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宮ラブ 〜後宮入りは、全力で阻止します!〜  作者: 無乃海
後半 波乱の幕開け
58/123

52。幽霊イベント開始?

 清季とのやり取りが終わり、今回はその日の夜中から始まります。


タイトル通り、幽霊の流水がメインのストーリーです。ゲーム中にあるイベントではありませんが、怜銘がそう思っていそうだな~と。

 主人公の1人である皇子が、恋華の代わりに怜銘を攻略している。清季にはそう解釈されたのだが、怜銘本人はショックを受けている。清季の解釈によれば、皇子が怜銘を堕とす気でいる…ということだ。これでは…怜銘が()()()()()()()()()()()、皇子がその気でいる以上は、身分が上の皇子には、彼女も如何(どう)しようも出来ないということだ。現実では皇子の名が違うのに、イベントはゲーム同様とは…。


愁水さまが私を本気で、堕とす気だったとは…。もしかして、過去の約束に関係のあることかしら…。想像もしたくないけれども、彼と結婚の約束しているのでは、ないよね…。流水様とそっくりな彼を、流水様と間違えて約束したとしても、それだけは絶対に有り得ない約束なのよね…。


怜銘は前世の頃から、自分の容姿に自信がない。昔交わした約束の内容が、愁水との婚姻だとはイマイチ考えられなくて。それでなくとも、愁水が彼女を正妃にしようと考えているらしいとは、今でも信じられない彼女だ。


ここ現世の世界は、ゲームとは単に似た世界なだけで、ゲームとは別物の世界なのだと、怜銘も考えるようになった。竜の神さまに直接問い質したいところではあるが、何故か自分には接触してくれようとしない神に、無理矢理接触することは諦めていても、知りたいものは知りたいのに。


ゲームと同様のイベントを自分ルートとして、愁水達に()()()()()()()()()()()()には、どう考えてもゲームの強制力ではない筈だ。もうゲーム通りの成り行きではないと、怜銘も考えを改めるしかなく…。


そう諦めた矢先のその晩、朝方に近い時刻帯に、ごく当たり前という顔で、流水の幽霊が怜銘の部屋に現れた。ベットに眠る彼女の身体に、急にズシンと重みが加わったような気がして目覚めれば、怜銘のほんの目と鼻の先の其処には、幽霊が悠然とぷかぷか漂っていた。


 「…よっ、怜銘!…漸く、お目覚めのようだな。僕が折角遊びに来てやったというのに、中々起きなくて死んでいるみたいだったぞ。」

 「…………」


怜銘が目を開けた直ぐ目の前に、流水が胡坐を組んでいた。実際には、彼女の上に乗っている訳ではなく、彼は宙に浮かんでいる。但し、彼の霊力が圧力となって、彼女の上に伸し掛かっているようだ。その所為で、重みを感じているのだろう。


怜銘が目覚めるのを、今か今かと待っていた流水は、彼女の瞳がハッキリ彼の姿を捉えると、態々会いに来てやったんだぞ…という意味を含ませ、高飛車な上から目線で告げる。何処と無く嬉しそうに見えるのは、単に怜銘の気のせいではないようで…。幽霊の姿が見える側としては、ちっとも嬉しいないというのに。


怜銘は無言のまま、流水の姿を眺める。まだ頭がぼ〜としていたが、何故何度も此処に来ようとするのか、何故嬉しそうに笑っているのか、彼に問い質そうにも頭の中の思考を上手く整理出来ず…。


 「昔は走り回ったりして、物凄く元気一杯だったのに、なあ。今は、ひ弱になっちまったみたいだな。昨日も、急に倒れたよな…。」

 「…………」


……いやいや。昨日私が倒れたのは、貴方さまの所為なのですよ…。貴方が過去の私に大怪我を負わせたという、そのシ~ンを思い出してしまい、あの時の恐怖を思い出したからこそ、気を失ったのですよ…。知り合いだからと幽霊が急に、自分の部屋にまで押し掛けてくれば、誰もがぶっ倒れますよね…。


流水の失礼な言い回しに、怜銘の血管はプチっとキレそうになる。せめて頭の中だけでと、彼女は言い分を徒然と語り。…決して言い訳ではなく。そう考えると同時に、流水が語る幼い頃の彼女自身の姿に、首を傾げる彼女。


…私は走り回るほど、元気一杯だった?…昔の私は、皇子に怯えるぐらいの大人しい性格だった筈だけれど…。私には、そういう記憶が一切ない。それとも、私の失くした記憶の中に、そういう記憶がある…?


それよりも何よりも、流水の言動には矛盾を感じる。昨夜は彼女に危害を加えそうになりながら、今は…心底心配したような言動だ。昔から流水は、理解しがたい人物ではあったけれど、一体何がしたいのやら…。


 「本当は…怪我をさせるつもりなんて、なかったっ!…あの時、急に()()()()()()()()()()()()聞こえて、僕が気付いた時には…そうなっていたんだ!」


そう必死に訴えるような声が、怜銘の耳に届く。ハッとして目の前の流水に目を向けたが、彼が目を瞑りプカプカ浮かぶ姿には、海やプールで遊ぶ流水の図が、一瞬見えた気がしたほど楽し気である。辺りを見回した彼女には、彼の姿しか見えず。いくら暗闇の中と言えども、夜目が利く彼女に見えないとは思えない。


…今の声は、流水さまではない?……では一体、誰なのかしら?


 「…どうしたんだ、馬鹿みたいな顔になっているぞ?」

 「……誰かのお声がしたような…。流水さまは…聞こえませんでしたの?」





 

   ****************************






 「……はあ?…何を言っている?…言っておくが、この姿になってから、僕の力はより強くなっている。他の人間が遠くでこそこそ話しても、ある程度の距離までは生きている人間よりも、よく聞こえている。お前に聞こえて、僕にだけ聞こえないという事実は、有り得ない。」

 「……そうですか。…では、わたくしの聞き間違いでしょうか…。」

 「…ふん、そうに決まっている。僕は、何も聞こえない。」


流水の自慢話を全て信用してはいないが、先程の声は頭の中で響いた、という気がしている。流水の声もテレパシー状態にほど近く、頭の中にダイレクトに響く形式だ。しかしながら怜銘は、先程の声とは何となく違うものを感じ取る。


 「……お前、本当に身体が弱くなったのか?…昨日は仕方なく、僕が愁水(アイツ)を呼んで来たから、良かったようなものの……」

 「………えっ?……愁水さまを呼んでくださったのは、もしかして…?」


流水の何気なく放つ言葉に、怜銘は目を点にして驚く。愁水さまが私の看病をされておられたのは、流水さまが愁水さまを呼びに行ってくださったから?…流水様はあれほど、愁水さまを憎んでおられたのに、どうして……。


 「……突然のことに、どうしたらいいのか分からなかった。愁水(アイツ)ならば、()()()()()()()()()()()したんだ…。」


驚きが隠せなくて、怜銘は流水を呆然と見つめ返す。流水が彼女の為にと、愁水を呼びに行くとは、信じられない思いだ。流水もまた戸惑いつつも、正直に返して来る。彼自身も善意の感情から、無意識に身体が勝手に行動したのだろうか…。


無意識に行動したのが本当だとしても、以前の流水からは絶対に考えられない行動である。昨日の夜中の態度とはほぼ真逆な行動に、怜銘も理解不能な状態だ。そういう心境の変化なのかは知らないが、あのまま朝まで床で倒れていたら、彼女は風邪を引いてしまって、今頃は高熱に魘されていたことだろう。


既に崩御された人とは言え、身分的には大変失礼な思い込みであろうが、怜銘としては心の中で考えるだけなので、()()()()()()()()()()()…である。あの悪魔のような人でなしが、他人の為に自ら動くなどとは、今まででは絶対に有り得ない事情だし、この世界がそれこそ滅びるような、天変地異でも起こるのではないか、などと本気で思慮していた彼女は…。


 「あ、あの…お知らせくださって、ありがとうございます……。」


流水には素直に、お礼を伝えることにした怜銘。彼が元々悪魔だろうが人でなしだろうが、彼の有り得ない行動で天変地異が起ころうが、人としての最低限のルールは、守らなければならないと。人として、お礼は忘れてはいけないと。真面目な彼女らしい考えを持つ怜銘に、流水は目を丸くして呆ける。

 

 「……ふ、ふん。僕は、気が利く人間だからな。」


怜銘に本心からのお礼を言われ、流水は暫し呆けた後、プイッと顔を背け自らを自画自賛する内容で返す。要するに、当然のことをしたと言いたいのであろう。謙遜する意味を本気で知らないような彼の態度は、愁水とは真逆な反応だ。


その日から毎晩のように、此処に現れるようになった流水。怜銘の素直なお礼の言葉が嬉しかったのか、それとも…他にも理由があったのか、怜銘ももうすっかり慣れてしまった、と言うべきところだろうか…。前世の頃からお化けは苦手なのに、そういう怖さが感じられない流水には、既に死亡した元人間が透けている姿、という風にしか見えなくなっていた。


相変わらずの自己中でワンマンな態度だが、怜銘に機嫌良く話しかけて来て、彼女が眠くて機嫌が悪そうにしても、悲しそうな顔をするだけで、特に悪さもして来ない。何となく…1人で居るのが寂しいのかな、と彼女も気付いていた。殆どの人間が彼の姿を捉えられないのは、やはり寂しいことなのだろうと。此処に来られるようになってからは、常に上機嫌の様子である。()()()()()()()()()()()()という感じで、嬉しいのかもしれないが、怜銘には迷惑な話である。


 「…何故今になって、此処に来られるのですの?…このお部屋が、崩御された皇妃様のお部屋だからですの?…それとも…何か他にも、理由がございますの?…それほどに、懐かしいのですの?」


寝不足気味な状態が毎晩続いている怜銘は、今日こそ肝心なことを聞き出そうと、眠らずに待ち構える。その為にも、今日は昼間に沢山眠っておいた。毎晩眠りを邪魔される側として、どうしても聞き出さなければと、そういう意欲に燃え。


 「…此処に毎日来る理由?……うむ。確かに此処は僕の母上の部屋で、懐かしいとは思う。しかし、今は模様替えがされており、母の部屋という面影は全く残っておらぬ…。理由ならば、一応はあるぞ。僕は死ぬほど、退屈なのだ。怜銘に久しぶりに会えて、懐かしい気分になった。お前も、同じく懐かしいと思うよな?」


……はいっ?……懐かしいから遊びに来てやった…と?…私は、大変迷惑よっ!!

 怜銘と幽霊・流水とのやり取りです。今回の流水は、登場時と異なり優しい仕様となっていますが……。相変わらず、自己中心的な言動をしています。怜銘はお人好しのところがあるので、頭の中で文句を言ったりキレたりしながらも、お礼を言ったりして相手をしていて。流石に睡眠の邪魔をされ、迷惑だと思っていますが。


※本文中に『十分に失礼は承知の上で…である』という箇所がありますが、誤字ではありません。態と、こういう書き方にしています。

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