4.挨拶事件
「アベリアおはよう」
「おはようリリー!」
入園式で偶然隣になったリリーと毎日登園時に会うようになったアベリア。
初めての友達である。
「アクアさんおはようございます」
「ピュリルさん、おはようございます」
リリーとは入園式だけでなく、教室での席も隣同士のためほぼ全部の時間を共にしている。
家族共々仲良くなれていて今のところいい関係だ。
「いってきます!」
「いってらっしゃい」
「おはようキッド!」
「おーっす」
「おはようマリア!」
「おはよアベリア」
「おはよー!」
アベリアはクラスでも人気のある子どもになっていた。
誰にでも優しく元気で曲がった事を許さない。
そしてピアノとバレエを習っていることにより自信を持っている。
でも決してそれをひけらかさないように気をつけている。
それをすれば自分が嫌いだった人たちと同じ人種になるからだ。
しかし、人気があると行っても全員から好かれているわけではない」
「おはようソニア!」
「…は」
「お、は、よ!そ、に、あ!」
「うざ」
「ソニアあいさつしないといけないんだよー!」
ソニアはいつも1人でいる少女だった。
アベリアは放って置けず声をかけていた。
しかし、それが逆効果を生んでいることに気づいていなかった。
「うるさい!!」
ソニアは思わずアベリアに手を出してしまった。
驚いたアベリアは避けきれず尻餅をついた。
「いったぁ…」
「アベリアだいじょうぶ!?」
「ソニアあやまれ!」
「アベリアがかわいそう!」
クラス中がソニアへの非難を始めた。
運悪くそこに教師が来てしまった。
「どうしたの?アベリア!ソニア!何があったの」
「せんせー、ソニアがアベリアをたたいた!」
「え!?ほんとうなの?」
「…」
「アベリア」
「…あの…えっと…」
どうすれば円滑に済むのか、それだけを探していた。
子どもの感情は不安定ゆえにコロコロ変わる。
どうすればいいんだ、この状況。
素直に言えばソニアが悪くなる、いや、ソニアが悪いんだけど!じゃなくて、どうしたら円滑に済むか。
「せんせい、アベリアがあいさつしたんだけどソニアがおへんじしなくて、もっかいいったらソニアがアベリアをどんって」
リリーは重たい空気を破ろうとぽつりと話した。
「そうなの?」
アベリアはこくりと頷いた。
「そう、アベリア、挨拶したかっただけなのね。ソニア、挨拶は大切よ、それに手は出しちゃダメ」
「はぁい」
ソニアとの溝が凄い勢いで深くなったのが目に見えてわかった。
「万人受けなどあり得ない」
その言葉を痛感した。