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宮ラブ 〜後宮入りは、全力で阻止します!〜  作者: 無乃海
前半 彷徨う恋
23/123

22。侍女の真の正体は…

 今回も、まだ4日目が続いています。


漸く怪しい侍女の正体が、ハッキリとします。

 怜銘は魔石の存在も知らなくて、魔法を使うことと魔術を使うことは、別であるという理屈も、知らない。魔法は本人が元々持って生まれるものなのに対し、魔術には魔術の素質のある者が訓練して得るもの、とされている。そして魔石は、魔法も魔術も使用出来ない者でも使える物、とされている。この3つは相容れるようで()()()()()()()()()()、とされていた。


自分の力というものを何も感じない怜銘には、自分に何らかの力があると突然言われても、「はい、そうなんですね。分かりました。」という風に、それを言うのが例えこの世界の神様であったとしても、直ぐに理解出来る訳ではなくて。寧ろどうしてそう言い切れるのかと、尋ねてみたいぐらいであった。


それにしても、前世では『宮ラブ』のゲーム作者だった清季は、このゲームの設定については、全て知り尽くしているのだろうか…。怜銘が『宮ラブ』の登場人物として登場しないのは、清季が知っていて当然なのだが…。その理由をも知っていると、さり気なく言われたことに対して、これには…怜銘も驚く。


…それは、どういう意味なの?…前世の時から『怜銘』というキャラを、知っていたという意味なの?…それとも、竜の神様から聞かされた…というだけなの?


 「前世の時は、怜銘様の存在は知りませんでした。というか、肝心のあの人からは何も、話してもらえなかったんですよね~。結局それは、竜の神様から聞きました。竜の神様としてはこの世界のこと以上に、怜銘様達のことも心配されておられたんですよね。神様達の所為でこうなったのだと、仰っておられて…。これ以上のお話は、今は話せませんけど。」

 「………」


竜の神様が、私のことを…心配されている?……何故に、私のことを……。私が特に竜の神様を信じていて、毎日お祈りを欠かさずしていた…とか、自分の願いか何かを毎日神頼みをしていた…とか、そういう言動があったのならば、神様に気にかけてもらえてもおかしくはないけれど…。別に私は前世から、信心深くもないのにねえ…。それに、神様たちの所為だなんて、どういう意味があるのだろうか…。


怜銘は暫く無言の状態のままで、徒然と考え込んでいた。今の彼女には清季が話す内容に対して、理解出来ないことばかりだ。まるで、ナゾナゾの問題でも出されたような気分である。説明されても、新たに説明を追加される度に、更に疑問が膨れ上がって行く…という、賢者になるかどうか試されているとか、竜の神様の弟子にでもなる試験を受けているとか、そういう難解さを感じさせられていた。


…ん?…それよりも、(ぼく)清季(しょうき)という名に心当たりがあるような…。…ああっ!?…墨清季って、『宮ラブ』のナビゲーターの名前じゃなかったっけ?!


ふと彼女は、清季の名前を何処かで聞いたことがあると、聞き覚えがあることに気付いて、頻りに首を傾げては考えを巡らしているうちに、重大な事実に気付き…。怜銘は弾かれたように顔を上げ、清季を睨みつけるように強く見つめた。彼女の顔をジッと見つめるうちに、とあるキャラのことを思い出したのである。そうして漸く、その登場キャラの名前だけではなく、一応は顔も一致した(?)のであった。


そうだったわ…。『宮ラブ』にはナビゲーターキャラが、1人だけ登場していたわね…。ゲームの中では、主人公として男性キャラを選ぶと、その主人公キャラが攻略対象として選べる女性が登場し、更に攻略対象の女性を決定すると、その侍女として登場するサポートキャラがいた。それが、清季でしたのよ。……あれっ?!…それならば何故、()()()()()()()()()()のよっ!?


再びギョッとした表情となる怜銘を、直ぐ傍で面白そうに見つめる清季は、直ぐ顔に出るタイプの怜銘が、今何を思っているのかということに、気付いていた。清季は前世から、他人の心の機微に対して敏感だ。その上彼女は、自分の気持ちを隠すことも上手で、相手に合わせて行動することも多い。BL好きという要素も、理解のある人物の前では本音を見せても、理解の無い人達が多い場面では、BLに全く興味のないフリもしていたぐらいの徹底ぶりだ。


そういう裏表のある清季だからこそ、怜銘のように包み隠さず出すタイプは、案外と好きだった。こういう人物は真面目な性格の人も多く、揶揄っても素直な反応をするし、直ぐ怒ったりションボリしたりと喜怒哀楽も豊かで、観察していても面白いと感じていた。また素直なので騙されやすく、揶揄った時の反応も分かりやすくて、退屈しないなあ…とも思う清季は、結構いい性格の持ち主なのだ。


自分が転生する為に、ゲームのナビゲーターとなる為に作った訳ではなく、本来の設定通りであれば、主人公と攻略対象を結ぶ為のキャラだ。但し自分が転生した以上、主人公にも攻略対象にも、単に()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。この世界で生きている彼女も生身の人間なのだから、自分の意思もハッキリ主張したいし、単に思い通りにはなりたくないのだと…。






    ****************************






 このように屈折した性格の清季ではあるが、怜銘の悶々と1人考える姿に、思わず吹き出しそうになる。怜銘自身は顔に出していないつもりだろうが、清季から見れば丸分かりであった。他の者達も気付いているだろうが、これでも怜銘は赤家のご令嬢なので、誰もが口に出さないだけだろう。


さて肝心の怜銘は…というと、知らぬ内に自分の侍女となっていたナビゲーターの存在に、苦悶している最中だ。『宮ラブ』のイベントを少しでも思い出すことで、その時のナビゲーターの言動を思い出そうとして。


黒髪黒目で日本人そっくりな見た目なのが、ナビゲーター・清季だ。『宮ラブ』の登場人物としては、十人並みの容姿で前向きな性格という、()()()()()()()()()()設定されていた。現実の彼女を怜銘から観察すれば、ゲーム通り日本人風の容姿というよりは、中国人に近い顔立ちだ。彼女の性格は怜銘と同様で、前世の性格が色濃く出ていると思われる程に、全く異なっていた。


 「清季はどうして、わたくしのナビゲーターになられたの?…まさか、これも…神様が関わっておられますの?」

 「…いいえ。神様は…全くではありませんが、関わってはおられません。この侍女の配属を決められたのは、侍女長なのですからね。但し、それ以前に神様が私の身分を、墨家の家柄を…中間層以上にされたのですよ。お陰で我が家は新しい商売事を始めても、滅多に失敗しませんわ…。」


それって、神様が関わった事象になるのだと、カウントしてても…いいんじゃないのかな…。侍女長は私の家柄に相応しいと、清季の家柄を選んだのだろう…。侍女長が選んだというよりも、神様の力で選ぶように仕向けられたのかもね…。


怜銘は、声には出さずに考える。清季からは、揶揄ったら面白くて退屈しないタイプだと判断されたが、それは決してお馬鹿という意味ではない。この世界の貴族の殆どが、学校に通わないのでハッキリしないが、家庭教師から勉強もよく褒められたことだし、前世でも学校での成績はそれなりに、優秀であったので。


 「兎に角、神様からの頼まれ事も多くて、まるで神様の雑用係のような気分なんですよね…。そういう理由で、神様の方の都合もあることでしょうし、怜銘様付きの侍女というのが一石二鳥だったのでは、ないでしょうか?」

 「………」


神様からの頼まれ事…?…神様の雑用係って……。竜の神様って、案外と人使いが荒い神様なんですね…。一石二鳥って……私の意見はそこには、0%も含めてはもらえないのですね…。


何となく()()()()()()()()()()()()、怜銘が遠い目をするのも、仕方がないことだろうか…。自分に関することだというのに、何故か自分には全く知らされないという状況には…。流石に、穏やかで人当たりの良い怜銘でも、心が(すさ)んでしまってもおかしくない…。竜の神様…。どうしてわたくしには、直接語り掛けてくださらないのですか?…という言葉を、投げかけたくはあったけれども…。


取り敢えずは、清季がナビゲーターと思い出せたし、私の敵どころか味方だと判明して、良かったかな…。竜の神様から頼まれたということは、私の運命は破滅するとか死亡するとかではなさそうで、一応は身の安全が確保できたのよね…?


怜銘もまた前世から、楽天的な思考の持ち主だ。良い意味で言えばマイペースにも取れるが、悪い意味で言えば深く考えるのが面倒なタイプだ。どう転んでも、成るように成ればいい。これが、前世の彼女の口癖である。大雑把な性格とまではいかないものの、細かいことには拘らない主義で。勿論、拘る時にはトコトン拘る彼女だが。


その一方で清季は、1人で自問し納得する怜銘を眺めては、ニンマリとほくそ笑んでいた。神様から頼まれた時には、人助けなんて超面倒だ…とか、そういうのは性に合わない…とかと、面倒に思っていた清季だったが、目の前の今の怜銘を見つめていると、何気なく手助けしたい気がして。清季の立場から見れば、マイペースな怜銘の言動も、危なっかしく放って置けないという、お節介な気分にさせられた。


怜銘様って、隙間だらけだよね…。私の場合ならば地味に仕返しをするところを、人が良過ぎる所為で、余程のことではない限りは許しちゃいそうだ。これでは、竜の神様が心配するのも、当然なんだよね…。


同じ転生者仲間として、清季から生温い視線を送られているとは、気付かずにいた怜銘は…。神様がこうまでして、怜銘達の人生に手を貸そうとしている理由には、全く心当たりがなかった。神様が清季に頼んでまで、何をさせたいのかということを、今の怜銘に記憶が一部ない所為で、神様の意思を汲み取れなくて。


其れこそが…()()()()()()()()()()()。誰も…知る由がない。清季でさえも……。

 新キャラ・清季は、怜銘と同じく転生者で、怜銘の知り合いのようです。


今回、この世界の神様が関与していることが、明らかとなりました。神様の本当の目的は、一体なんでしょうね…。


今回で漸く、同日日は終了です。

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