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弔いキャンプ

作者: 騎士理 通 (きしり とおる)

同級生が死んだ。自殺だった。自宅の鴨井にロープをかけて首を吊った。同級生が通夜で集まって、今度久しぶりにあいつを偲んでみんなでキャンプでも行こうぜ。ってことになった。



妙な流れに思えるかもしれないが、言ってる方は至って真面目に提案している。俺たちはボウイスカウト仲間だった。小学生低学年からず〜と中学卒業するまで、ともにサバイバルを生き抜いてきた仲間だ。海、山、湖。ただただ、自然という自然の洗礼を受けるためだけに、それらに出向く。



楽しいなんて思ったことは一度もない!!



山に登れば、大量の荷物を持たされ、硫黄風呂。もしくは、冬山登山。も〜説明はいるまいて。冬山登山=地獄の苦行。



湖に行けば、サイクリング、サイクリングやっほー♪



そんな甘いものではなーい!!湖と言えば琵琶湖、日本一ですよ日本一。日本一ドデカイ池を徒歩で一周。誰だこんな自虐的な事を考える奴は。



海と言えば、キャンプ場でキャンプファイヤー。じぇんかでも踊って、年頃のおねーちゃんと手を握ってうれし恥ずかし。かーーーーつ!そんなんない!!海と言えば無人島で置き去りにされ、食糧調達に朝から晩までいそしむ毎日。飲み水確保!!まさしく、生きるか死ぬかのサバイバル。



なんで、好き好んで、あんなことやっていたのでしょうね〜。



それでも、仲間意識と言うのは、戦友会の皆様のように熱く強固なものとなる。(こっちは遊びなのでごめんなさい)



まぁとにかく、友情と言う絆が否が応でもできる。



そんな友人の一人が死んだのだ。



弔いのためにキャンプ。ばかげた話に聞こえるかもしれないが、至って真面目な話だった。



大人ばかりだったが、昔ながらのサバイバルキャンプを敢行した。湾の内側に浮かぶ無人島に漁船で送ってもらい、二泊三日の楽しいキャンプ。



トイレはもちろん、地面に穴を掘って、用を足したら土を上からかけていく、オーソドックススタイル。



小さな山の中腹に平地を作ってキャンプを張る。炊事場は、海辺に決定した。皆馴れた手つきで言葉少なげにささっと作業を遂行していく。見たことはないが、おじいちゃんからよく話を聞かされた兵隊さんが野営を作るときに似ている。



日が暮れ始め、素潜り部隊が海から上がってきた。腰網の中には、サザエやアワビ、石鯛までもがごっそり入っていた。(ちゃんと、許可はとってます。大人だから)



零れ落ちそうな満点の星空の元、豪勢な肴を囲みビールを飲む。



海風がほろ酔いでほってった体に心地いい。



水は貴重なのでビールを飲め、ビールを飲めと皆でひたすら飲み倒した。

子供の頃、どこそこ行ったよな。スキーの時、足折ったよな。ろうそく百本立てて怪談話やった時ちびったよな。お菓子の取り合いで、殴り合いしたよな。等々昔話に花が咲く。



ふと、皆の声がとまり、緩やかな波の音だけが辺りを包んだ。



「あいつ、どうして死んじゃったんだろうな…」



誰かが言った。



みんな、しんみりとして、手に持ったビールをちびりと啜った。



スキーの時、足の骨を折ったあいつ。

怪談話の時おしっこをちびったあいつ。

お菓子の取り合いで、殴り合いの喧嘩をしたあいつ。



僕たちの頭上で流れ星が一筋、空を舞った。



僕たちのバカ騒ぎにあいつが駆け付けたのだと、その場にいた誰もが信じて疑わなかった。



(´_`。)グスン.

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