葉(ユメハ)の言うとおり。たぶん、ここらで、事故? あったんじゃない?」



 背筋が凍る。


 会長(じいさん)からは、あらかじめ、この辺でアレが『出る』地図(マップ)を手渡されていた。


 『浄霊指令(ミッション)』の他にも『出る』ポイントを定期的に巡回し、浄化して欲しいとの会長(じいさん)からの依頼。


 俺が、アレの『出る』地図(マップ)を震えながら手に取ると、ちょうど赤く目印(マーキング)された場所(ポイント)が、今のこの場所だった。



 俺は『浄霊指令(ミッション)』の前に、まずこの場所で初仕事をしようと、想う。


 軽トラからすり抜け降りる黒音(クロネ)ちゃんと、器用にシートベルトを外して車のドアを開けて降りる夢葉(ユメハ)


 最後に車から降りた俺は、あらかじめ用意しておいた紙コップに天然水を入れ、お線香を一本手に取り、火を灯す。


 なんて、言葉かけすれば良いのだろう……?

 

 事故を防ぐためのお知らせ的なアレなら、成仏していただくのは、どうなんだ?


 事故防止のための、この世での「役割」というものを、しっかり果たされている老女……さん。


 しかしながら、胸に秘められた痛みと悲しみは、今も拭い去れないものなのだろう。


 だから、こうやって……出てきてくれる。


 俺は敬意を払って祈る……。



「ありがとうございます。感謝申し上げます。この世での務めを果たされている貴方(あなた)様に、たくさんの幸せが訪れますように……」

 


 俺が、手を合わせていると──

 

 俺の鼻先に、漂う線香の煙の匂いが、「ふわん」とかかる。

 

 夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんも手を合わせ、目を閉じて祈っている。


 夢葉(ユメハ)の実家の寺に帰ったら、会長(じいさん)に、この場所(ポイント)に大きな「減速(ブレーキ)!!」の看板を取り付けてもらうようにしようと、俺は想う。


 小さな初仕事を終えた俺と夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんは、再び軽トラに乗り込み、『浄霊指令(ミッション)ポイント』へと向かう。


 再び、人気アニメ(ソング)と最新ランキング曲を音量(ボリューム)最大限にして、深夜の山道をひた走る。


 俺は、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんの「たゆんたゆん」な胸の谷間を見るのを忘れない。


 

(カエデ)?」



(カエデ)くん?」



 後から「シてあげるから」と、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんに(さと)された俺は、しっかりとハンドルを握りしめ、前を向いて真夜中の山道を『浄霊指令(ミッション)ポイント』へと向けて、ひた走り突き進む。













 





 








 

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― 新着の感想 ―
[一言] 逆に目撃してビックリして、ブレーキとアクセルを踏み違えて事故る事態になる可能性もあるのでは(;'∀') そしてなんというクエスト感(;'∀') しかもアニソン大音量……カオスやな(;'∀'…
[良い点] 初ミッション、成功おめでとうございます……! 切ないですがやっぱり成仏してもらうのが一番ですからね(*´-`) 老女さん、ありがとう! 一度でいいからそんな軽トラに乗ってみたい気もします(…
2022/03/20 07:56 退会済み
管理
[良い点] サブクエ達成ですね◎ 好き勝手やってる社内カオスですね(*^^*)
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