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宮ラブ 〜後宮入りは、全力で阻止します!〜  作者: 無乃海
本編終了後の番外編 【本編のその後では…】
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28。貴方と2人で幸せに!

 今回は、細かく4部に分けました。視点も一部、変わります。

 「乙女ゲー悪役令嬢はヒロインとは違い、ハピエンもバトエンもメリバも、大抵が不幸で幸せになれないし、()()()()()()()()()乙女ゲーが、私は抑々…好きになれないから。」


腐女子だと自ら断言する杏梨だが、作家という職業柄の所為か、感情移入することも多いようだ。確かに…男性の俺から見ても、乙女ゲーの方が残酷だと思う部分もあるが、ギャルゲーもBLも別の意味で、残酷な描写がある。ゲームやアニメもまた漫画や小説も、作り物の世界だと言える。BL作家として活躍中の杏梨も、それを十分に理解している筈だが、乙女ゲーだけに拒否反応が見られるのは、それ以上に感情移入するのが原因か…?


杏里の生家の清倉家は、昔から格式を重んじる家柄で、新興系のあらゆるものを拒絶する、そういう傾向が見られた。杏里は両親や家のしきたりに、常に従うことを余儀なくされていたという。清倉家の役に立つよう教育する方針で、ありとあらゆる犠牲を負わされた本人は、今までに相当の我慢を強いられてきたらしい。


杏里と俺は、幼い頃からの付き合いだ。地元では、其れなりの家柄の子息達が在籍すると、有名になっている私学小中学で、異性を超え友人となった俺達。地元公立高校に進学した俺と、両親に男女交際を危惧されたことで、女子高へ転学した杏梨とは、別々の道を歩んでいく。女子校の友人の影響で、腐女子に目覚めた杏梨は、BL分野全てにハマり、自作BL小説を掲載した同人誌活動を経て、今のアンリへと繋がっていったようだ。


杏里は大学に入学したのを機に、生家を出ている。女子高時代に一度羽目を外したことで、もう元に戻れないと実感したらしい。両親を騙すように納得させたようだが、一人暮らしを開始して以降は、彼女の人生は劇的な変化となったことだろう。同人誌に掲載中の小説が出版社の目に留まり、正式にデビューすることとなる。


大学を卒業する前から、小説家アンリとして活動し始めた杏梨は、BL小説家として有名になっているが、男女の恋愛小説も一応普通に書ける。但し、書く気がある時だけ書くという、()()()()()()()()()……


俺はこれから作るゲームの筋書きを、杏里にある程度任せている。ノリノリの杏梨は俺が頭に描く世界を、見事に再現した。こうして俺と杏梨は、二人三脚でゲーム作成に打ち込んでいく。






    ****************************






 現在3年生になったばかりの女子大生、それが私こと『赤石 世里銘(せりな)』だ。今春に大学を卒業し、社会人となった彼氏がいる。それ以外はごく普通の現代女子と、言えるだろうか…?


私の彼氏・(そう)ちゃんは、異常なぐらい異性にモテ捲るイケメンで、平凡な私には勿体ないぐらい。モデル級イケメンの彼の家族は、有名企業を経営する一族で、超がつくほどのお金持ちだし、彼自身も穏やかで優しい人。そういう彼からの告白に、寝耳に水だった私…。


…私の両親の職業は自営業で、至極一般的な家庭で特別お金持ちでもない。私の容姿に関しても、ごく稀に美人だと言われても、多分それは単なるお世辞だろうし、()()()()()()()()()()可愛い止まりだよ。


実際に何人かの美女達が、虎視眈々と彼に狙いを定めており、私が選ばれる可能性は限りなく低かった。有名なBL小説家アンリさんと彼が、仲が良いと知った時には、本気で凹んでしまった私…。本人達曰く、男女の仲を超えた親友とか悪友で、互いに恋愛感情はないという。だけど私には、彼らの関係はちょっぴり羨ましい。彼が知れば、本気で嫌がりそうだけど。


双ちゃんは基本的に異性には、口調や態度が冷ややかだ。外見で判断されるのが嫌だと、態とぶっきら棒な言動を取る。私には、只管優しいのに…。勿論、私にだけ優しい態度も嬉しいけれど、何でも言い合える彼ら2人の関係も、私にとっては羨まし過ぎる。


普段は私を甘やかしていても、私の悪いところはちゃんと指摘してくれる。今までに異性と付き合った経験のない私でも、彼がどれだけ私を大切に思っているのか、十分に理解できた。


それでも…彼と別れようと、思うこともあった。彼に懸想する女子達に敵意を向けられても、仕方がないと思う。但し、私への嫌がらせがエスカレートすれば、流石に能天気な私も嫌気が差す。私自身を気に入らなくとも、彼の恋人として似合わないからと、外見だけで判断されるのとでは、全くの別問題なのだから。


 「彼が選んだ私に文句つけるのは、彼が自らの意思で選ぶ権利がないと、そう言いたいの?…まさか自分が恋人になるとか、彼の気持ちを無視していないよね?…貴方達、神様になったつもり?」


私がそう強く問い詰めれば、殆どの女子生徒が黙る。結局、自分が彼女になりたいだけ…。私と彼が通う高校は、ごく普通の公立高校であったから、彼の両親が高校側に何か通告した途端、他の女子とのいざこざは終わった。平穏な日々を取り戻した私達は、別れずに済んだけど……


その後も実は…似た出来事が、何度も起きた。その度に彼が、毛虫以下の対応を相手に取っていたことは、私は後で知ることとなる。本来の私には、もっと悲惨な出来事が起きる、そういう未来が起きたようだが、今の私は…()()()()()()()()







    ****************************






 「貴方とアンリさんの合作『宮ラブ』だけど、私も攻略してみたわ。乙女ゲーの逆バージョンみたいで、初めてのギャルゲーも中々面白かったわ。実際に女性に、人気が出てるらしいのよ。ギャルゲーと聞いた時は敬遠したかったけど、男性向けとしてはソフトな内容だったし、女性も抵抗なく受け入れられるわね。」

 「…そうか。君に面白いと言ってもらえれば、俺もそれで満足だ。」


今日の俺はスーツを着熟し、正装姿でバッチリ決めている。俺が作成したゲーム発売のお祝いを兼ね、セリをデートに誘っていた。とある有名レストランで食事すると、事前に彼女には伝えてあったので、彼女の服装も礼装に近い。今の彼女はスタイルも良いし、何を着ても似合う。だけど…やはりこういう清楚なワンピースが、セリには一番似合うと思う。


昔の彼女は可愛らしい容姿で、今は誰もが振り返る美人で、そんな彼女が俺の彼女だなんて、ちょっと照れ臭い。昔から小柄な彼女は、ハイヒールで余計に背が高く見えており、実際に今の方が僅かに高かった。勿論…中身が()()()()()()()()()、それほど問題ではないが。


 「私はあまりゲームをしないけど、双ちゃんが作るゲームは全て、攻略したいぐらいよ。私と双ちゃんが出逢う切っ掛けも、双ちゃんがお遊びで作ったゲームが、面白かったからだし……」

 「……ああ、そうだよな。俺が初めて作った素人ゲーに、セリが興味を持ってくれなければ、抑々こうして恋人になっていないかもな?」


俺はセリと初めて出逢った頃、一般的なゲームオタクとは別の道を模索し、無名を含む既成ゲームを攻略し続けては、研究する日々だ。杏梨は既に腐女子まっしぐらで、彼奴(あいつ)の趣向に合わせたゲームを作らされる、という頃でもあったりする。


自作ゲーは自習室でのみ公開とし、同じ高校の生徒だけが遊べる仕様だ。自習室で俺の自作ゲーを偶々目にしたセリは、俺のゲームサイトにメッセージを寄越した。俺は自作ゲーを褒められた嬉しさから、彼女とはメールでひっそりやり取りして。次第に彼女に会いたくなった俺は、ある日こっそり隠れて待機し、何も知らずにやってきた彼女に、一目惚れをして。決して外見だけではなく。


 「………貴方は、誰?」


セリを見た瞬間から、中々の美人だとか思ったのと同時に、言葉で説明するのが難しい状況に陥った俺。彼女が初めて言葉を発した瞬間、ビビッという感覚が襲う。間違いなく彼女だという想いが、俺の心に強烈に響く。


 「……………れいめい?」

 「……はい?………今、何と…?」


意味も分からぬまま呟く俺に、少女は目を丸くし首を傾げた。当然ながら昔の記憶を持たない少女が、昔の俺を知る筈もなく、昔の俺も今の記憶を持たず…。家柄も名前も容姿も声も、()()()()()()()違っていても、俺にははっきり分かる。昔も今も内面も外面も、誰より美しい。俺には勿体ないぐらい……





    ****************************






 あまりにも風情漂うレストランの様子に、世里銘は落ち着かないらしい。彼女の両親は博識ある立派な人達で、彼女も家柄の良い家庭の子女に見える。十分に異性から好かれる容姿だが、何故か彼女は必要以上に、自らを見下す癖がある。俺が調べた限りでは俺同様、幼少期から外見上のトラブルで、消えぬトラウマを抱えた。人間関係のトラブルは、()()()()()()彼女自身が自信を全て失くすことへと、繋がったのだろう…。


…清倉家のように狭量な人間を嫌う両親も、セリのことは気に入っている。彼女のことは何があろうと俺が、全面的に守れば良いだけだ。…否、何よりも俺自身が、彼女を守りたいんだよ!


 「自らの想い全てを掛けたゲームだったが、売り上げも上々らしく、俺の長年の夢の1つが叶ったよ。残りの俺の夢が叶うかどうかは、君に懸かっている。セリは俺の願いを、叶えてくれるか?」

 「…えっ?……私が双ちゃんの夢を?…私で良いなら、勿論よ!」


此処までは…俺の予想通り。後は…彼女にプロポーズするだけだと、俺は一度言葉を切り覚悟を決め……


 「……世里銘。俺と…結婚してほしい!」

 「……えっ!?……双ちゃんと結婚?!………はい、私で良ければ……」

 「……っ…!!……ああ、ありがとう!!…セリ……」

 「……双愁(そうじゅ)さん、プロポーズしてくれてありがとう。」


俺の唐突なプロポーズに戸惑い、一瞬言葉を詰まらせたセリは、瞳に涙を浮かべつつも了承してくれる。感極まる俺は彼女をギュッと抱き寄せ、ひっそりと神への誓いを立て。


……過去も現世もそして…来世でも、幸せになる!…絶対に、()()()()()!!


 4部のうち1部分だけ、女性視点となります。前回からの続きで、舞台は現代日本としています。


前回は『彼女』という表現しか登場せず、今回やっとその本人登場です。現代でも幸せになる…ということが、この物語のもう1つの不幸を回避、というコンセプトだとも言えるのかな……


さて、彼ら現代日本での物語は、これにて終了です。次回は、本来の主人公達が戻ってくるはず…。



※本編終了後の番外編です。本編は完結済み。今年中を目途に、番外編完結を目指します。現在、番外最終章となります。その内の現代日本編は今回で終わり、次回から宮ラブ本来の世界に戻る予定。完結まで残すはあと数話、最後まで応援してくださると嬉しいな……

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