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宮ラブ 〜後宮入りは、全力で阻止します!〜  作者: 無乃海
本編終了後の番外編 【元幻の章】
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14。想いとは真逆に…

 元幻の章、続きです。元玄の姿は、ボディビルダー男性を想像してもらえればいいかと。肌の色も日焼けで黒く、筋肉も程々あって…という人物設定なので。

 元々、元幻は気の強いタイプが好みらしく、妹の凜紫はそれに当て嵌まると言えそうだ。身体の弱い母親の代わりに、何年も妹の世話を焼いており、茗明を見た当初から妹同様に気に掛け、何かと世話を焼くようになった。


それに対して幼馴染の恋華は、元々の性質が決して気は弱くなくも、凜紫や茗明達とは異なる性質と言えた。元幻の好みからも外れており、何方かと言えば彼の苦手とするタイプである。また恋華も、元幻には全く興味がないようだ。オカンのような異性には……


この頃の元幻はこれが自らの初恋だと、夢にも思わずにいた。集団見合いという後宮入りの際、高位貴族のご令嬢として着飾った茗明と、久々に再会することで漸く自覚していく。


派手に着飾った凜紫に、兄として目を光らせねば…と、おかしなスイッチが入っていたけれど、また着飾って更に美しさが際立つ恋華にも、何も思うところがなかったというのに、大人っぽく着飾り令嬢らしい茗明には、一瞬だけ時が止まったような感覚となる。思わず見惚れる元幻と、偶然にも目が合った茗明は、目を大きく見開き不自然に目を晒す。彼は何故か、胸がチクリと痛む気がした。


…ああ、嫌われたのかもしれないな…。私のような図体の大きい木偶でくの坊が、茗明のような容姿も心も美しい異性に、好かれる理由はないだろう。


元幻は他人の世話ばかりをしたがり、自分以外の人物の性格など、十分に理解しているにも拘らず、自分自身には否定的だった。母も妹も長兄も文句のつけようのない美しさで、父親と彼だけが平凡顔である。息子の立場から見れば、あの父に美しい母がよく嫁いだなあと思うほど、不思議な現象であった。


集団見合いに元玄も参加していたが、父が婚姻できたのは運の良いことで、自分の婚姻相手は見つからないとして、最初から諦めている。後宮入りした茗明と再会したのを切っ掛けに、彼は()()()()()()()()()()()ことになる。


元幻は漸く恋だと気付いたばかりで、例え…茗明を諦めたとしても、彼女以外の異性と婚姻したいとは、直ぐには考えられそうにない。自分は異性にモテない容姿だと、婚姻相手を特に探そうと思わない。両親には悪いと思いつつ、嫡男ではない自分は何とかなるだろうと、後ろ向きに考えていた。


黄家当主である元幻の父親は、上昇志向を持った人物であり、今回は元幻の方ではなく、凜紫の方に望みを掛けた。娘を王太子妃にしようという、野望を持つ。凜紫も当初から乗り気で、皇太子に狙いを定めているようだ。彼も妹を持ち上げようとして、肝心の皇太子の一途な初恋を知ってからは、恋は儘ならないものだと…。


…自由な恋愛はいとも簡単そうで、中々に難しいものであるな…。私の婚姻は兎も角として、我が自慢の凜紫が諦めざる得ないとは…。皇太子の想い人が赤家ご令嬢であれば、黄家には全く勝ち目がない。然も、あのご令嬢は非の打ち所の無い人格者であり、例え凜紫が世界一美しい令嬢だとしても、容姿以外に勝てる要素がないだろう。妹よ、()()()()()()()()()()だぞ…。


元幻もかなりのシスコンぶりだが、妹を溺愛するあまり、皇太子に文句などをつけたりは、していない。また凜紫も、王太子に自分の方が似合うと言いがかりをつけたりせず、そういう部分では2人共に真面な人間だと、言えるだろうか。


 「赤怜銘(あのもの)よりわたくしの方が、王太子妃に最も相応しいのですっ!」


このように実際に淑玲は、皇太子に詰め寄った。当然の如く、滅多に怒らない皇太子から、物凄い怒りを買っている。元幻もそういう噂を聞いており、淑玲の言動には同情の余地がないことだと、思案する。集団見合い中、鍛錬場で皇太子の対戦相手をした元幻は、その時の皇太子の様子を (つぶさ)に、自らが目撃したのだから。


…凜紫が本気で皇太子に好意を持たず、助かったな…。麓淑玲殿のような失態を起こせば、黄家一家で責任を取らされたかもしれない。何より、愛する妹の失態などを、兄として見たくないからな。何もしてやれない兄を、許してほしい……


元幻は飽くまでも妹の応援に徹し、自らの婚姻に()()()()()()()()()()()。妹の婚姻ばかりに、気を取られるフリをして。美しく成長した茗明を、決して自らの視線の中に入れようとせず、誰かからの視線を背中に感じていても、絶対に振り返ることもなく、邪念を振り払おうとした。






    ****************************






 緑家代表として、茗明は集団見合いに参加した。花の宴に参加した時に、偶然にも元幻と目が合う。久しぶりに再会した彼は、彼女の想像よりも男性らしく感じたことで、必要以上に意識してしまう。最後に会った時の彼女はまだ成人前であり、怜銘の前世の世界で例えれば、中学生になったばかりの頃だった。恋することに憧れる頃、と言えようか。


普段よりも派手に着飾る茗明の姿を、驚いたようにジッと見つめる元幻に、唐突に恥ずかしさが込み上げる。無理矢理大人っぽく振る舞い、見苦しいと思われたかもしれない…。そう解釈すれば、顔を合わすのも辛くて。


居た堪れない気分で、茗明は自ら視線を外す。自らの言動で、元幻がどう思うかなど考えず。本気で嫌われたと思い込み、彼が彼女との (えにし)()()()()()()()()()()に出るとは、夢にも思わずに…。彼女はついその場の勢いで、ふいっと横を向く。疾うの昔に成人した彼には、子供が背伸びしたようだと呆れられたかも、と…。


鍛錬場で一心に元幻だけを見つめる彼女は、一度も彼と目が合わないことに、不安を感じた。その後も同様の事態が続き、彼が態と振り返らないのでは…と、茗明も感付いた。そのことに、ショックを受ける自分に気付いた彼女は……


…元幻さまはわたくしのことなど、何とも思っておられないのでは…。まるで無視をされるかのように、此方を振り返られないのですね…。それほどに、わたくしの存在を疎ましく思われ、わたくしを嫌っておられますのね?


茗明もまた、元玄から嫌われたのだと思い込み、不安に苛まれていた。以前、登竜との関係を改善しようとした元幻に、全く心を開こうとしなかった彼女は、彼が自分を見捨てたのかもしれないと、後悔した。今更になって、兄の事情を相談したいと願っても、もう遅すぎたのかもしれない。


集団見合い中でも兄の悲しい過去を知らず、兄を避け続けた茗明。怜銘暗殺事件が起こり、緑家当主として王宮に駆け付けた父親から、漸く兄の複雑な過去を聞かされ、後宮入りで心底仲良くなった怜銘をも失い、彼女は二重のショックを受けることとなる。その上、元幻のことも気に掛かり…。


その後も変わらず、元幻とは話すら出来ない。彼とも視線が合わず、兄ともどう向き合うか決められない。怜銘が生きていたことで、茗明は久しぶりに大声で泣くことが出来た。そして漸く、元玄と向き合う決心を。


…わたくしのことを、どのように思われておられても、わたくしはこれ以上後悔したくはございません。怜銘様の時のように、二度とお会い出来ない状況になるぐらいでしたら、堂々と向き合いたいですわっ!…()()()()()()()()()()()()()、致したくないのです!


未だ彼にどう思われたいとか、彼との関係をどうしたいとか、兄のように思う想いからなのか、彼に好意を寄せているのか、深く考えてはいない。兄のこと以上に、自分の想いがこれほどにもどかしいものだったとは……


こうして決意した後の茗明の行動は、非常に早かった。決意したその足で、そのまま鍛錬場へと向かう。元幻の存在をしっかり目視し、毅然とした態度で向かっていく。鍛錬場の観客席の方へ…ではなく、鍛錬場の稽古している武官達の領域へと、踏み込んで来た若い貴族令嬢の姿に、武官達が気付くか否や驚愕するけれど。


あのご令嬢は誰なんだ…と、ザワザワと武官達が小声で囁く中を、姿勢を正した彼女は前だけを見つめ、武官達の間を堂々と歩く。誰がどう見ても、彼女が其れなりの貴族令嬢であることは、丸分かりであった。侍女も連れず1人で現れた令嬢に、鍛錬場で鍛錬をしていた武官達は、動揺しつつも唯見つめるだけだ。一体、何をしに現れたのかと疑問に思いつつ、成り行きを見守る。


目的地に着いたとばかりに、茗明の歩みはピタリと止まる。無心で鍛錬していた男性は、今やっと周りの異変に気付いたというように、鍛錬の手を止め背中に注がれた強烈な視線に、ピクリと肩を揺らす。


ギギギ…と音が鳴りそうなほどぎこちない動きで、男性は恐る恐るという風に振り返れば、自分の直ぐ間近で仁王立ちし、彼の背後に立った茗明の姿を見て、流石の彼も心臓が飛び出しそうなほどにギョッとする。目を大きく見開き、唯々動揺した様子の彼を、彼女は平然と見つめ返す。外見も武力も共に強硬な武官である彼を、冷たく見返す令嬢の姿に、周りの男性達の方が引き気味であった。


2人は数秒間無言のままで、この場の空気は凍り付いたかの如く重い。身体を鍛えている彼らも、こういう()()()()()()()()()()()には、耐えられない様子だ。一刻も早く2人で立ち去り、仲直りしろよ…と、誰もが心中で願う。無関係の俺達を巻き込むな、と…。


 「…元玄さま。折り入ってお話したいことが、ございます。貴重な貴方様のお時間をいただけませんか?」

 「………ああ、承知した………」


目の据わった茗明の表情は暗く、笑顔であるにも拘らず目は笑っておらず、明らかに不自然な笑顔だ。外野から見れば、浮気をした夫と爆発寸前の妻にも、見えなくもないような……


彼女の話口調は、重くて硬い。誰がどう見ても、怒り寸前の雰囲気にしか見えない所為で、何も事情を知らぬ武官達は、元幻殿が一体何をやらかしたのかと、只管彼らに関わりたくないと沈黙した状態で、見守った。


そして、兎に狼がドナドナされるかの如く、令嬢の後に引き続くように、鍛錬場を後にする大男の悄気(しょげ)た姿に、思わず吹き出しかけた武官達である。

 元幻の章、その2となります。今回も、前半は元幻側からの話で、後半は茗明側からの話としました。


意外と顔に似合わず、気弱っぽい元幻。反対に、自分からはっきりさせようと動いた茗明。何方に軍配が上がるのかは、次回へ……



※本編は終了しています。本編終了後の番外編では、人物により話数が異なる予定でしたが、今のところは3話前後となりそう…。次回の更新は未定とします。次回までは、もう少々お待ちくださいませ…。

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