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宮ラブ 〜後宮入りは、全力で阻止します!〜  作者: 無乃海
後半 波乱の幕開け
44/123

40。皇族が持つ特別な力

 皇子兄弟が対決した、その後…となります。


今回は、皇子の周りの人達の状況というところ、ですね。

 さて、肝心の愁水と流水の死闘は、その後どうなったのか…。怜銘が去った途端に流水は突然胸を押さえ、空気に溶け込むようにスッと姿を消せば、竜巻のような強風も消え、その場には愁水だけが残された。


愁水も最早、皇家の力はほぼ残っておらず、怜銘を守るという気力で戦っていただけだ。流水が消えると愁水も安心したかの如く、気を失うようにその場に倒れる。武官達が大急ぎで愁水を宮殿まで運び、皇子の寝室のベットへ横たえた。その間もずっと意識を失う彼を、気を失っただけで問題はないと医師が診断し、陛下も武官達もホッと息を()いた。


怜銘の外出時点では、陛下には報告されずにいたが、その後に皇子が飛び出したことで、陛下の耳にも報告されていた。陛下は飛び出したくともそういう訳にも行かず、武官達や隠密達を信じ待つことになる。


やはり流水は、怜銘を()()()()()()()()()()…。以前、夢枕に立たれた竜の神のお告げも、怜銘は邪神竜に力を与えることも、反対に邪神竜の力を封じることも出来る特殊な力を、持つらしい…。流水ごと邪神竜を封じ込めるには、彼女がこの特殊な力に目覚めることが、必要不可欠のようだ。今の我々にはもう、彼女に頼るしかないようで、我々の課題は如何に彼女を守り切ることか、だ。


怜銘を第一皇子の友達として、王宮に呼び寄せた頃はまだ、怜銘の力も邪神竜の存在も、誰も見抜けずにいた。但し、皇帝だけは早くから見抜いており、愁水が皇家の力に目覚めた頃から、流水の邪悪な力に目を光らせていた。その後、流水が怜銘に発動した力が、邪神竜の力だと知り得た皇帝は、素早く皇子の入れ替えを行う。この頃には愁水は、流水よりも優秀な皇子となっていた。


怜銘に怪我を負わせたとして、流水は廃太子扱いとされた後、それまで第二皇子だった愁水と立場をすり替えられ、厳重な塔の中へと閉じ込められた。その数日後に流水は、()()()()()()姿()()()()()()()こととなる…。


『邪神竜に取り込まれて崩御した』と思われた流水は、ある頃からあの四阿で幽霊となり、姿を現すようになる。麓水国皇帝・麓鵬水(ほうすい)も流水のことで、怜銘には申し訳ないことをした…と思いつつ、彼女の力に頼るしか出来ず。赤家に謝罪するも、けんもほろろに使者が追い返され、何年も連絡が取れずにいた。


王家のタブーとされる双子の秘密は、誰にも言えない。愁水の力は今までの王族の中でも強力で、こうして大勢の人間から秘密を隠して来れたのは、彼の力でもあった。お陰で皇子の入れ替えに気付くのは、元から双子の禁忌を知る者だけで。


炎豪も、当初は知らなかったが、双子と従兄弟(いとこ)である彼は、流水と幼い頃から接しており、王位継承権も持っている。流水の人間とは思えぬほどの冷たい態度には、彼自身もゾッとしていたので、優しく穏やかな愁水を知った時には、愁水が皇太子になることを、炎豪は本心から望むようになる。


今のところ流水の存在を知るのは、皇帝陛下・炎豪とその父親・皇帝と皇子を護衛する隠密達・皇子の世話係達(下男・下女)・皇子の宦官、以上がそれに当て嵌まると言えよう。皇子の宦官・狼凱は、これらの事情を全て知っている。怜銘が覚えていた通り、宦官になったばかりの狼凱が初めて仕えたのが、当時まだ第一皇子だった流水なのだから…。


涼風と蓬花も、皇子が怜銘に怪我をさせたとしか知らず、幽霊の正体が元第一皇子の流水だとは、知らない。また双子が生まれた皇家の秘密も、当然知らされていない。幽霊を見てしまった他の使用人達も同じく、誰も知らない事情だ。


皇家が契約している隠密達は、仕事上として話すまでもなく筒抜けであり、双子が生まれた時点でまた隠すと決めた時点で、皇家の秘密に協力をさせているし、炎豪の父親は現皇帝の弟であり、同じく皇族関係者の中では唯一の協力者だ。辛うじて麓家を名乗ることが許された血筋で、皇弟は嫁の実家に婿入りした時に、本来は嫁の実家の姓を名乗る筈だった。嫁の実家があまりにも貴族として身分が低く、麓家を名乗っても赤家より格下扱いになるようだ。


麓の禁忌を知る隠密達の一部は、怜銘が赤家に籠る頃から彼女を守る為にと、彼女専任護衛として派遣されている。後宮では更に、彼女の護衛として隠密を増員し、彼女専任の隠密が既に就いている。本来ならば、皇太子妃に決定してから隠密が就くが、麓水国の危機に重要な任務を持つ彼女は、既に()()()()()()()()()()()()()()を受けており…。


肝心の皇子本人が、彼女を正妃にと望んでいる以上…。そして皇帝もまた同様にそう望み、竜の神もが…望む以上は……。






    ****************************






 現皇弟は元々出世欲のない人で、実兄を助けたいという気持ちから、双子の第二皇子として生まれた愁水の面倒を、長年世話してくれた人物だ。当初は皇帝夫婦が禁忌を犯しているとは知らず、皇妃が崩御する直前に聞かされ驚く。その頃から、愁水に教育や剣術を教えてくれている。愁水から見れば、第二の父親的存在だ。


当時の炎豪はまだ幼く、流水の我が儘に振り回されていた。(のち)に愁水の存在を知ってからは、愁水を支えようと誓う。流水と愁水の立場が入れ替わったことで、自ら皇子を支えると願い出た炎豪は、流水が崩御して不謹慎だと思いつつ、愁水が生き残ったことに対して神に感謝した。彼は麓水国を純粋に愛しており、神が関わっている事実は知らないけれども…。


愁水に真摯に仕えようと、武官の修行には剣術だけではなく体術も、武術全般に力を入れ稽古した。父から学んだ後は剣術の師匠に教わり、それ以降は麓水国の皇族近衛隊に自ら志願し、その入隊試験に優秀な成績で合格してからは、毎日他の隊員達と切磋琢磨して、こうして徐々に実力を付けて行くことになる。


最終的には24歳の若さで、皇族近衛隊の総隊長にまで上り詰めた炎豪。ここまでの道は決して簡単でも気楽でもなかったが、そうかと言って…血の滲むような努力とまででは、いかないが…。


当然ながら炎豪も、皇家の力のことは知っている。皇家の力は皇太子となる者に強く出るが、実は他の皇族にも皇家の力が、ほんの少し備わっていた。皇女香爛も炎豪もまた炎豪の父も、皇家を継ぐ資格程の力ではなくが、少しは皇家の力を持っている。但し、皇族の力のことは皇族以外には内密にされており、皇族の力のを知っているのは、皇族の血を引いた者の他には、一部の使用人だけとなっていた。


余談ではあるが、皇族の血を引く者であっても、淑玲は教えられていない。彼女には皇家の力が全くない上に、彼女は将来麓家から嫁ぎ去る者である為、力を持っていないならば、知る必要もないとされた。また彼女には()が強すぎる面が見られ、()()()()()()()()()()()()と父親から判断されており、今も…何も知る由はなく。


本来は双子と言えども、流水と愁水の2人共に、強力な皇族の力が与えられることは有り得ない。逆に過去にも、皇族で双子皇子が生まれた実例もなく、100%の確率で有り得ないとも言い切れない。炎豪の父親が皇族とはいえ、炎豪も僅かに力を引き継いでおり、愁水にも()()()()()()()()()()()…と考えた皇帝。愁水に僅かな可能性を期待し、生かしたのだ。


…流水様が生きていたら、麓水国がどういう状態になっていたか…。流水様が短命だと、神が知っておられたのか…。もしかすると竜の神は何らかの試練を、我々人間に与えられているのだろうか?


今でも自問自答している炎豪は、これが正しかったと信じていたというのに、また流水が幽霊になってまで現れ、皇帝陛下や愁水様のお心を惑わしている、と悩む。怜銘様を巻き込むなどとは、流水様こそが()()()()()()()()()()()()()()、と…。


 「此方におられましたか、炎豪様。愁水様が…お呼びです。」

 「…ああ、分かった。衣服を整えたら、直ぐに向かうと伝えてくれ。」

 「はい、承知致しました。」


炎豪が頭の中の煩悩を払うかの如く、武術の稽古に懸命に励んでいた時、今は愁水付きの宦官となっている狼凱が、炎豪が稽古する鍛錬場まで呼びに来た。練習で暑くなった彼は上半身の衣服を取っ払い、上半身裸で稽古をする最中で。


朝方の件で気を失っていた愁水が、炎豪を呼んでいるようだ。先程のことであろうと見当をつけた炎豪は、大量の汗に掻いており臭うだろうと、皇子の謁見に失礼だとしつつ、後で自ら向かうことを狼凱に伝えた。狼凱は了承の旨を言い残し、直ぐに立ち去ると、炎豪は鍛錬場の水場で濡らした布で、サッと身体を拭いてから武官の衣服を着用し、皇子の執務室へと向かうことにする。


この世界にタオルや水道はなく、すぐ傍に井戸が備え付けられており、小型の樽の入れ物に井戸の水を入れ、タオル代わりに使用する布を濡らしていた。因みに小型の樽は、バケツや洗面器の代わりに使用する。


怜銘がこの光景を見れば、日本と似た歴史を思い浮かべることだろう。小型の樽は毎日、怜銘が顔を洗う洗面器として、清蘭が用意するものだ。前世でのゲームの世界とこの現実世界では、全く異なるようでいるいて、日本人が設定したゲームだからこそと言える、要素もあり。


何が真実で何が嘘なのか、本当の真実が見えない…。それは怜銘だけではなく炎豪も感じていることだ。この世は何とも、不可思議な世界であると…。説明のつかない出来事が多いのだと…。





誰も手の届かない遠い遠い場所から、この光景を眺める…とある人物がいた。意味深な内容を呟くのは、とある場所に存在する大きな生き物で。


 「漸く、あやつと接触したのだな…。今はもう、お前だけが頼りである。一刻も早く覚醒して、この世界を救ってくれ…。」


そしてこれとは反対に、似たような空間でこれまた意味深に呟くのは、同じく大きくて真っ黒な存在で……。


 「……あの娘が、欲しい…。ワレが復活する糧として……。」

 皇族が中心の話で、特に皇子達の従兄である炎豪が、メインでしょうか。


乙女ゲーではないので、本来は悪役令嬢は特に存在しませんが、淑玲が唯一そういう扱いとなっています。本格的な悪役令嬢になるかどうかは、彼女次第かな…。

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