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宮ラブ 〜後宮入りは、全力で阻止します!〜  作者: 無乃海
後半 波乱の幕開け
46/123

42。決意、歪んだ想い

 怜銘が部屋に戻り、つらつらと考えているところから、話が始まります。


副タイトルは、後半からの話によるものです。

 漸く怜銘も『宮ラブ』のゲーム設定との絡みで、流水と愁水の皇家の真実に気付き始めたが、まだ真相を解明したという段階ではなかった。


流水と愁水が双子の皇子ではないか、ということ。この国では双子は禁忌とされている為、第二皇子は隠されていたのではないか、ということ。自分が幼い頃に後宮で会っていたのは、その当時は第一皇子だった流水である、ということ。その後に何らかの事情で、流水が崩御してしまった為に、第二皇子であった愁水が第一皇子として、表に現れたのではないか、ということ。そして…皇家には何らかの特殊な力が、代々引き継がれている、ということ。


…などと、以上が怜銘の知ることの出来た、皇家の真相である。しかし、これには幾つかの疑問も残されていた。


第二皇子が隠されていたとしたら、どうやって隠していたのだろうか。一般庶民の方が、洞穴とか森の中とかに隠すのは、容易だと思われる。彼もそういう風に隠されていたのでは…と、怜銘も一度は思いついたものの、皇家が隠すことは容易ではない。()()()()()()()()()()()だ。そういうことならば、既に崩御された皇后と皇后付きの侍女が、怪しいと言えるかもしれない…。


第一皇子だった流水が崩御した、そういう事実が隠されているとすれば、崩御したという事実をどうやって隠したのか…。埋葬する若しくは火葬するにしても、死亡した事実を伏せたとすれば、火葬は兎も角も埋葬は無理だろう。一般庶民は隠してこっそりお葬式をしても良いだろうが、皇家では難しそうだ。勝手にお墓を用意するのは、無理だろう。やはり、他に権力のある協力者も、居るかもしれない。


現在は第二皇子としてではなく第一皇子として、愁水と流水の立場が入れ替わる事態は、どういうことなのだろうか。双子皇子の存在を知る協力者は居るだろうが、他の全く事情を知らない人間にも誰にもバレず、第一皇子が入れ替わることは不可能に近いだろう。怜銘にはこれが、一番不可思議な現象だと思われた。


流水は第一皇子として、表に出ていた筈だ。怜銘が後宮に呼ばれる度に、流水も後宮へ来て遊んでいた。それらが正しければ、王宮と後宮内で流水の顔を知らない者が、殆ど居ない状況となる。今回初めて出会った筈の愁水に、「流水皇子さま」と怜銘が呼んだ時の反応は……何?


どう考えても、変なのよね…。どれほどそっくりの顔だったとしても、名前も性格も違うあの彼ら2人を、流水さま自体を知らぬと言いたげな素振りで…。流水さまが崩御された事実を隠そうという雰囲気では、あれは…そういう雰囲気ではない。私は神に誓って答えられるぐらいに、確信を持っているわ…。


そこまで考えて、あれっ?…とふと気付いた怜銘。この世界には竜の神様が関わっていると、清季から聞かされていた彼女は、もしかして…この不思議な現象は、竜の神様の仕業なの?…と、思い至ることとなる。


そうだわ…。竜の神様が存在する世界だったわ、此処は。人間の生活には干渉出来ないらしいけれど、流水さまは死者扱いとして、特別に干渉出来たかもしれないよね。この世界に魔法はない(?)みたいだし、そのぐらいしか理由が考えられなくて…。今はこれ以上、深く考えるのは止めようっと…。


皇家に不思議な力が宿っている事実は、今朝の愁水を目撃した怜銘にも、理解出来ていた。霊体の流水が不思議な力を使うのは、()()()()()()()()()()()理解が出来なくもない。幽霊と同等の力を持つ愁水は、ゲームに登場しないというのに…。


…あれは、何だったの?…あの竜巻のような強風を出したのは、流水さまと愁水さまのお力なのだろうか…。もしかして、あれが…皇家の力?…あの力の正体は、魔法なのかな…。それとも、超能力と言われるものなの?


そう言えば…前世の『宮ラブ』の設定集にも、皇家の力が何の力なのかは、何も書いてなかったようで。ゲームの中でも何の力なのか、解明されていなかった筈である。ゲームの公式サイト上でも、そういう質問も多々あった筈なのに、明確な答えは公開されていなかった。「ゲーマーの皆さんのご想像に、お任せ致します。」という答えしか……。


魔法論と超能力論とその他諸々の幾つかに、前世のゲーマーの間では分かれて討論されていた。但し、前世の怜銘は力の解明には興味がなく、何でも良かった。力の正体が何かを判明せず、不思議な力とする神秘的な雰囲気に酔いたい、と…。但し()()()()()()()()()()()()()、其れの持つ意味もまた違ってくる。


そう言えば私にも、何らかの力があるらしい…。私の力が予知夢系なのかは、まだ判明していない…。これからのことを考えれば、不安しか残らないよ……。






    ****************************






 「怜銘。お前は既に、アイツの…皇后のような待遇をされているのだな。」

 「………っ!!………どうして此処に…………」


後宮で与えられた自分の部屋で眠る怜銘を、起こす者がいた。魔法がないとされる麓では、魔石で明かりを灯す。魔石はまだ人工的には作れず、また大変貴重な物として高価な値段となりやすく、王族か貴族若しくは裕福な商家にしか、手に入らない物だった。それ程に貴重な魔石は、高位貴族のご令嬢と言えども、自己中での使用が禁止されていた。


但し、怜銘に限っては自己中な使い方をしないどころか、王家の決まりに従う以前の問題であったりする。他のご令嬢達よりもずっと、早めの就寝を心掛けた怜銘には、子の刻(夜中の零時前後)以前には既に、夢の中であったけれども。


真夜中に何か感じるものがあったのか、怜銘はふと目を覚まし瞼を開く。目を開けた彼女が、見たものとは……。彼女の直ぐ目の前に、四阿で再会した霊体姿の流水が、浮かんでいた。彼女が大怪我をする原因となった、少年の姿の状態で。彼女の記憶にある、そのままの姿で…。


しかし此処は、昨日流水が現れた四阿ではなく、後宮で怜銘が寝起きする彼女の自室だ。今の怜銘は目を覚まして、未だベットの上に寝転んだ体勢である。彼女の目の前に居る(?)彼は、宙に浮いている状態であり。実際にプカプカと浮く彼は、横になっている怜銘を至近距離から眺めていた。


 「おっ?…目が覚めたみたいだな?」


部屋の中も窓の外も真っ暗だというのに、宙に浮かぶ流水の姿がくっきり見える現象に、恐怖を感じる怜銘。ガチリと音が聞こえて、身体全体が固まった気がした。恐怖で固まった彼女も、流水から目が離せぬ状態である。目が暗闇に慣れて来て、流水の向こうにある時計にふと気付けば、本来ならば位置的に見えぬ筈の時計が、彼の透けた身体を通して見えたのだと、知ることになる。


その時計の針が、示す時刻までしっきりと…。それは、丑三つ時と言われる時間である。現代人の記憶がある彼女は、それが午前2時~2時半の間だと、正確な時刻も知り得ることが出来た。


……ああ、丑三つ時と言えば、日本でも鬼門とされた時間だったわね…。()()()()()()()()()()()()()()()が、姿を現す時間だったよね…。本当に幽霊が現れるなんて、今までは気にすることもなかったのに……。


そうして、先程の会話に続く。第一皇子であった流水ならば、後宮の中もよく把握しているだろう。怜銘が自室とするこの部屋が、元々はどういう意味を持つ部屋なのかも。此処は、代々の皇妃が使用する部屋だ。本来であれば、現皇帝陛下の正妃である皇后が使用している筈だった。要するに、流水と愁水の母親の部屋だった。しかし現在、皇子達の母親が崩御して以降、皇后の位は空席となった状態だ。


麓の皇族が一夫一妻となり、後宮の部屋はガラ空きである。その上、現皇帝の正妃が崩御し、後宮には妃と名の付く人物が、誰1人居ない状態が続いていた。だからと言えども、怜銘が現段階で正妃の部屋を使用するとは、どういう理由があろうとも異例中の異例であろうか…。


表向きには、怜銘は未だ正妃候補の1人だ。正妃と決定したとしても、異例と言える状況にも拘らず、決定していないどころか、怜銘には愁水との友達付き合いもなかったのだから、異例過ぎる状況であろうか…と。


死亡し幽霊となった流水には、現皇帝や愁水の詳しい状況は伝わっていない。彼が崩御して以降、幽霊として直ぐ四阿に姿を現した訳でもなく、つい数年ほど前からである。今までは四阿だけにしか行くことが出来ずにいたのに、それが怜銘と再会したお陰で、何の迷いもなく此処に来れたと…。怜銘が何らかの力で、自分の力を強めてくれた気がしていた。


此処に現れた流水は、直ぐに此処が以前の母の部屋だと、気付く。自分の母親が崩御したのは、彼も当然知っている事実だ。彼らの母親は流水よりも先に、呆気なく亡くなってしまった。元々身体が弱い人だったが、それでも…早かったと。


母上は…僕が死んだことは、知ることもない。もしも…僕が崩御した事実を知ってくれたなら、悲しんでくれるかな?…誰にも()()()()()()()()()()()()()()()、ひっそりと埋葬され、キョンシーになった僕を…慰めてくれるかな?


此処に唯存在するだけで、疾うの昔に忘れかけていた母への想いが、募って来るような気分になっていた流水。幽霊の姿になってからの彼の想いは、憎しみが益々強くなって心の奥深くに根付く。弟の愁水には、自らの何もかもを乗っ取られたことへの恨みを持ち続け、自分を簡単に捨てた父親への恨み辛みを抱え、そういうドロドロの憎しみで心が一杯に占められ、自分より先に亡くなった母への想いは、何もかもすっかりと忘れていた。


アイツは…アレを自らの妃に迎えると、()()()()()()()()()()()()ようだ。だけど僕が、アイツの願いを壊してやる……。アイツの幸せだけは、絶対に潰す…。アレとだけは…絶対に認めない。……アイツだけは、絶対に…許さないっ!

 前半は、怜銘が未明頃に起きた出来事で考え込み、後半は………


後半は、また幽霊が出てきます。亡くなってから初めて、元母親の部屋に来れたようで、それが怜銘の部屋になっていることで、流水も何かを悟ったようです。その所為で、ある人物への恨みが倍増したようですが…。


※一応、今回も暴力はありませんが、暴言はちょっぴりあるかも…。

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