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宮ラブ 〜後宮入りは、全力で阻止します!〜  作者: 無乃海
前半 彷徨う恋
31/123

30。幼馴染との過去の約束

 前々回の後半からの続きとなります。


前回に引き続き、新キャラが登場します。名前だけは前回も、出ていますが。

 「怜銘のその呼び方、物凄く…懐かしく感じるよ。お前…ある日を境にして、全く来なくなったよな…。」


そう寂しそうに話す宋爛に、怜銘もどう話せばよいのか、戸惑う。あの日というのは多分、怜銘が大怪我をした時の頃だろう。姉夫妻の屋敷と赤家とは距離があり、怜銘は元々毎日は行っていない筈だ。予め決めた日時に、約束をしただけだろう。大怪我をした後から、()()()()()()()()()()()()彼女は、それを境にその約束の日を含め、姉の屋敷を二度と訪れなくなっていた。勿論、姉夫婦とはその後も会っていても…。


先程から曖昧な表現となるのは、怜銘が思い出せていない部分が、まだチラホラとあるからだ。この辺りの日付は、怜銘の怪我と関係してくるので、本人の恐怖などから未だ…思い出せない箇所がある。


それでも約束を破ったことには違いないと、宋宋が如何いう気持ちでいたのかと思えば、怜銘の気持ちも凹んでいた。そしてつい昔の癖で「ごめんなさい…。」と、謝ろうとして。それを敏感に察知した様子の宗爛が、慌てて否定してくる。


 「怜銘に何が遭ったのかは、お前の姉である秋凛さまから聞かされ、多少は知っている。…酷い怪我だったそうだな。俺は何も知らず、お前がただ約束を破ったのかと思い、臍を曲げていたというのに…。後からこの話を聞かされた時、俺には何も出来なくて歯痒かったよ……。」

 「………」


宗爛が気を遣ってこう言ってくれても、怜銘の心は…晴れなかった。謝るぐらいしか出来ない怜銘としては、皇子が絡んでいる以上、今此処で自らの気持ちを曝け出してはならなくて…。またそれ以上に、怜銘自身の身分を守る為にも、そして赤家を甘く見られない為にも、これ以上彼と親しくすべきではない…と。


但し、宗爛を格下だと馬鹿にしたい訳でもなく、単に思わせぶりの態度にならないようには、気を付けなければならなくて。案外とこれを使い分けるのは、難しい。


けれど今の宗爛は、肝心な事柄に気付けていない。昔はいくら仲良しであったとしても、身分が圧倒的に上である怜銘に、その上…皇子や皇女が親しくする人物に、この親し気な態度は礼儀が欠けているように、思わせる。あまりにも馴れ馴れしい態度には、第三者からは()()()()()()()()()()()噂を立てられる、可能性も出て来るので。


実際に、怜銘の侍女達はハラハラし、宗爛の同僚達も興味津々で、また周りの令嬢達は単純に純愛を思い浮かべる者はいれば、色々と裏の思惑を秘めて薄笑いを浮かべる者もいて、このままでは怜銘の立場も、危うかった…かもしれない。


 「…宗爛兄さま。これ以上…怜銘お姉さまを、困らせてはなりませんよ。」


こうして唯々懐かしがり、徒に噂話の的となろうとした宗爛に、ストップをかける者がいた。彼に声を掛けたのは、宗爛とは従兄妹(いとこ)の関係で、白家の三女として生まれた蓉杏だ。廉江の実妹で、怜銘とも親戚となる関係だが、あの頃は彼女も毎日のように兄に会いに来ており、怜銘と宋爛の3人でよく遊んだものだ。要するに蓉杏を含めた3人は、幼馴染という間柄なのだった。


蓉杏は今年15歳になるという、攻略対象の中では最年少の少女だ。皇女と同い年なのだが、童顔の可愛い系容姿で年齢よりも幼く見えるので、当人は相当悩んでいる様子だった。…というような説明を『宮ラブ』の設定集で見たなあ…と、怜銘はばんやりと考えて。


実際に見る彼女も、見た目は設定通りの人物だ。但しゲームの設定では、恥ずかしがり屋で人前では堂々と話せない、と設定されていた彼女だが、実物はその逆の性格であったりする。恥ずかしがり屋どころか、常にハキハキとしており、年齢よりもしっかりした性格の少女だった。その所為で容姿とのギャップは更に広がり、幼い子供だと嫌みを言おうものならば、大人顔負けのセリフで言い返され、そのギャップに困惑する人間も少なくない。


怜銘は先程宋爛をことを思い出した時、蓉杏も一緒に遊んだ幼馴染だと、思い出していた。今の怜銘には、宋爛と同様に彼女もゲームキャラにしか見えず、既に攻略対象の内の1人とも知り合いだったのか…と、自分がこの世界に()()()()()()()()()()()()()()状況に、困惑して。


 「宋爛兄さま。怜銘お姉さまは確かに、わたくし達の大事な幼馴染ではございますが、それと同時にお姉さまは、皇子様の正妃候補の最有力者なのですよ。わたくし達が気楽にお声を掛けては失礼ですわ。…怜銘お姉さま、お久しぶりでございます…。お元気そうで何よりでしたわ…。わたくしもお姉さまにお会い出来ましたことを、心より嬉しく感じておりましてよ。」






    ****************************






 「…蓉蓉なのですね。本当にお久しぶりですね?…貴方こそ、お元気そうで何よりでしてよ。」


蓉杏は宋爛に対してしっかりと釘を刺した後、怜銘の方を振り返っては、ニコリと微笑んで挨拶をしてくる。昔の記憶の中の彼女とは異なり、怜銘が赤家の人間であることを意識した、そういう丁寧な挨拶だ。今の怜銘には、馴れ馴れしさが入った挨拶よりは、こういう礼儀正しい挨拶の方が、しっくりくるようだ。


 「ふふふっ…。嬉しゅうございますわ。今も、そうお呼びいただけるとは…。宋爛兄さんが、昔を思い出したくなるお気持ちが、理解出来ましてよ。」


怜銘が蓉杏を昔の呼び名で呼べば、彼女も嬉しそうに目を細め、心からの笑顔を見せてくれる。実は先程、宋爛をそう呼んだ時にも、彼も同様に頬を薄らと赤く染めた上で、心から嬉しそうに目を細めていたのだった。


…やはり、血の繋がりのある従兄妹だけは、あるわね…。お2人の表情が、見事にシンクロされていましたもの…。ゲームの中のお2人とはまた違う言動で、関わりたくなかったと考える反面、幼馴染に会えて嬉しいと思う反面もあり…。攻略対象に向けていたと思われる笑顔も、()()()()()()()()()()と思えば、何とも言えない照れ臭い気分がするのよね……。


執務中の者も見学中の者も男女入り乱れ、この場に居る誰もが注目する中で、怜銘が毅然とするように、蓉杏も毅然とした態度を取っていた。蓉杏の理解出来るという言葉に、「お前も結局は、同じではないか…。」と、すぐさま反応した宋爛がこれ以上発言するのを、蓉杏に本気で睨まれ言葉を失うのだった。


確かに彼女は理解できると同意はしたが、それは単に宋爛の立場を、庇ったに過ぎない行動だ。勿論そうフォローを入れることで、同時に怜銘の今の立ち位置も守りたくて。鈍いと言われる怜銘も、恋愛以外のこの状況には気付き、蓉杏に感謝していた。


昔は私や宋宋が、守ってあげていたのになあ…。私も年頃になったのと同じで、蓉蓉も成長したんだね…。背はあまり伸びていないけれども、当人はきっと相変わらず、キャラ設定と同様に気にしているのだろうな…。


幼い頃の怜銘にとっては、宋宋はお兄さん的存在であり、また蓉蓉は妹的な存在であった。怜銘の姉・秋凜が結婚したことで知り合い、姉夫婦の屋敷に遊びに行く度に顔を合わせた3人は、次第に仲良くなって行く。宋爛と蓉杏は従兄妹同士なので元々知り合いだが、別に仲良く遊んでいた訳ではない。どちらかと言えば、蓉杏の兄・廉江を取り合っていた2人だったから。


その関係が変わったのは、怜銘と知り合ってからだ。穏やかで争うことが好きではない怜銘に、段々と影響されていく2人は、怜銘が姉夫婦の元を訪ねて来るのが、楽しみであったのに…。ある日を境にして、彼女が唐突に来なくなった。宋爛は約束を破られたと言っては、裏切られたという傷ついた暗い表情をして……。


蓉杏は逆に、怜銘が絶対に約束を破る訳はないと、信じていた。だからきっと何か理由があるに違いない、と考えていて…。実際に彼女の勘は当たり、秋凜から怜銘が大怪我をしたと聞かされた時は、宋爛と共に見舞いに行こうと、計画を立てていたぐらいだ。怜銘が人間不信のトラウマ状態となり、誰にも…家族にさえも顔を見せられなくなっていると、今は…自分の部屋に閉じ籠っているのだと聞かされ、結果的に会いに行けなくなっていた。


あの時…無理にでも、お尋ねすれば良かったですのに…。怜銘お姉さまが()()()()()()()()()()()()()()()、お姉さまがわたくし達に会ってくださるまで、毎日でも押しかければ宜しかったのですわ…。


あれから何年も、蓉杏はそうずっと後悔していた。しかし、直ぐに行動しなかったことで、今更尋ねて行く勇気が持てずにいた、蓉杏と宋爛は…。この機会に怜銘と再会出来ることを、実は心の底から願っていた。そうしてその機会はやって来たものの、どう声を掛けたら良いのかと…迷いつつ。怜銘の傍には、何時も誰かが…大勢の人間が集まっており、声を掛ける切っ掛けが今日まで掴めず、漸く今日になってその機会に恵まれ、宋爛は意を決し声を掛けていた。


同じく蓉杏も、宋爛がさり気無く声を掛けたことで、後はどう自分が声を掛けるべきかと見守っていたが、宋爛の深い考えナシの言動には…見ていられなくて、如何にか蓉杏もさり気無く声を掛けることに、成功した。


肝心の怜銘は2人とは距離を置き、空気の読めない…いや、読まないと言うべきの宋爛は兎も角として、蓉杏はその事実に気付いていた。親し気に昔の呼び名で呼んでくれてはいるものの、何処か埋められない距離間を怜銘に感じていた。空気が読める蓉杏には、それが()()()()()()()()()()()()ように感じ、何かが違う…という気もしてならなくて。


だからと言って自分も宗爛も、怜銘とはまた距離を取ろうとは、全く思っていないけれど…。今度こぞ、絶対に怜銘の手を離さないようにしよう…と、固く決意をしたのであった。


そして一からまた、友達の関係を始めたいと、そして…やり直したいと……。

 今回も幼馴染キャラで、攻略対象者となります。これで女性は残り2人が、まだ正式登場していないこととなりました。まあ、本編にはあまり重要キャラではないので、チョイ役で登場させるか、番外のみでの登場か…まだ決定していません。

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