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宮ラブ 〜後宮入りは、全力で阻止します!〜  作者: 無乃海
終章 初恋の行方
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70。明かされた衝撃の真相

 今回のタイトル通り、衝撃の真相が待ち受けています。


意外な真相が判明する、第2弾でしょうか…。

 邪神竜は大きく口を開け、声を立てて笑い出す。邪神竜が笑うだけで、大地が細かく揺れるぐらいである。幻なのかと思っていた怜銘達も、邪神竜がしっかりとした実物なのだと、今は実感するに至る。


 「…ぐはははっ。人間とは、本当に不器用で愚かな生き物だな。()()()()()()()()()()()()()()()に、本気で助けようとするとはな…。」


そう嘲るように喋る邪神竜の目が、元々赤いルビーのような目が、より強く赤く怪しく光ったように見えた。赤い瞳が綺麗だな…と、この場に相応しくない感想を、怜銘は頭の中に浮かべていた。


怜銘と愁水だけではなく、蓬花や涼風を含む護衛達も、皆がも言葉を失ったかのように、邪神竜を見上げていた。それもその筈で、邪神竜の意図する言葉の意味が、何を指し示しているのか知らず…。唯1人、流水だけは青褪めて…。邪神竜が意図する意味に、思い当たった。邪神竜が作り出したものが、何を指し示すのかを…。以前からもしかしたら…という思いも、あれど…。


そうなのかもしれないと思う時もあり、そう思いたくない流水はその度に、必死に打ち消した。彼なりに必死で否定した『真相への入り口』を、邪神竜は此処に居る全員の前で開け、()()()()()()()()()()()…。


幽霊という元々姿が透ける状態では、流水の顔色が変われど、当人以外に分からないが、小刻みに身体が震えていれば、怜銘にも分かる。流水が震える様子で、まさか…とある真相に気付く。つい…放って置けず、彼に声を掛けてしまうが、同じく愁水も兄の様子が変だと、気付いたようで。


「……流水さま?…どうなさったの?…大丈夫ですの?」

「…流水?……貴方は、何かをご存じなのか?」

「…………」


…流水さまは、邪神竜の意図を、汲み取られたのかしら…。彼が震え出すほど、彼に何か…関係しているの?


怜銘が愁水よりも先に、邪神竜の意図が流水に関連するものだと、そう気付けたのは『宮ラブ』の設定のお陰だ。今の今まで思い出せすにいたが、邪神竜の言葉と流水の様子から、漸く思い出せたのである。


その設定とは、愁水達皇子の妹姫である香爛ルートを、攻略する時のことだ。主人公と香爛の恋の障害として邪神竜が登場し、香爛の皇家の力を奪おうと邪魔をするのである。ハッピーエンド時には、大した障害にならなくとも、問題は…バットエンド時であろうか。このルートのハッピーエンドでは、邪神竜が流水の皇家の力を取り込もうとして失敗し、香爛の協力で流水が邪神竜を封印するのである。


逆に、このルートのバットエンドでは、邪神竜が何時の間にか、流水の皇家の力を取り込んでおり、流水は崩御したという結末で、香爛も同じ結末を辿る。要するに誰が主人公だろうと、香爛ルート時は要注意なのである。バットエンドには他に、流水の重大な秘密が隠されており…


現在、香爛は此処に来ていないし、流水は疾うの昔に邪神竜に取り込まれ、崩御している。『宮ラブ』の設定では、香爛の力を狙っていた筈だが、現実では…怜銘の力に置き換えられたようだ。ゲームなどではなく現実に起こる出来事だと、怜銘も今は理解できていても、こうしてゲームの設定に近い状態では、どうしても比べてしまう。比べるからこそ、見えてくる真相もあって…。


そうして、ゲーム設定の流水の重要な秘密と、今の邪神竜と流水の状況が、怜銘にはピタリと重なって見えた。香爛ルートのバットエンド時の設定と、同じなのではないのかと…。そうだとすれば、()()()()()()()()()()()()、と………


…嘘でしょう?……あの設定は、ゲームだからこそ有り得る設定だと、思っていたのよ。香爛さまと私の立場が置き換えられただけで、もしも…私が邪神竜に取り込まれでもすれば、この国が滅亡するという運命に、直結するのでは……。


この世界が滅亡するバットエンドは、主人公が流水皇子の時のみと思い、怜銘は今まですっかり油断していた。まさか、香爛ルートにも隠されていたとは…。流水が香爛を攻略することは不可能であり、推しが流水だった彼女は、殆ど攻略していなかった為に…。こうなると分かっていたら、もっと攻略していたのに…と反省する怜銘だったが、全てが後の祭りである。


 「…流水。漸くお前も、気付いたか?…認めたくないのは、知っている。お前の考えなど、全てお見通しだからな。何せお前は、ワレが作りし最高の存在なのだ。流水という存在は竜の神であったこそ、ワレが作り出せた傀儡なのだ。」






    ****************************






 「……流水が邪神竜に、作り出された…傀儡だと?」


皇帝は震える声で、苦し気にそう問い掛ける。その皇帝の様子は、悲しみからくるものなのか、それとも…苦しみからきたものなのか、それは彼本人にしか分からない。双子皇子の父親として、複雑な思いであるのは間違いないだろうが…。


怜銘達がその声に一斉に振り返れば、彼女達や護衛達とは少し離れた場所に、何時の間にか皇帝が駆け付けていた。皇帝の護衛として、王族近衛隊総隊長でもある甥の炎豪も、従えていた。王族のタブーを知らない近衛隊の武官達が、此処に駆け付けないのは、偶然なのか…それとも、故意なのか……。


 「流石に…驚いたようだな、愚かな人間どもよ。…そうだ、ワレが作り出したものは、流水だ。ワレは、此奴の親のような存在である。」


人間は愚かな生き物だと、畏怖堂々と言い放つ邪神竜は、自らが作り出す傀儡が流水だと明かす。自らは親のような存在だとも、何も悪びれる様子もなく、事実は事実として述べていた。皇帝や愁水がどう思うかも、関係ない様子で。


流水が気に掛かり、怜銘は恐る恐る流水を振り返ってみる。其処には、常に堂々と威張る彼は居なかった。今の流水は、怒ることも悲しむことも泣くことも出来ない状態で、魂が此処にあらずの状況らしい。彼は現実を受け止められず、心神喪失に近い状態まで追いやられていた。


皇帝・皇子達・怜銘の4人以外の周りの人間は、邪神竜の告げた言葉がどういう意味なのか、分からない様子だ。涼風や蓬花は、皇子達が双子だった事実を知らず、当然のことだろう。事情を知る護衛達でさえ、困惑顔であるのだから。


通常の常識を持ち合わせる人間には、双子の片割れとして生まれた流水を、作り出したものだという状況が理解出来ないのは、当然である。人間を生み出したとされる竜の神様ならば、前世でのアダムとイブのように、最初に誕生する生物を作り出すことは、可能ではあったが…。


その後の人間に関与し、新たに神が人間を作り出す行為は、例え神であっても…してはならない行為だろう。神様でも許されない範囲であり、神の世界でもタブーとされるべきことだ。邪神竜はそれを逆手に取り、態とタブーを犯していた。


 「……まさか、流水は…初めは居なかったのか?…双子皇子ではなく、皇妃は愁水1人を宿していたのか?……当初から、()()()()()()()()()()()のか?」

 「麓水国の皇帝よ、その通りだ。ワレが皇妃のお腹の子に関与し、お前の子に我が力を与えた。そうして、その子供の核を一部分離させ、その核を素にお前の子供そっくりの子供を作り上げ、双子にした。…皇帝よ、まさかワレが双子の片割れを作り上げるとは、思いもしないであろう?…我の計画は完璧であるのに、あの忌まわしい皇妃が…生まれたばかりの流水を見て、一目で自分の子ではないと気付いてな。何とも忌まわしい存在で、あったな……」


皇帝は真っ先に、何かを察したようだ。双子ではなかったのか…と、問いを返す皇帝と諾とする邪神竜に、この場の全員が困惑していた。愁水は勿論のこと、怜銘も目を大きく見開き、皇帝の言葉に頭の中が真っ白になっていく。


皇帝の問いに対し、邪神竜はニヤリと笑いつつ、是と応える。その後、邪神竜が全ての真相を明かし始める。これに依れば、彼らは双子ではないと判明した。元々皇妃が妊娠した子供は、愁水1人であるらしい。その愁水が赤ん坊として形作られる前に、邪神竜が介入した所為で、もう1人人間の子供を作り出していた。その子供が流水だったとは、誰にも判断出来ないことだ。


邪神竜の力は本来、何かの生物を生み出す方ではなく、何かを壊す力である。流水を作り出す以前にも、無理に生み出す行為は、本来の力の半分程度しか利用が出来なくて…。その当時の皇妃が妊娠したのを利用し、その皇妃のお腹の中でまだ生まれたばかりの受精卵に、自らの力を加えてみるのが精一杯で…。


こうして生まれてきた、流水と愁水。邪神竜は愁水になる前の受精卵に、自らの力を与えることで2つに分離させていた。単純に愁水を2人に複製したのではなく、飽くまでも愁水の受精卵を素に、邪神竜の力を与え続けることで、生まれてきたという幻の肉体であった。邪神竜が力を与えなければ、動くことも生きることも出来ず、直ぐに死に直結する偽物の人間として。流水の身体は()()()()()()()()()、実体のない器であったということだ。


最早、この場の誰もが声も出せず、沈黙していた。信じていたものが、全て崩される気がするのは、皇帝や愁水だけではないだろう。怜銘も何を信じれば良いのか、分からなくなりそうだ。蓬花と涼風は双子の禁忌という事情も含め、たった今全てを知ることとなり、言葉もなく呆然としていた。隠密達も襲撃の真相に動揺が隠せず、緊張感が抜けているようだ。


但し、流水だけはその中で唯一、冷静になっていく。最初から人間ではなかったという、真相を確信すればするほどに……


……そういう事情だったのか、僕が生み出された理由は。要するに僕は、邪神竜(あいつ)の復讐の為に利用されたのか…。邪神竜(あいつ)の人間を憎む気持ちが、僕に伝わっているのは、邪神竜(あいつ)と常に繋がる僕だから、知り得た情報だったのだな…。それならば、僕はもう後悔したくない。どうせ、()()()()()()()()()()()()、僕は……

 更に暗い話となりました。邪神竜が語った内容は、本当は…双子のタブーではなかったということでした。呪いの力で生まれた流水が、人間らしくないのは尤もなことだった、ということで……


※あと少し、邪神竜の場面が続きます。ご気分が悪くならないよう、お気を付けください。

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