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宮ラブ 〜後宮入りは、全力で阻止します!〜  作者: 無乃海
序章 開始の合図
5/123

5。後宮、1日目 ①

 今回から暫く、後宮で過ごすこととなります。


今回は、新キャラは…登場しませんね。一応大勢登場はしているんですが…。

 怜銘(れいめい)達が入ったゴージャスな建物は、王宮の中にある皇帝に謁見する為の部屋であり、大広間のようなものであった。如何やら此処で、皇帝や皇子と姫君に謁見することになるらしい。怜銘は目がチカチカしそうだと、ある意味では彼女の心の琴線に触れなかったようだ。金やら銀やらお金持ちだと自慢するような造りで、彼女は()()()()()()()()()()()()、金キラ過ぎのゴーシャス過ぎたというべきか、派手過ぎだというべきか…。


怜銘が冷静にこの広間を鑑定している間に、本日後宮入りをしたご令嬢達に仕える侍女が、振り分けるように決められて行く。既に事前に、決まっていたのだろう。後宮の侍女達は、自分の主人となる人物を見極めようとするかの如く、各々の主人の後姿をジッと見つめている。目の前から見つめるのは無礼な行動でも、今は全員が前を見つめていて、失礼に当たらないと判断したのだろう。


怜銘が現れた瞬間、他の令嬢達も侍女となる女性達も、あれが有名な赤家の令嬢だと知り、期待外れだと認定した人間は多かった。大層な美人だと噂されていた為、期待が大きかったのだ。特に怜銘付き侍女になった者達が、彼女が皇后に選ばれることを勝手に期待していたようで、落胆が大きいようである。


現実の怜銘は十人並みの容姿で、絶世の美人などではないものの、身分で人を差別したりしない性格美人であり、一度でも彼女と親しくなった人間は、彼女に多大な好意を持つ結果となる。それには()()()()()()()()()、信頼・親しみ・尊敬・敬意に繋がる好意だ。


この場には美人が大勢来ている為、そういう他の女性と比べがちだが、彼女本人の容姿はそう悪くはない。絶世の美人とか特別な可愛さとかはなくとも、それなりに普通よりは上の愛らしさを持っていた。要は男性の好み次第では、彼女は十分に可愛いと言える容姿で、その上彼女は化粧映えする容姿でもあった。


それに今日の怜銘は、皇子に選ばれる可能性を少しでも低くしたくて、一切のお化粧をしていなかったのだ。但し、本日着ている衣装だけは、其れなりの豪華な衣装である。もっと地味なものにしたかったけれど、流石にそれは赤家のプライドもかかっており、不可能なことだった。権力者の娘である以上は、他の貴族達からバカにされてはならないのだ。彼女の容姿が特別秀でていない以上、せめて最低限の守るべきものを、必要以上に軽んじられないように、と両親が用意したものだ。


怜銘にとって守るものとは、家族であり(せき)家の使用人であり、そして赤家の領民たちでもある。怜銘にとっては、自分の存在は含まれていなかった。前世で叶えることが出来なかった、育ての親への恩返しや親孝行を、今の世界の自分の周りの人達に還元したいと思っていた。それが、前世の人達へも恩返しになると信じ…。


赤家をバカにされることだけは、許せないと思っている。自分がバカにされるだけならば、それで良い。だけど、家族や使用人や領民を貶めることは、絶対に許せないと思っている。おっとりしているように見えて、()()()()()()()()()()であり、自分の意思を貫き通すのが、本来の彼女だ。


そういう理由から、お化粧をせずにスッピンであるものの、衣装のみそれなりに華美なものとした怜銘は、他の令嬢達より逆に目立っている。他の令嬢達も侍女候補の女性達もほぼ全員が、スッピンに見せかけて実はしっかりとお化粧をしていて、という状況であったからこそ余計に。中には明らかにお化粧をしているだろうと、一発で分かる程の濃い化粧のご令嬢も、居たりして。


怜銘は素顔の時の肌は、お化粧しているかと見間違えるほどで、きめ細やかなツルツルもち肌の素肌がスッピンだとは、この王宮にいる誰もが知る由もない。そしてその本人ですら、自分の素肌の美肌ぶりには一切気付いておらず、他者が分かる筈もないだろう。この事実を知るのは、此処では怜銘の侍女・清蘭(しんらん)だけだろう。


清蘭は常日頃から、怜銘のお化粧や着替えなどの身支度をメインで主導しており、知っていて当然の環境にいた。前世の怜銘は一般日本人である為、その頃はお化粧も着替えも自分1人でやっていたが、(ろく)の衣類の着替えは複雑すぎて、記憶の戻った怜銘も1人での着替えは断念し、またお化粧に関しても、商品化された商品ではないし、これも侍女達の手伝いなしでは、使用出来ないだろう。


彼女の使用する化粧品は、記憶が戻る前から思い出した怜銘が、事細かに指示して作らせたもので、現在彼女が愛用するものだった。これ程に、赤ちゃんの肌と変わらぬ美肌を手に入れたのは、彼女の前世の知識が生かされていたからだ。怜銘は赤家の使用人にも無料で分けており、以前より美肌になったと、女性の使用人達からは絶大な評価を受けている。


これも前世の怜銘が、美容について研究していたお陰だ。前世の彼女もまた、美肌には気を使っていたのであった。






    ****************************






 必要な説明を受けた後、怜銘達は新しい侍女を引き連れて、自分達に与えられた部屋に移動することになると、後宮の侍女達が案内してくれた。怜銘に他の令嬢より多くの侍女が与えられたのは、他の令嬢達が違反したからであり、その結果他の令嬢の侍女は減らされ、怜銘の下で働くこととなる侍女が、増やされたのである。


彼女本人はあまり気にしていなかったのだが、その所為で怜銘の侍女が一番多くなる。当初は怜銘の侍女になることを不満だった者も、丸1日彼女に仕えれば、怜銘への有り難さを感じていた。他の令嬢達は早速我が儘に振舞っており、それに比べて怜銘は我が儘を言うどころか、侍女達を気遣ってくれるのだ。


そして怜銘の肌が美肌だという事実も、夜にお化粧を落とそうとして声を掛けた侍女に、「今日のお嬢様は、お化粧はされておりません。」と清蘭が応じたことで、全くお化粧をしていないのに素肌がとても綺麗なご令嬢…として、侍女達は心底驚くことになる。


こうして、怜銘達が到着したその日は、部屋で過ごして終わった。次の日は朝早くから、清蘭を含めた侍女達が張り切っている。夜には漸く皇子のお披露目となり、()()()()()()()()()()()()()()()を持つ宴が、行われることになっていた。皇子を始めとした未婚の高位文官・武官達も、共に出席することとなる。一時期とはいえども、後宮入りをしたご令嬢達をもて成す為に、皇帝が開く宴なのだ。簡潔に言えば、建物の外で行う食事会のことである。


今回の皇帝が開く宴は古くから、『花の宴』と呼ばれている。『花』を、華やかなご令嬢に例えているのだ。正妃を含む後宮の女人達は、例えどのような身分の女性だろうと、別名『後宮の花』と呼ばれていた。何時(いつ)しか後宮に迎える女性も含め、女性=花として考え、この集団お見合いである宴も、『花の宴』と呼ばれるようになったのだ。


花の宴が開かれるのは夜なので、後宮侍女の初の大仕事として、それまでに主人を磨き上げねばならない。主人を朝から入浴させ、髪を丁寧に複雑に結い上げ、衣装も豪華でそれでいて主人を引き立たせる服を選び、髪飾りは衣装と合わせ主人の顔に()える物を選んで…と、パタパタと忙しく走り回るのだ。そして自分達も…。


花の宴に限っては、侍女達も其れなりに着飾って、主人と共に参加することが出来るのだ。勿論、主人である貴族のご令嬢よりも、侍女が目立つ格好をしてはならない…という、暗黙の了解もあったりする。また主人によっては、衣装だけでなくお化粧や髪飾りにまで文句をつける者もいて、それに比べれば怜銘は多少の華美にも目を瞑り、文句を言うどころか似合っていると、褒めてくれるのだ。彼女が主人で良かったと、侍女達は心から感謝しているぐらいだ。


逆に怜銘は、朝からの入浴や髪結いにお化粧にと、更に衣装合わせなどで、内心ではすっかり疲れ果てている。前世の記憶を取り戻すまでは、これらが当たり前だと捉えていたものの、今の彼女には()()()()()()()()()()()で、恥ずかしいやら気後れするやら、心の中では1人葛藤中なのだ。


それでも何とか気力を振り絞り、その間侍女達と楽しく会話することに、怜銘は成功していた。彼女の立場から言えば、上手く誤魔化せたというところだろうか…。


その話題の中心となったのが、怜銘の美肌に関してだ。あまりにもモチモチつるつる素肌に、侍女達は主人を質問攻めとした。怜銘は特に隠くことなく、自分が編み出した化粧水や乳液、他にも保湿用のお休みクリームなど、此方の世界では四苦八苦して作ってもらった製品について、侍女達に語っていた。無意識に前世の記憶を頼りとした彼女が、自ら指示して作らせたのである。しかし、これらを商品化して販売していないのは、怜銘が主に私用する為に作ったものだったからだ。


この世界には今は防腐剤がないので、商品として長持ちしないことが難点なのだ。周りの人々は勿体ないと言うが、防腐剤となる材料が見つかれば、(いず)れは商品化されて販売されることだろう。それが何時(いつ)になるかは、今のところは定かではない。如何やら前世に似た麓の原材料は、この国の女性の肌にはよく効果が出るようだ。


怜銘はお近づきの証として、自分のお世話係となった侍女達や下女達に、小瓶に入れて少しずつ分け与えると、侍女も下女も目をキラキラさせては、嬉しそうに感謝を伝えて来た。自分付きの使用人達との信頼関係が、自分が作らせたお化粧品で築けたのかもしれない、そう思えばお安い御用よ。そう単純に喜ぶ怜銘に対し。


まさか、王宮に来た直後から次の日にはもう、たった1日で自分の味方へと陥落させるとは、流石は…怜銘お嬢様ですよね。皆さんも上辺だけのおべっかではなく、本気でお嬢様に笑顔を向けられ、感謝を述べられていますもの…。


そう心の中で呟く清蘭は、()()()()()()()()()…誇りに思うのであった。

 麓水国の貴族令嬢が全員集合しました。名前が出るのは、その一部だけとなりますが。侍女達も同様で、今のところは主人公付きの侍女にしか、名前を付けない予定です。

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