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宮ラブ 〜後宮入りは、全力で阻止します!〜  作者: 無乃海
前半 彷徨う恋
13/123

12。後宮、2日目 ②

 前回の続き、同一日の出来事です。


ゲームでは男性主人公となる、武官達の登場となります。

 怜銘が鍛錬場に現れた途端、武官達の関心が一気に彼女に向けられた。とは言っても、最も高貴な貴族令嬢である怜銘を、ジロジロと眺める訳にもいかないので、チラチラと覗き見るような感じだ。武官達は噂には疎い者達が多かったが、流石に今回はお見合いも兼ねている為、必要以上に異性を気にしてしまうようだった。


中でも怜銘の噂はまだ2日目というのに、少しずつ鰻上りの評判となっている。ずば抜けた美人ではなくとも、自分の妻が賢妻賢母というのも悪くない。そう判断する男達も居たぐらいだ。一生一緒に暮らす相手だからこそ、美人で我が儘なタイプより、大人しくて思いやりのある女性が良いのだと。


男性側にもプライドというものがある所為で、やはり綺麗で誰もが羨むような美人を妻にしたい、そう葛藤する男性も多いことだろう。一夫一妻制の中では、こうして慎重に婚姻相手を選びたいのは、男女共に同じ気持ちであるようだ。


さて、『宮ラブ』の主役側は、誰が鍛錬場に来ているのかな…。


鍛錬場で怜銘が探すのは、『宮ラブ』に登場する主役キャラとなる人物達だ。主役には計8人の男性キャラが存在し、ゲームをする際にはその中から1人を選び、婚姻したい異性を攻略していくことになる。乙女ゲーとは反対の立場となる為、攻略対象は女性となる。


怜銘は過去の記憶を総動員し、当時遊んでいたギャルゲーキャラの容姿を思い出そうと、必死であった。ゲームでは当然のことだが、キャラはイラストで描かれており、現実の彼らとは程遠い容姿なのだ。よくよく思い出してみれば、特徴は良く捉えているかも…とは思えても、あのイラストと現実の彼らが全く同じに見えないのは、仕方がないだろう。


目はキラキラと描かれ、髪型もキャラによっては無茶苦茶ハネていて、転生ものの物語では「そっくりだ」とよく表現されているのだが、実際にはよく観察しないと分からないかもしれない…。


麓水国では様々な髪の色の人が存在し、髪の色や服装で判断可能ではある。どういう仕組みなのかは分からないが、全国民が全く気にしないのは、単に怜銘の気のせいではないだろう。事実、怜銘の髪の色も、赤みのある黒色だったりするし、他にも赤・緑・ピンク・紫・茶・オレンジなど、多種多様の色があったりする。


因みに、麓ではあまり見かけない髪色は、白・金・銀・灰色だ。黒髪は若干見かけるし、この国で一番多い色が青色系統色であるのは、間違いないだろう。そして、今怜銘が探しているのも、紫以外の色を持つ主役キャラ達だ。


…ん?…あれは……。昨日見かけた現皇帝の甥っ子で、皇子とは従兄弟(いとこ)の関係でもある『麓炎豪(ろくえんごう)』ね。王族一族の彼は、王族を守る立場の近衛隊の総隊長だったわね。『宮ラブ』でも、見た目が筋肉質の強面イケメンと設定されていて、強面らしさが出たイラストが描かれていたけれど、彼に関しては…そっくりと言えるかも、知れないわ…。くすくすっ……


彼に関しては特徴を掴んでいる…と気付いた怜銘は、思わず吹き出しそうになり、慌てて顔を引き締める。高位令嬢としてあるまじき姿を、大勢の人が居る場で出す訳にはいけないと、我慢する。普段から細かいことには拘らない怜銘も、流石に此処では不味いと知っていた。笑いを堪えるあまり、肩が震えてしまったのはご愛嬌というもので…。


現実では見えていない筈の筋肉が、上半身裸のイラストで描かれていた所為で、それが怜銘の頭にチラつき、頭から掻き消すのに苦労していた。大笑い寸前まで行きかけても、笑い声とニヤ付きそうな顔を抑えたのは、流石は貴族令嬢だと言えるだろう。


何とか笑いを噛み締め、他の主人公達を探すうちに『青丁暗(せいていあん)』の存在を見つけて。炎豪がこの名を現すかの如く、鮮やかな赤髪を持つのに対し、丁暗は青髪を持つ青年だ。赤家も赤が付くが、実際には深みのある赤が入る黒髪であり、普段は黒にしか見えない髪が、光に当たると赤っぽい色にも見えたりする。


丁暗は青家の三男で、剣術が得意で恥ずかしがり屋のシャイな青年だと、怜銘は思い出す。近衛隊の見習い剣士なのだが、寡黙で物静かなところがカッコいいと、前世では若い女性一番人気のキャラだった。それに対し炎豪は、弱き者には思いやりのある人物で、異性よりも同性や子供達から絶大な人気があると、設定集には載っていた。怜銘の好みで言えば、前世の時から筋肉質系の異性は、苦手としていた。別に、イケメンも特別好みではなかったけれど。






    ****************************






 男ばかりの家系で育った丁暗は、異性がやや苦手の傾向にあり、『宮ラブ』で彼を主人公に選んだ時には、異性を堕とすのにも苦労したわね…。


ゲームでの彼はクーデレタイプであり、懐かせれば可愛いタイプなのだが、そこまで攻略するのに超絶苦戦した怜銘。攻略する側の彼が、モジモジして声を掛けられず、漸く異性に接近しても上手く話せずに、何度もゲームオーバーの文字を見たことだろうか、と…。ゲームではやり直せても、現実ではあり得ない設定となる。


黄元幻(おうがんげん)』と『朱太霧(しゅたいむ)』の2人を偶然に見つけた時、怜銘は遠い目をしつつも、攻略ゲーム時のことを思い出していた。黄家の次男である元幻は、黄家と青家が仲の良い関係である為、元幻も丁暗を弟のように世話を焼く、という設定だ。現実でもそれは同じようで、丁暗に親し気な口調で話し掛ける元幻がいて。


元幻はちょっとゴツイ系の大男だが、まるで女性のように、甲斐甲斐しく後輩の面倒を見るのが、好きだった。見た目によらず彼も優しいが、容姿はそう悪くなく普通以上ではあるものの、決してイケメンレベルではない。その見た目の所為か、現実で彼がタイプだと話す侍女は、今のところ現れていない。


麓水国は、男女共に美形揃いなのよね…。私の周りの侍女にも美女や可愛い系が多くて、私のような普通レベルの平凡顔は、少数派よね…。ううっ、ちょっぴり悲しくなってきた…。


自分の容姿を自ら採点し悲しくなる怜銘だが、実は平民には普通レベルの平凡が多いとは、彼女は知らなくて。平民で顔が整う者達は王宮や後宮で働くことも多く、宦官や使用人(男性の場合は下男、女性の場合は下女も含む)としても雇われる。怜銘の周りの平民出身の者達も、そういう事情から美男美女が多い事実もあり、この世界は美男美女ばかりだと、彼女が自然とそう思い込んでしまい…。


元々は平民出の太霧は剣術の腕が優秀で、朱家の現当主に認められた現在、朱家の養子となっている。白黒ハッキリした性格の所為で、身分を気にせず諫言する上に実力も十分にあるので、貴族達からのやっかみの原因となり、周囲とのトラブルが多いのだと、今朝義姉である蓬花から情報を得ていた。平民出身だと知られていても、中々のイケメンでもあるので、貴族ではない女性からは良くモテるのだと、また彼自身は今のところ異性には興味がない様子なのだと、蓬花が苦笑しながら語っていた。


朱家は蓬花の実家でもあり、太霧は幼い時に蓬花の義弟になっている。怜銘は、蓬花から話を聞いていた時には気付いていなかったものの、彼らについてのことを思い出すうちに、漸く気付いて…。


蓬花も、攻略対象の1人なのね…。他にも色々と思い出せば、中々の美人さんという容姿も、後宮の侍女となることも、『宮ラブ』の設定と同じであるのに、何故かモブの私の侍女になっていて…。「わたくしより美しいなんて…」と、ゲームでは淑玲の侍女である蓬花は、難癖をつけられ虐められる設定だった筈なのに…。


怜銘が思い出したゲームと現実には、大きな違いがある。大体のあらすじは同じ流れではあるものの、元々はゲーム未登場の怜銘の侍女に、蓬花が選ばれたという事実には、大きな違いと言えることだろう。淑玲の方が高位の筈なのに、蓬花が淑玲の侍女ではなく怜銘の侍女となるのは、どういう理由(わけ)なのか…と。ゲームと現実は異なる世界だと言えそうだけれど、怜銘には嫌な予感もしており、どうしても簡単にはゲームとは切り離せない部分が、あったりする。


現実では…ここ近年は赤家の方が、王家以外の王族一族よりも高位として扱われているけれど、彼女はそれを知らなくて……。


 「偶には私も…気晴らしに、剣術の稽古をつけてもらおうかな?」


ゲームキャラの髪の色は派手で分かりやすく、元幻は金髪ではなく黄色だし、太霧は黒色で蓬花はオレンジ色だった。他の主要人物も目立つ髪色をしており、その中でも紫色は王家の直系の者に多い色となる。


特に大きな声ではなくとも、鍛錬場に朗々と響く声で話した人物は、丁度怜銘が頭に描いていた紫の髪の人、その人であった。何と…第一皇子が唐突に、鍛錬場に現れたのだ。


完全に油断していたわ…。今日は鍛錬場の見学に来たので、絶対に会わないと思っていたのに…。どうして、彼が此処に来るのよ…。


怜銘がそう思うのも、無理はない。鍛錬場に居た全員が、突然現れた皇子に驚いた仕草をしていた。見学していたご令嬢達だけは、喜びに満ちた表情で。今日の皇子は政務が忙しいと聞き、令嬢達は会えないと思いガッカリしていたのだ。但し、唯1人を除いては…だけど。


怜銘にとっては、嬉しくない状況だ。寧ろ、迷惑だとさえ思っていたほどで。今日は皇子は姿を見せないだろうと、侍女達の情報で知っていたからこそ、此方へ出向いたというのに。


これでは…何の為に此処に足を運んだか、分からないわ。皇子には関わりたくないのに、何故こうも出会うことになるのかしら…。兎に角これ以上、自分からは絶対に彼には近づかないんだから…。


だが怜銘は、肝心なことを忘れていた。皇子から近づいて来られた場合は、逆に避けようがないことを。

 漸く、皇子以外のゲームの男性側登場人物が、何人か登場して来ました。今回登場するのは武官だけとなりますので、文官達はまだ先になりそうな…。


何故か皇子が乱入して来て、動揺する怜銘。次回に続きますが、副タイトルは変更する予定。

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