花選びの章3 五人の花姫
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花選びの章3 五人の花姫
「では先ず誰からいくか……」
「そんなにあるのかい?」
「姫君達の話を望んだのはお前だろうが!」
ぺぺんっ、と鳴った見事な音に、控えの間に詰めていた侍従達が溜息を吐いた。
恐れ多くも国王の頭をどつける人物がいるとは、慣れた彼等にも信じたくない事実である。
「城下の盛り場で流行っている、花賭け、とやらを知っているか? 誰が選ばれるかの賭けの事なんだが。その下馬評の第一位が、鶤姫だ」
「鶤家の姫だね。名前は確か……英華」
「ああ。鶤家の第三子で長女。長男は病で夭逝。二十歳の次男が後継に認定されている。英華は十七。名前の通りの美少女だ」
「大祖母が、先々王の従妹姫だった筈だよ」
鶤家は、数代前の宰相の他は、代々名将を輩出してきた武家。
王家との婚姻に数代間隔を置く事で、濃過ぎる血を避け、だが侮られぬ様に巧みな距離を保ってきた、名家中の名家である。
「近親婚を避けつつ、血が薄まらない様に、上手に伴侶を選んできているね。この鶤姫が?」
「典型的な『お姫様』だ。それも、悪い方の」
端的な竜花の説明でも、皇翼は全てを察した様だった。
笑みを消して、顔を顰める。
「お前の一年後に生まれた姫だ。その瞬間から、ゆくゆくは花姫に、と、育てられたんだろう。教養はあるが我儘放題。己が散財を当然の権利と思い、その背に民の苦役がある事を想像した事もない。周囲も、将来の王妃の不興を買わぬ様、諫めるどころか窘める程度の事もせん愚か者共揃いだ。彼女が王妃となったなら、数年で鳳の国庫は食い荒らされるぞ。己が美を鼻にかけている風もある。賭けてもいい。明日の鶤姫の花は、大輪の薔薇だろうな」
花嫁選定を「花選び」と称す理由。それは、候補の姫が「花選び」のその時、花で己を象徴する為である。
故に、候補の姫を花姫と言い、儀式の際は、鶤姫の様に家名を冠するのが通例だった。
皇翼の花姫は五人。選定者達の度重なる検討という篩を生き残った姫達である。
「駄目だよ。花は一輪、或いは一枝が原則だ」
「じゃあ牡丹だ。牡丹は百花の王だろう」
各々の花姫による趣向を凝らした花を見て、男は妻を決める。これが「花選び」の儀式である。
これ、と思った姫に跪き、花を捧げて求婚するのだ。
だが、この時妻を選ぶ男性側はどの花が誰の手によるか、実は知らぬ。
その為、過去には別の姫の花を取って求婚したという失敗談もある程である。
竜花に言わせると「政略結婚に金粉を塗して取り繕い、運命に見せ掛けた猿芝居」なのだが、それをせねばならぬ皇翼にとっては、芝居で済ませられぬ一大事である。
流石に王妃選定の際は、密かに事前情報があるのが慣例だが、これ故、求婚された姫は、二週間の猶予を以て正式な返答をする事になっていた。
蟄居して、己が王妃に相応しいか、改めて内面を問うとの建前だが、これも竜花は「政略結婚を無理やり糊塗するから無理が出来る」のだと一刀両断、にべもない。
「浪費家で謙遜を知らない。民の支持も少ないだろうね。一位なのは家柄が理由か」
「見目良い子供が欲しいなら選ぶのも一興だが。后妃には最悪だな。ああ、性格も悪いぞ」
「と言うと?」
「何度か王宮で顔を合わせた事があるが、何れも公の席ではなかったとはいえ、挨拶どころか会釈すらせん。するのは陰口だけだ」
「……殆ど付き合いがないのに、何故悪口?」
ひどく不思議そうに首を傾げた皇翼に、一つしか歳の違わぬ従姉は苦笑して見せた。
「鶤家と鷹家では、我が家の方が格が上だな」
「そうだね……というより、鷹家は王家の次だよ。君に勝る家柄の姫は国内にはいないさ」
竜花の父は先王の弟。つまり竜花は先王の姪である。
大貴族鶤家と言えど、比較にならぬ。
「文芸と政の才も、私の方が恵まれているな」
「その通り」
一体、天はどれ程竜花を愛するのか。
竜花が歌えば小鳥が集まり、琴を奏でれば獣さえ耳を澄ませ、一度舞えば花も綻ぶ、とは、かつて王宮に滞在した吟遊詩人の言である。
この賛辞は国内に止まらず、鋭い見識と学者も脱帽する博識と併せ、近隣諸国に鳴り響いていた。
「美醜の感覚は人によって異なるが、私の方が美しい……らしいな」
「僕はそう思うよ」
照れもせず、だが世辞でなく、皇翼は素直に頷いた。
竜花の美は可憐に近い。だが、漲る活力と陽性の生気が、儚さを見事に覇気へと転じていた。
その美は正しく、不壊の白珠。
革の如き強靭さと、金剛の如き強固さを誇る、華麗な白百合である。
一方の英華は、若くとも妖艶さが漂う。彫りの深い派手な顔立ちに、赤褐色の瞳と髪の持ち主だが、歳に不相応な雰囲気は、望む物全てを与えられてきた者の退廃さに所以すると言えよう。
竜花より幾分背は高いが、既に色濃い美食の影で、豊満さが目立っていた。
「他にもあるだろうが、まあ、これ等が鶤姫の気に障るらしい。以前、戦装束の儘で擦れ違った時、侍女を相手に、散々悪口を言ってくれた。態と私に聞こえる様に言うのだから、性格が悪いといっても間違いなかろう」
「……因みにその内容は」
静かな皇翼の問い。その底に流れる熱に、果たして竜花は気付いただろうか。
「大将軍の装束だったから、見間違えたのではないと思うが、確か『鳳の王宮も地に堕ちたもの、兵卒が我が物顔で闊歩するとは』だったかな。侍女が『姫様、あれはもしや、陛下に仇なす叛徒ではございますまいか』と答えたら、『違いない。でなければ、餓狼の如き匹婦が、ここにいる訳はない』とか言ったな。ああ、血の臭いが移るから早くこの場を立ち去ろうとも言っていたな。死霊の影が見えるとも」
不快を通り越して呆れ果てた竜花だった。
「戦場で敵を倒せば返り血も浴びる。大勢殺せば、死霊が纏わり付いても不思議はあるまい」
「――君は何故平然としているんだ!?」
到頭堪え切れなくなったのは皇翼である。
「鶤姫は何を考えている! 自分の今の生活があるのは、誰のお蔭だと思っているんだ! 君が……鷹家の姫が戦場に立ち、敵を倒してくれるから、今の安寧があるんじゃないか! 一体自分を何様だと思っているんだ!」
「それが解らんから、我儘姫と言うんだ」
「何故君は腹を立てない!」
「代わりに怒ってくれる者がいるからな」
この一言が覿面に効いた。
激昂から我に返った皇翼は、恥じ入った様に息を吐いた。
「何様か。僕が言う言葉ではないね。君に一番助けられているくせに、何も返せない僕が」
「お前はそうして己を顧みる事を知っている。優柔不断や過剰な卑下は言語道断だが、常に己に問う事は、上に立つ者には欠かせぬ才だ。それが出来るお前を、私は従姉として誇りに思うぞ。良い王になってくれれば、一番嬉しい」
国王皇翼を育てたのは、天賦の才に恵まれた竜花だと言っても過言ではない。
だからこその言葉に、皇翼は内心を押し殺して頷いた。
「君の望みは僕の願いだ。……必ず叶えるよ」
「私は鳳で一番恵まれた姫だな」
心の底からの笑顔が、皇翼には何より嬉しい。
「……でも、何故そんな姫が花姫に?」
冷静になって考えれば、尤もな疑問である。
「偏に家柄と血筋だな。それに、宮廷での勢力図というものもある。鶤家は数代前に宰相が出たとはいえ、あくまでも武門の家。だが、ここ数年の武勲は、鷹家の公主に独占されて、勢力争いの主流からは外れつつある。仮に鶤姫が王妃となっても、大勢には影響が、と言うのが実情だ。次期鶤主は老獪な重臣達と争える程の器ではないし、先ず経験が足りん」
鶤家凋落に一役買っている――元凶とも言う――筈の鷹家公主当人は、言葉に遠慮が無い。
「次は鶯姫だ。鶯春明。鶯家の長女で、確か十六。九つ下に弟が一人。次期当主認定はされておらんな。仲睦まじい姉弟だぞ」
「……何年か前の観桜会で一度会ったかな」
竜花に及ばぬまでも、皇翼は中々の記憶力を誇る。それが苦労して記憶野の引き出しを掻き回す様に、竜花は然もありなんと頷いた。
「覚えておらんのも無理は無い。春明は殆どの行事に参加せん。外出も稀だからな」
「……思い出した。確か君は、あちらのご姉弟に竜弦琴の指南に行っていたね」
「ああ。春明は淡い金髪に矢車菊の様に青い瞳の、人形の様に愛らしい姫だ。性格も素直で優しい。彼女を悪く言う者を、私は知らん」
鶯家は、歌舞音曲に優れた人物を多く輩出。官職に就かぬ代わりに、各名家に指南役を送り込み、緻密な人脈を培ってきた家である。
時折天才肌の奇人が出るらしいが、大方は文人らしい穏やかな性格の者が多く、現鶯主も温厚な人柄で人々に好かれている。
先代は先王の詩文の指南役を務めたが、皇翼の代になってからは、王の側からは少々遠ざかっていた。
理由は勿論、竜花がいるからである。
五歳の時、竜花も貴族の姫君らしく、鶯家から歌舞音曲の師を招いた。
国王の姪の老師役には、二胡の名奏者として名高かった現鶯主の弟が遣わされたが、何と竜花は僅か一年で二胡の免状を取得。
以降、琴に笛、鼓と楽器と名の付く物ならあらゆる物でお墨付きを得、舞踊や書道等の芸事でも天賦の才を発揮した。
鶯家の老師陣が、師事に及ばず、と、竜花に膝を折ったのは八歳の時である。
以後、竜花は独学で研鑽を重ね、十歳で竜弦琴の難曲「冠翔」を弾き熟し、他国の使節団を招いた宴席で、その見事な腕前を披露。
王宮の楽士も、竜花の前では演奏を尻込みすると言われ、今では逆に、竜花が、鶯家の姉弟に竜弦琴を教授する立場である。
無論、皇翼の諸芸の師は竜花であった。
「鶯姫を譬えるなら、霞草かな。目を引く派手さはないが、大人しく控え目で、心が優しい。妻に、と望む男は多かろうが……彼女が王妃になったなら、未来にあるのは悲劇だろうな」
皇翼は首を傾げた。
ここまで褒めておきながら、王妃には不適格とは奇妙な話である。
「鶯姫は良くも悪くも内向的。平たく言えば気が小さい。数年前の記憶しか無いのも当然、内気が過ぎて日常の殆どを屋内で過し、家人以外との接触が極端に少なくてな。人見知りも激しくて、私が初めて鶯邸を訪れた時なんぞ、悲鳴を上げて乳母の背に隠れた程だ。今は竜花姉さまと慕ってくれて、実に可愛いが」
「それは……王妃には致命的な欠点だね」
王妃の務めは、国王の妻として後継者を育成するだけではない。
後宮は無論の事、王宮の隅々までを把握し、女官や侍従等の、所謂「奥向き」の臣だけでなく、国内の臣民の動きにも敏くなければならぬ。
外交面でも、政治上の駆け引きを王や重臣が行う一方で、諸国の大使やその家族を接待するのは、王妃の重要な役目。
人見知りが激しい王妃など話にならぬ。
「春明は聡明だ。だが、惜しむらくは気の弱さだな。玉座を呑んで掛かると言う発想が出来ん。王冠の重さに押し潰されるのが目に見えている。もし彼女を王妃に据えたら、数年で心を病むだろう。お前が中流貴族ならば、私は一番に彼女をお前の妻に挙げただろうが」
「生憎、僕は国王になってしまった」
「うむ。鶯主の人柄が選定理由と言える。今頃当人は、恐れ多くて身の細る思いだろう。『花選び』の最中に、人事不省に陥らねばよいが」
緊張で失神しかねない。
竜花は腕を組んだ。
「花賭け第三位は後に回して、四番目に行こう。鷺家の三女香蘭。私と同い年だな」
鷺家は代々能吏を輩出してきた名門。
香蘭の父親は既に隠居、現鷺主は歳の離れた長兄で、他に四人の兄がおり、何れも宮廷で重要な地位を占めていた。
更に、姉二人は既に他家に嫁いでいる。香蘭は八人兄妹の末子であった。
「鷺姫は簡潔に言うと鶤姫の逆だ。性格は平凡、器量は……言わぬが花。鷺家直系にしては教養も低い。出来の良い兄達に囲まれ、ちと卑屈な感がある。彼女が選ばれたのは、兄達の政治手腕の賜物だ。我を張る為人ではないから、王妃になっても宮廷を混乱させる事はなかろうが、外戚となる一族は厄介かもしれん。花姫候補の推挙者に一人も血縁を送る事なく、凡百の妹を候補に仕立て上げた兵揃いだ。鷺家は鳳の政の大部分に、地位の高低を問わず、一門を携わらせているとさえ言われる。下手に敵に回すと、官吏が一斉に下野しかねんぞ」
「政が機能しなくなるね」
「まあ、お前がしっかりしていれば済む事だ。花は……彼女を象徴する様な花はあったかな」
「知らない筈の僕が聞いた話によると、蘭らしいよ。どんな種類かは分からないけれどね」
「……名前からとったな」
鷺姫香蘭は薄茶の髪と瞳の、少々暗い印象を与える姫である。華やかな蘭を己に準える等、想像の外にある様な娘だ。
恐らくは、切れ者の兄達の仕業であろうと思われた。
「花賭け最下位は鵺姫だ。賭け率は最高だから、全財産つぎ込んだ大穴狙いもいるらしい」
大貴族の姫とは思えぬ言葉遣いを無視して、皇翼は己の疑問解決を優先する事にした。
「それが不思議なんだけれどね。何故鵺姫が花姫に選出されたんだい? 家柄血筋だけを重要視するつもりは毛頭ないけれど、鵺家は貴族とは名ばかりの、商家じゃなかったかな」
抑々、鵺家は貴族ですらなく、南部で成功した米問屋だった。
それが三代前に拠点を凰に移し、それまで築いてきた財を元手に高利貸しを開始。
少々悪辣な手段を用いつつ更に蓄財し、先代の時に没落貴族の縁者を妻に娶った。この貴族が鵺家である。
小さな領地からの租税で細々と暮らしていた鵺家だが、先々代鵺主の蕩尽で僅かな資産を使い果たし、膨れ上がった借金で首を括るか否かの瀬戸際だったところを、見目良い娘を商家の嫁にする事で生き延びた。平たく言えば、身売りしたのである。
鵺家の借金を肩代わりする事で貴族の身分を得たのが先代の鵺主で、現当主は、この先代と売られた鵺家の娘との子である。
「先々代の借金は博打が理由らしいが、実は先代の鵺主が仕組んだものだとの噂がある。富の次を望んだ先代が、放蕩者の先々代に高利で金を貸し、借金で雁字搦めにしたのだとな。その噂を否定出来ん位、現鵺主は父親に似て俗物らしい。更に、鵺姫陽琳も残念ながら、父親似。鵺主の実子ではないという噂もあるが。一族で一番美しい娘を養女にしたのだと」
「何の為に?」
「花姫にする為に決まっているではないか」
皇翼は呆れて物も言えぬ。
「これを裏付けているのが、更に別の話だ。実は、鵺家には、最近まで娘などいなかったと言うのだな。花姫選定の少し前に突然現れ、周囲には縁者の下で行儀見習いをしていたと説明したそうだが、その割には、ええと何と言ったか、ずぼら……がさつ……まあ、品が良くないらしい。一族一の器量と言っても、貴族の鵺家、つまり先代の妻の血縁には、年頃の娘がおらず、父方の親戚を連れてきたのだそうだ。付け焼刃の行儀見習いでは、高が知れていよう。教養の不利を補う為に、鵺姫の美談を捏造し、金を払って巷間にばら撒いたとも聞く。富と権力への執着は並々ならん娘らしいぞ。賄賂を贈りまくって候補に潜り込んだ、と評判だ」
話の内容もそうだが、皇翼は竜花の情報網の凄さにも呆れてしまった。
「常々思っていたのだけれど、君は一体、何処からそう言う風聞だのを仕入れてくるんだい?」
「お前も、軍に一、二週間入隊するか? 最下級の兵士と三、四回寝食を共にすれば、こういう話には事欠かなくなるぞ」
「……本当に寝食を共にしていないだろうね」
「同じ兵舎で休もうとしたら、総英に放り出された。私は一向に構わんのだがな」
総英とは、羽林軍で竜花の副官を務める武将である。
ある意味、国王よりも強い竜花に、遠慮無く物申せる数少ない勇者なのだが、その事実を打ち消す程の問題児として、老臣達の眉を顰めさせる人物でもあった。
問題児と言う所から推し量れる様に、重責を担う将とは思えぬ程若い。
現在二十六歳。鸞家の次男である。
「最後が鵲姫だ。花賭け第三位。鵲家の長子」
皇翼の慨嘆は完全に黙殺された。
「鵲姫は、簡潔に言えば、特徴が無い」
「……はい?」
「つまりだな。鶤姫程美しくなく、鶯姫程気弱でなく、鷺姫の様に切れ者の親族もおらず、鵺姫の様に物欲に目が眩んでもいない。強いて言うなら、学問で花姫中最高位か。他の四人を足して四で割ったら、鵲姫になるかな」
余りと言えば余りの評価だが、これで鵲姫が最後に回された訳が理解出来た皇翼である。
「今の侍医長は鵲家の者だったね」
「うむ。先代の次男で、現鵲主の弟だ。鵲姫の下には弟が五人。全員、医学を志しているな」
鶤家、鷺家、鶯家が代々の道を定めている様に、鵲家もまた、多くの名医を誕生させてきた旧家である。
他国に名医がいると聞けば、一族の有望な若者を弟子入りさせ、身分を問わず著名な薬師に教えを乞うて、医術の研鑽に励んできた。
遠方の医学書も全て取り寄せ、医学の全てを網羅すると評判の蔵書は、現在、竜花の垂涎の的である。
蔵書の寄贈と引き換えなら、新薬の実験台も辞さぬ鷹公主であった。
「鵲姫玲舜は十五。完全に中庸だから、何の花でくるか、見当が付かん。さあ、名家旧家から庶民まで取り揃えてあるぞ。さっさと選べ」
露店で果物を叩き売る商人の如し。持ってけ泥棒、とでも続きそうな勢いである。
「無茶を言う」
「話を聞けば決めると言ったではないか」
「断言はした覚えは無いよ」
その通りである。
言質を取られぬ辺りは、流石に若くとも一国の支配者。
竜花は思い切り皇翼を睨め付けた。
お読みいただきありがとうございます。
ご感想等ありましたら嬉しいです。励みになります。★★★★★の評価も頂けるとなお一層有難いです。
全く別の世界観ですが、お時間がございましたら、
星を掴む花
天に刃向かう月
も、ご覧下さると嬉しいです。