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宮ラブ 〜後宮入りは、全力で阻止します!〜  作者: 無乃海
前半 彷徨う恋
19/123

18。隠された記憶の裏側

 後宮生活3日目の出来事、漸くこれで終わります。


主人公と皇子との遣り取りの続き、となります。

 「……へっ?………どうしたんだ、怜銘?」

 「わたくしが突然、皇子(みこ)様の執務室に押し掛けた所為で、皇子様の大事な執務の時間を奪ってしまいましたわ…。本当に申し訳ございませんっ!…ですから、是非ともわたくしに、お詫びをさせてくださいませ。執務自体のお手伝いは出来なくとも、書類を仕分けたり片付けたりなどでしたら、お手伝い致しますわっ!」


急に怜銘が立ち上がり、勢い良くお辞儀をしたかと思えば、謝ってきたことにも驚いた愁水であったが、更にお詫びとして自分を手伝うと力説し出したので、流石の彼も戸惑ってしまう。思わず変な声が漏れたのは、彼の所為ではないだろう。折角冷静になり掛けていた彼の問いに、怜銘は繰り返すように自分が悪いと謝り。今度は具体的な手伝いの内容まで上げられては、愁水もこれ以上どう反応すれば良いのかが、分からなくなる。


麓水国には、お辞儀という習慣がない。怜銘が()()()()()()()()()、愁水は意味不明で戸惑う。顔を下に向けて目線は地面を、相手の靴の辺りを見ながら挨拶をしたり、立ち去る時には軽く頭を下げたりというものが、麓での挨拶がそれに近い行為と言えることだろう。


麓での正しい謝り方は、相手とは目線を合わせないように、顔や目線を伏せるのが正解だったりする。決してお辞儀のように深く頭を下げず、顔を俯かせる程度が正しい状態なのだ。


前世の記憶を思い出す前の怜銘は、麓の正式な礼儀作法で謝っていたが、今の怜銘には前世の記憶のお辞儀の方が印象強く、普段は気を付けていたとしても、特にこの時はプチパニックに陥った所為で、彼女もついつい身近な方のお辞儀を使ってしまう。何せ前世では唯の一般人として暮らしており、謝り慣れていた。一般日本人の悲しい(さが)なのか…。


怜銘は、肝心なことを忘れていた。皇子と距離を置くということを…。自分からは近づかないようにしようと、決めていたことを。自分から手伝うことは、以ての外だというのに…。自分の失態を取り消そうという考えで、すっかり忘れていたようで…。そのぐらいに彼女は動揺していたし、お詫びをしたい気持ちで一杯で……。


 「…えっ?……い、いや…貴方は別に悪くない。あれは、私が少しでも執務を片付けてしまいたかっただけで……。」

 「それでも、わたくしが、皇子様の大切なお時間を奪ってしまいましたのは、明白な事実なのですわ…。」


シュンとする仕草をした怜銘に、皇子には別の思惑が膨れ上がっていく。怜銘のお詫びという申し出を受ければ、彼女と自分との時間が増えるのだと、そういう思いが()()()()()()()()()()()


漸く落ち着き、怜銘の伝えたい事柄が理解出来た愁水は、当初のうちは怜銘のお詫びを断ろうとしていた。元々彼は、怜銘の侍女から王宮の見学を申し込まれた時から、怜銘が執務室を訪れることは知っていた。狼凱に怜銘を案内するよう指示したのも、愁水本人なのだから当然だ。怜銘の侍女・蓬花から申し出が会った時から、怜銘の相手をする為にと、自分の執務を減らそうとして頑張ったのである。


だから今日は元々、怜銘が滞在する時間を多く見積もっており、その時間分の執務は昨日のうちに終えてある。それでも怜銘が来る前に、少しでも多く終わらせようと頑張っていただけなのだ。怜銘にはちっとも邪魔をされてないというのに、彼女が自分の傍で書類を整理する姿を、思い浮かべてしまう愁水は…。


 「…そ、そうなのか…。そういうことならば、貴方にも…お手伝い願おうか?」

 「……はいっ!…でしたら、わたくしは今から出来ますわ。」

 「い、いや…流石に、今日は…無理なんだ。出来れば…明日から、お願い出来るだろうか…。」

 「は、はい…。大丈夫ですわ。明日から朝早くにお手伝い致しますわ。」

 「い、いや…それも…困るんだ。出来れば、午後からにして欲しい。…ああ、もし良ければ、お昼を共に取ってから手伝ってもらうのも、良いのだが…。」

 「…そ、それは……ちょっと……。午後から…お手伝いに参りますわ。」

 「………ああ、お願いするよ。」


こうして、怜銘は皇子の手伝いをすることに、なったのである。そうして今日はその後直ぐに彼の執務室を退出し、そのまま王宮を後にして後宮の自分の部屋に戻ったのだが……。


 「…あれっ?…わたくし、何時の間にか…皇子とお会いすることに、なってしまいましたのね?…然も毎日、彼の執務室で……。」


ガ~ン……()()()()()()()()()()()怜銘は、自ら約束したこととはいえショックを受け、ベットに倒れ込むようにダイブして。今は1人っきりで清蘭もいないので、何をしていても不審がられない。但し清蘭に見られたら、間違いなく長いお説教を受けることになるが……。


自分から言い出した以上、今更取り消すことは不可能だろう…と。自分はなんて馬鹿なことをしたのか…。そう怜銘は、其れなりに落ち込んでいた。






    ****************************






 それにしても、変なのよね…。他の貴族令嬢達は、皇子にアピールしていないのかな…。皇子の執務室に長い時間滞在しても、誰も訪問して来なかったし、王宮の廊下でもすれ違うこともなかったわ。モブの私は()()()()()()()()()()()()()()、他の貴族令嬢達はイベント攻略しなければ……。


…ああ、そうだった…。『宮ラブ』は元々、ギャルゲーだったわ。女性側が攻略する立場ではなく、男性側が攻略する立場だった…。女性側から動いても、肝心の男性主人公達が動いてくれないと、攻略が進まないのよね…。


そう1人呟く怜銘は、午後からの時間は此処…王宮の書庫に、来ていた。自分の部屋にて昼の食事を取った後、「お嬢様の念願の書庫にでも、行きましょうか?」と清蘭が提案してくれたので、早速蓬花の案内でこの書庫にやって来ていた怜銘は、あまりの本の多さに当初は驚いた後、瞳をキラキラさせて本を漁っていた。つもり今の彼女は、読書中なのだ。


…あれっ?…そう言えば、皇子は誰を攻略するつもりかな…。今日の午前中はほぼ私に付き合っていたし、明日から午後は私が手伝いすることになったし、皇子のお見合いが進まないと、他の男性主人公達も相手が決められないわよね…。まさか彼は、結婚願望がないとか…。未婚のまま皇帝になれたとしても、彼の場合は何れ婚姻しなければならない。皇帝の跡継ぎが出来ないのは、大問題なのだから。


一応は他にも、皇位継承権を持つ人物は存在する。一夫一妻なのだから、子供が生まれない可能性もあるので、皇子の子供が出来ない場合は、次の皇位継承権を持つ人物が、そのまま皇位継承することになっている。要するに今現在の麓では、愁水の次に皇位継承権を持つのは、現皇帝の甥っ子である 炎豪(えんごう) だ。彼は、王族近衛隊の総隊長という立場であるが、決して縁故で得た職務ではなく、彼の場合は実力で得た職務でもある。おまけにまだ未婚なので、単に彼の嫁というだけではなく、お妃にもなれる人材を今から探すことも可能だ。


其れに彼自身、見た目も筋肉質の強面イケメンであるし、弱き者には思いやりのある人物でもあるし、皇帝としての威厳も民への信頼も得られそうであり、例え皇子に子孫が出来なくとも、皇位継承に関しては大丈夫そうに思える。


でも…だからと言って、最初から皇子が結婚しないなんて、現皇帝も誰も納得しないでしょうに……。そうだわっ!…私が…恋のキューピットになればいいのだわ。私が邪魔をせず、逆に積極的に2人の仲を取り持てばいいのよ。そうすれば、皇子の()()()()()()()()()()()()()し、一石二鳥よね?


怜銘は恋愛に関しては、案外と単純だ。前世に恋人がいたとしても、彼女自身は恋愛に疎いタイプであったのだ。況してや、自分から惚れて告白するなんて、絶対に有り得ないタイプでもあったりする。告白されても気付かずに、スルーする可能性が高くて。実際に…前世では、何度もあった事実でして…。


その彼女が、恋のキューピットになれる筈もなく、結局はこの世界が現実と思いながらも、『宮ラブ』のゲームと重ねて見ている怜銘は、自分はモブだからイベントがないと思い込んでいた。


しかし、それも仕方がないことだ。今の怜銘には、まだ思い出していないことが、山ほどあったりする。読書を黙々としていた怜銘だったが、麓水国の歴史や民の生活が載った本、また恋愛小説などを見つけて読むうちに、今頃になって不自然な現状に気付いた次第である。一度気付くと本好きの怜銘も、本に集中出来なくなり、先程からは熱々(つらつら)とおバカな考えに走り始めている。


前世の頃から怜銘は、決して成績は悪くもなく、常に上位の成績をキープしていたのだが、教師をしている両親のお陰(?)もあり、自宅ではテレビや漫画を見ない生活をずっと続けており、世間の常識的な事柄には物凄く疎かった。流行りものなんて、全く知らずに育っていた。当然、それまでは恋愛も禁止だったので、色恋沙汰にも疎くて。ある時までは…。


そして…彼女は、まだ知らなかった。この世界は、前世の常識では計り知れない大きな事実が、隠されているということを。彼女が転生したのには、ちゃんとした意味があるということも。


彼女が色々と考えている一方で、此処とは異なる場所では、とある存在が彼女を常に観察していた。それは…異形の姿をしており……


あの()の記憶を封じておいて、良かったぞな…。これがゲームとやらのイベントだと知った折には、あの娘のことだから是が非でも、逃げ出そうとするに違いない。この世界には何としてでも、()()()()()()()()()()()()()のだ。あの娘に逃げられては、(ワレ) だけではなく…あの者達も、困ることになるだろう。それに…あやつ の呪いが解けぬままになってしまい、終いには…麓水国どころかこの世界も、完全に消滅してしまうであろうな…。


そういう事情も…こういう存在を、あの娘は…まだ知らない…。

 怜銘が自分の行動の矛盾に、漸く気付きましたね。書庫を利用した話は、また出て来ると思います。


最後に、謎の生物(?)が登場しました。漸く、此処までストーリーが出来たという感じです…。登場人物が勝手に動き回って、中々上手く進まない……

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