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レイカノ。~『霊(アレ)』に好かれてから、俺の人生が180度変わった件~  作者: すみ いちろ
序章 始まり……。『ウィズ ファントム ハート』
19/88

締めつける想い……。




「分かってたよ……。黒音(クロネ)……」



 (うつむ)いている夢葉(ユメハ)の顔の下で、アノ部分が「たゆん」と静かに揺れている。

 泣いているのか、夢葉(ユメハ)の声が震えている。

 夢葉(ユメハ)の顔を見れず、俺は(うつむ)く。


 ズキン……。

 

 痛む俺の胸が、何て言って良いのか分からずに黙る。


 俺、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんとの間に沈黙が流れる。



黒音(クロネ)は、(カエデ)のモノになりたかっただけ。(カエデ)を自分のモノにしようとしたんじゃない……」



 (うつむ)いたまま夢葉(ユメハ)が、言う。

 まるで、自分自身の気持ちを理屈で押さえ込むようにして。



「私は、(カエデ)を独り占めしたかった。でも、それは、生きていればの話。アレな私たちが(カエデ)を独占してしまうことは、生きている(カエデ)にとっては、良くない」



 淋しげに言葉を綴る夢葉(ユメハ)


 俺も顔を上げれない。


 自分の手のひらを握った(こぶし)(ツメ)が食い込む。


 痛むが、口唇(くちびる)を噛むようにして我慢する。



「何、言ってんの? 夢葉(ユメハ)? 夢葉(ユメハ)(カエデ)くんを独り占めしたって、私には関係ないよ? 私は、(カエデ)くんと強い絆を結びたかっただけ。悪魔的契約でも何でも、(カエデ)くんとの縁が深まるなら、それで良かったんだよ……」



 黒音(クロネ)ちゃんが、車の窓の外を見るようにして、独り(つぶや)く。

 黒音(クロネ)ちゃんも、自分の気持ちを理屈で押さえ込む。


 

 雨が降って来た。


 

 黒音(クロネ)ちゃんも、泣いているんだろうか?

 黒音(クロネ)ちゃんの声が震えているように聴こえる。


 俺は、顔を上げれない。



 しばらく時間が経ったが、それほどでもない間に車内の空気が、よりいっそう重く冷たくなって行く。

 

 外の雨のように。




「それよりさ? 夢葉(ユメハ)。アンタ、お爺ちゃんとかいう人と話は済んだの?」



「えっ? あ、うん……」



 俺、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃん。


 気まずい三人の空気を変えるようにして、俺も気になっていた「お爺ちゃん」? のことについて、黒音(クロネ)ちゃんが話題を切り変えた。



「お、お爺ちゃんにはさ。いろいろと教えてもらって、お世話になったからさ? 最期のお別れの挨拶じゃないけど、元気でねって。今度、いつ会えるか分からないからさ。近い内、成仏しちゃうかも知れないし……」



 夢葉(ユメハ)が、そう言った後。

 しばらくの沈黙の後に、黒音(クロネ)ちゃんが、口を開いた。



「ふーん……。で、お爺ちゃんって、夢葉(ユメハ)のお爺ちゃんなワケ?」



「んーん……。知らない人」



「え? 知らない人?」


 

 どういうことなのかと、俺も想う。

 黒音(クロネ)ちゃんも、怪訝(けげん)そうな表情をしている。

 俺は、黙って、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんの会話を聴く。



「んー……。ほら? 黒音(クロネ)もそうだったけど、アレな存在な私たちって、ほとんどが例に漏れず、(マイナス)霊気(オーラ)を放ってるよね?」



「まぁ、確かに……。夢葉(ユメハ)も?」



「認めたくは無いけど、まあ、そうだったね?」



「ふーん。で、今は?」



(カエデ)と、出会って、変わったかな……?」



「分かる! 夢葉(ユメハ)もか……。実は私も、そうなんだー。分かりみ、深いよね?」



「うん……」



 なんだか、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃん。

 二人の空気が一気に変わった。

 

 「お爺ちゃん」についての話題が消えそうになる。




「あ、そうそう。夢葉(ユメハ)。『願い玉』って、知ってる?」



「え? 知らなーい」



「自分のさ。(タマシイ)こめてさ。お腹の中で霊気を集めて、好きな人にキスして、口移ししてあげちゃうんだよ?」

 

 

「えー? 何それ? なんか、えっちー!」



 なんか、夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃんが、きゃぴきゃぴ会話をし始めた。

 

 ん?

 

 そう言えば、黒音(クロネ)ちゃんが、俺に口移しして飲ませたモノは、『願い玉』なるモノだったのだろうか……?


 

「ほら? 緊張した時、手のひらに『人』って書いて飲むふりするお(まじな)いあるじゃん? アレと同じで自分の霊力に願いを込めて、(カエデ)くんにキスして飲ましちゃうんだよー!」



「えっ? 黒音(クロネ)? (カエデ)に、シたの? 抜け駆け? いつの間に? ずっるーい!!」



「えへっ。ごめん、夢葉(ユメハ)。でも、こうでもしないと(カエデ)くん、どっか行っちゃいそうで……。でも、(カエデ)くんにキスしたのは、夢葉(ユメハ)の方が先だよ? 私が(カエデ)くんのモノになっただけで、(カエデ)くんが私のモノになったワケじゃないから、大丈夫だよ!」



「あー。なんか、私。黒音(クロネ)に、まるっと丸め込まれたようなカンジ……。ま、いっか。私たちお互いアレだもんね。結びつきとか欲しくなるよねー。分かる……」



 だんだん、ふたりの言ってることが、分からなくなって来た俺。

 俺だけ一人、ふたりの会話の中に取り残され、離島に孤独に漂流しているかのような気分だ。


 とは言え、なんだかんだ言って仲の良い二人。

 夢葉(ユメハ)黒音(クロネ)ちゃん。

 もともと、こんな感じで、仲の良い二人だったのかも知れない。


 会話しながら、「たゆんたゆん」揺らし合う二人。

 

 俺の胸の痛みが、下半身を締めつける痛みへと変わる。


「お爺ちゃん」の話題は、いつの間にか消えていた。













 

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― 新着の感想 ―
[一言] 会話の推移が楓君に把握できないスピードで(;'∀') 次元が異なる存在になるとそうなっちゃうのか(;'∀')
[良い点] なんだかんだ仲の良い二人にほんわかしました(*´꒳`*) 黒音ちゃんが飲ませたのはそれだったのかー! 「たゆんたゆん」させながら喋る二人が可愛いです( *´艸`) おじいちゃん、結局どうな…
2022/03/10 22:39 退会済み
管理
[良い点] |ૂ•ㅿ•̀ )チラ 感想書かないって言ったけど、ちょっとだけ。 (けしてかまちょではない…よ) >俺の胸の痛みが、下半身を締めつける痛みへと変わる。 最後のこの部分がなんだか好きです…
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