出勤前……。
楓と黒音、私の三人とで話をしながらも、車の外のどうしても見たことのある風景に戸惑う。
楓の会社って……。
楓が会社の駐車場に車を停めた時、私はギョッとした。
私の実家はお寺で、介護施設なんかも経営してる。
楓の仕事の話を聴いた時、まさかとは想ったけど……。
楓の職場は、私のお父さんが経営している法人運営の老人ホームだ。
なんか、気まずい。
楓が、仕事の鞄を持って車のドアを開けると、黒音もさっさと車のドアをすり抜けて外に出る。
私もすり抜けられるのに、シートベルトやら久しぶりの車で、なかなか降りられずに困っていると、楓が私の乗っている助手席側のドアを開けて、シートベルトを外してくれた。
「着いたよ? 降りれる?」
楓が、私に声をかける。
楓……。
「う、うん……」
私の頭が、ポー……とする。
私はアレだけど、きっと、フラフラもするし倒れたりもするだろう。
楓の職場が、私のお父さんの経営する施設で戸惑ったけど、楓の何気ない優しさもあって、余計に私の頭がホワホワした。
さっきまで微妙な気分だったけど、好きな人にこんなことされたのは、今までもアレになってからも初めてだったので、気分が上がる。
そう想うと、アレとして楓と初めて出会ったとき、なんて大胆なことをしてしまったのだろうと想う。
キスもしてしまったし。
しかも、私から……。
「良かったねー。夢葉。良いなー……」
黒音が、羨ましそうな目で私を見る。
いや、恨めしそうな目で私のこと見てない? 黒音?
私と黒音を見てた楓が、気まずそうにしている。
やっぱり、私と黒音と楓の三人の関係は、気まずい。
スッキリしない。
車の中では黒音に、分かったような口ぶりで話をしてた私。
アレな存在だから仕方ないとか、黒音とは喧嘩しない方向で、自分をなだめるようにして話してたけど。
「お爺ちゃん」から、お別れの挨拶の時に言われたこと。
大事にしようって想えたから、黒音が私のいない隙に楓にチョッカイ出しても、気にしないように努めてたけど。
なんか、スッキリしない。
黒音だって、100パーセント気持ちを割り切れてるはずが無い。
「お爺ちゃん」には、悪いって想うけど……。
私がいない隙に、楓に黒音が何か変なコトしたのは、明らか。
カマかけるのは得意じゃないけど、なんか、黒音、楓にキスしたとか言っちゃってるし。
『願い玉』? 何それ?
私は、取り繕ってただけ。
私も黒音もアレだから、仕方ないんだって、割り切ろうとしただけ。
「お爺ちゃん」に、言われたように……。
なら、こうやって、楓に憑いて行かなくったって、本当は良かったはずなのに……。
「ハァ……」
私は、ため息をつく。
「何? 夢葉。さっきは、ちょっと見直してたのに、やっぱり楓くんのこと独り占めしたいんじゃない?」
「何? 黒音。アンタだって、楓を独占したい気持ち、抑えられられないんじゃない?」
なんか、やっぱり、黒音とは合わない。
相性、悪いのかな……。
「お爺ちゃん」に言われたこと、守れそうにない……。
まだ、黒音、なんか言おうとしてるし。
「ハァ……。私は大人的発想で、楓くんを夢葉と共有出来れば良いのにって、想ってたのに? アンタのことだって可愛いって、ちょっと想ってたのに?」
「何それ? 悪魔的発想の間違いじゃない? 悪いけど、黒音は私の趣味じゃないから」
あー……。
私って、なんか黒音にアタリ強すぎじゃない?
なんか、私って、性格悪くない?
取り繕ったり、黒音を傷つけるようなこと言ったり。
黒音? あれ、黒音? 泣いてる?
あー……。アノ部分を「たゆんたゆん」させて泣いてるよ……。黒音。
黒音って、悪魔的変態なトコあるけど、打たれ弱いんだよねー……。
ヤラカしちゃったな……。私。
「夢葉。黒音ちゃん。ごめんね。そろそろ時間だから、憑いて来てくれないかな? 俺は仕事だけど、適当に休んでて良いし、見てるだけで良いから……」
泣きながら「たゆんたゆん」揺らす黒音のアノ部分と、私の「たゆんたゆん」との間に、楓が割って入る。
私の「たゆんたゆん」が、ジーンとする。
黒音も、一瞬、ビクッとする。
「「 はーい!! 」」
私と黒音が、元気良く楓に返事した。
機嫌が良くなる私と黒音。
ふたりとも、アレだけど、単純だと想う。
私たちって、魂な存在な分だけ、素直なのかな……?
悪魔的契約とかがあるのなら、もはや、術者の楓に見事に使役されている私と黒音なのかも知れない。
私と黒音が、楓の後を「たゆんたゆん」と、憑いて行く。




