アレなはずの彼女の回想……その2。
「出して……」
「えっ……?」
私ってば、彼に変なこと言ってる。
自分でも、そう想う。
だけど、彼の純粋な想いが、私へとダイレクトに伝わる。
なんて言うんだろ……。
オーラに色があるのなら、彼はピンク色。
一見、不純そうに見える彼の言動も、オーラを見れば純粋だって分かる。
それにしても……。
私ってば、まだまだ子どもなのに、なぜか、こんな時だけお姉さんみたいになる。
私が、誰かに取り憑かれているのかな?
まわりを見てみても、ソレらしいのは、私くらいなものだけど……。
いや、細かく言うと、何体かはソレらしいものがいる。
宿泊客に混じって、ダブって見える。
どの人? いや、動物とかも混じってる……。
ドレも何処か陰気で、負のオーラを放っている。
私も同類だったけど、今の私は違う。
私は、彼と出会って、変わった。
だけど、アレな者たちには、やっぱり私からは話しかけないようにしている。
普通に街中を歩くのと同じ。
見ず知らずの得体の知れない人に、初対面で何の関わりも無いのなら、話しかけ無いのが一般的だと想う。
想い起こせば……。
私も彼ら彼女らと同じだったのかな?
陰気な負のオーラを放って。
お気に入りのアノ部屋に一人、佇んでいたんだろうな。
それにしても……。
どんなアレな人たちが、居るのかと言うと……。
当時の姿を記憶の中で想い留めている者。
長い年月を経たのか、姿の変質した者。
身体のある部分だけを特徴的に見せている者。
自分の固執していた物と同化している者。
姿が視える人や感じ取ることの出来る人、自分と心の波長が同調する人にだけ、自分の心の中の傷を身体に具現化させて、存在している。
私もそうだったのかな……?
アノ部屋に居たのは……。
誰もが誰も、アレな私たちは、個人的な想いで引きこもったように存在し続けていて、どうにも近寄り難い雰囲気を、いつも醸し出している。
私が、今まで出会って来たのは、そんな感じのアレな人たちや動物たち。
それを魂のカタチとでも言うのなら、けっこうフヨフヨいて、中には取り憑かれてくっつかれている人も、よく見かける。
私だって、そうなのかな……?
彼に取り憑いてる?
深い悩み事や苦しい想いに、一緒に入って行くには、それなりの覚悟や勇気がいる。
そして、向かい合うためには、何よりも全身全霊の力がいる。
私の知る限り、アレな私たちが、お互いの心を救いあうことは出来ない。
出来ないからこそ、この世に想い留まっているのだから。
そうそう……。
目の前の彼の言ってた最近流行りのアノウイルスも、何か得体の知れない良くないものを感じる。
私たちとは違う、何処からモレ出て来たのか分からないもの。
得体の知れない……生きものでも無いもの。
最近は、アノウイルスの蔓延とともに、疫病神とか死神とか陰気な影みたいな存在が、たくさん街中を彷徨いているのをよく目にする。
目に見えるイメージとしては、よくある魂を狩るカマを持った者のイメージと同じだ。似ている。
一目で、よくない者だって分かる。
いつだったか……。
私の部屋に来た敏感な宿泊客に騒がれて困った時、仕方なく外に出て散歩してたんだけど……。
私たちみたいなアレな存在とともに、よく見かけたんだ。
一目で、ヤバいって分かったから、絶対に話しかけ無かったんだけど。
そう言えば、公園のベンチに座ってたアノお爺ちゃん、元気かな?
元気とは言っても、私たちと同じアレな存在なんだけど。
いろいろ教えてもらったな……。
「こ、ここで、出すの!? そ、それだけは流石にヤバいんじゃない?」
「え……っ?」
彼の声が、聴こえた。
しばらく、私の心の中で、時間が止まってたみたい。
私が変なこと言ったから、出勤前なのに彼が余計にソワソワして。
おトイレの方をチラチラと彼が見てる。
「シてあーげ、ないっ!」
「えぇっ!?」
「出勤前でしょ? 時間あるけど、それよりご飯ご飯っ!!」
「うっ……。そ、そうだね……」
仕方なく、残念そうに俯く彼。
やっぱり、シてあげれば良かったかな?
「しょーがないなぁ……」
私が、アノ部分を「たゆん」と揺らすと、彼が喜ぶ。
「お、おぉっ!?」
「単純だねぇ……。君は……」
私が、アノ部分を「たゆんたゆん」揺らしながら歩くと、彼も急いで付いて来る。
「ウフフ……。なんか、君は子犬か子猫みたいだね」
「えっ? もう良いよ。僕が、子犬か子猫みたいでも。僕は、君について行く!!」
「憑いて行くじゃなくって?」
「あぁ! 君に憑いて行くよっ!!」
「ウフフ……。開き直り?」
彼は、自分のことを僕って言った。
たぶん、心の中では、俺って言ってる気がする。
伝わるんだ……。
そう言えば、お互い自己紹介が、まだだった気がするなぁ。
ま、いっか。
小動物のような彼を引き連れて、モーニングサービスのあるラウンジへ入って行く私。
可愛いなぁ。彼。私より年上なはずなのに。
私の胸が、「たゆん」と揺れる……。
七海糸さんが、描いてくださいました! 本作ヒロインのFAです!!
七海糸さん!! 本当に、ありがとうございますっっっっっ!!!!!!!!(*´▽`*)(っ´ω`c)(∩´∀`∩)♡♪☆彡




