表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レイカノ。~『霊(アレ)』に好かれてから、俺の人生が180度変わった件~  作者: すみ いちろ
序章 始まり……。『ウィズ ファントム ハート』
12/88

『俺』の涙……。




 (チロチロチロ……)



 目の前のアレなはずの彼女が、舌先をチロチロと出して、飲み物や食べ物を味わっている。

 しかも、重そうなアノ部分を「たゆん」とテーブルの上に乗せて。

 

 アレなはずの彼女のメイド服の胸のボタンが、なぜか外されている。

 

 (ツヤ)のあるアレなはずの彼女のアノ部分が朝の光に(あら)わになり、より一層「たゆんたゆん」している。

 じ、(じか)に視える。

 

 夜中の興奮が、呼び覚まされる。


 しかしながら、アレなはずの彼女のアノ部分の全貌(ぜんぼう)は、未だ明らかにされていない。


 彼女には申し訳ないが俺の全身の血流が、食事をしていることも手伝って、胃袋から下腹部のさらにその下──ヘソの下のアノ部分へと集まってゆく。


 

「ねぇ? 自己紹介? まだ、だったよね?」



「ん? そうだね? そう言えばそうだったね」



 俺は、目の前の彼女の声に意識を取り戻す。

 彼女は、食事中ともあって、俺の変態な妄想には気づいていないようだった。


 そう言えば、自己紹介が、お互いまだだった。

 夜中の衝撃的な出会い──いや、アレなはずの彼女との遭遇に俺は驚き、そのままお互いの名前なんて聴く余裕は無かった。

 普通に言えば、心霊体験とも言える出来事。

 たいていの人が、この世ならざる体験をしてみても、夢か幻か分からぬままに終わってしまい、それっきりなことが、ほとんどだろう。


 しかし、俺は……。



「き、君の名前は?」



「あ、それ! 有名なアニメのシーンみたいだよねー? 私の名前? 聴いちゃう?」



 アレなはずの彼女は、イスに座りながらも両足をパタパタさせて、なぜかボタンの外された重たそうなアノ部分を、テーブルに乗っけて「たゆんたゆん」させていた。



「か、可愛いなぁ……」



「えー? 聴こえなーい?」



 思わずモレ出てしまった俺の本音の(つぶや)きに対し、アレなはずの彼女が、わざとらしく左の手を左耳に添えて「聴こえないポーズ」をしている。


 俺の頭の中が、ホワホワする。

 いや、人に名前を尋ねる時は、自分から名乗るのが常識(セオリー)

 しかも、アノ名作アニメ映画のように「君の名前は?」などと聴いてしまった。

 ドキドキな展開に胸を踊らせた俺は、つい先走ってしまった。


 それにしても……。

 なんて、可愛いいんだ……。

 もはや、天使にしか見えない。



「え、あ、いや。僕から名乗るのが、先だね。僕の名前は、川岸(かわぎし)(カエデ)



 どうにも俺は、『僕』という一人称を表で使ってしまう。

 顔が、イカツイとよく女の子たちから(コワ)がられたこともあり、髪型も大人(おとな)しい感じのツーブロックにして前髪を伸ばし、出来るだけ『僕』と言うようにしていた。

 なんだか、自分自身に対し腹黒い印象を受ける。

 二面性のある自分自身に、どうにもしっくり来ない。

 けど、基本的に俺は気が小さくビビりなので、本当は『僕』が似合っているのかも知れない。

 なら、良いか。


 灰色の人生を送っていた俺にようやく訪れた春の季節。

 目の前のアレなはずの彼女。

 アレであることは、ほぼ確定している彼女だが、この際、そんなことは気にしない。

 


「ねぇ! ねぇ! (カエデ)!! 聴いてる?」



「え? あ、ごめん。さっそく、名前で呼んでくれたね?」



「もー! 何、ボーっとしてんの? 目の前にこぉんな可愛い()が、いるのに! 自分のこと考えてたでしょ? そんなことより、(カエデ)って、女の子みたいだよねー?」



「女の子? 俺が?」



「違うよー。あ、『僕』じゃなくって、『俺』って言った!」


 

「アハハ……。『俺』かぁ……。つい出ちゃったね。『俺』は『俺』で、良いのかなぁ?」



「ハァ……。良いんじゃない? 別に『俺』で。なんか、しゃべりにくそうにしてるの伝わるよ? あー、女の子に言われたことあるんだ?『僕』の方が良いって?」



「ぐっ! なんでもお見通しってワケか。なら、『俺』は『俺』で良いか……」



「そうそう! 自然体で行こうよ! (カエデ)! その方が君らしくて、似合ってるよ?」



「ぐっ! なんか、泣けて来た……」



「アハ! 泣いてないのに?」



 救われる。

 俺の長年抱えて来た小さな悩みが、溶けてゆく。

 まるで、心の中に突き刺さっていた氷柱(ツララ)が溶けて、水になり、水蒸気になって天へと昇ってゆくようだ。

 カタチのあるものは、皆、いずれ天へと昇ってゆくのだろうか?

 

 目の前にいるアレなはずの彼女も?

 いや。

 それよりも……。

 これからの時間を少しでも彼女と過ごせるのかと想うと、本気で泣けて来た。



「な、泣いてるの? ごめん。い、いや、伝わるよ? 気づいてたけど、なんか照れくさくって」



「い、いや。こっちこそ、ごめん。なんか嬉しくて……」



 俺が涙を右手で()くと、アレなはずの彼女が左手を俺の頬にあてがい、俺の涙を(ぬぐ)仕草(しぐさ)をする。



 ブーン──



 ──何か電磁波のような振動音が俺の頬に伝わり、彼女の左手の温もりが、俺へと伝わる。



「良かったね……」



「うん……」



 まるで、俺は子犬か子猫のように、止まらない涙を必死で止めようとしていた。


 そして、彼女も同じように、俺の頬に触れていた。俺の涙に。


 ほんの少しの時間だけど……。


 5秒間……。


 俺の頬に触れた彼女の温かい左手が、俺の涙を止めた。


 彼女の胸が、「たゆん」……と、揺れた。







挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)



七海糸さんが、描いてくださいました! 本作ヒロインのFAです!!


七海糸さん!! 本当に、ありがとうございますっっっっっ!!!!!!!!(*´▽`*)(っ´ω`c)(∩´∀`∩)♡♪☆彡



















 



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 我々にも、グッとくる話だぜ(´;ω;`)
[良い点] 彼女と楓くんの距離がグッと縮まりましたね( *´艸`) 楓くんの泣ける気持ち、分かりますよー! 彼女のアノ部分、やはり何か生き物のような(*゜▽゜*) 嬉しかったり怒ったりするたびに「たゆ…
2022/03/02 07:21 退会済み
管理
[良い点] すみさんの書くヒーローって、みんななんだか、かわお(かわいい)m(_ _)m
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ