少しばかりの要求
そうしてこうして、いつの間にか私は、ドラゴンというドラゴンを狩りつくしてしまっていたのだが。
どうやら、度が過ぎたようで、今までより一際大きいドラゴンが私の目の前に来てしまった。
しかし、そのドラゴンは私にその私の真上ぐらいに位置する自分の頭を垂れて、申し訳ない、と語りかけてきたのです。
これは驚きでした。おそらく手下であろうドラゴンたちを私が一方的に、しかも相手からしたらそこまでする必要はないだろうという理由で虐殺してきたわけですから。
嘘でした。ドラゴンを待っては殺し、現れては殺しという、極めて結果オーライというものでした。
その大きいドラゴンは、大きさだけなら私に勝るといわんばかりの巨体をもってこちらを見ていました。
首を垂れる、つまるところドラゴンとしてのプライド、仲間の雪辱、トップとしての意地を捨てて、こうして頭を垂れているわけです。
知性があるドラゴンなんてかなりレアだといっても過言ではないですが、まさかここまでとは。
おもわず、これには私も戦闘の手を止めてしまいました。そして、これはもしや話し合いになるのではという勘が働きました。
見たところ、お仲間がいない辺りで、私としてもやり過ぎてしまったところがあるが、できればドラゴンの生態系を根絶させずに、うまく約束を取り付けていきたいところである。
「どうも、初めまして。私は、しがない魔導士のイレーズと申します。あなたのような美しく、強大な身体を持つドラゴンは初対面です。よろしくお願いします。」
「すまない、人の言葉はいく久しぶりで、正しく話せるかはわからんが、私はドラゴンの王である。つきましては、あなたのような御人にこちらからけしかけてしまい、申し訳ありません。」
「それならば、私も断りを入れてからということで。人語での解決もあったかもしれません。ここでお祈り申し上げます。」
形として目を閉じて、殺し過ぎたドラゴンにやり過ぎたというねんを唱えましたが、よく考えるとドラゴンのほうからしたら絶好の攻撃のいチャンスを与えてしまったというところですが、何もしてこないようです。
このドラゴンは物分かりがいい。報復をせず、ただ自分が殺されないように立ちまわろうとしているのがわかる。嫌いな人間にこれを見習ってほしい。
さてと、相手はドラゴンの長?ですか、高い地位にいるのは確かですね。
ここからは交渉に入るが、さすがに殺したり傷つけたりはちょっと…。
うん、やはり、この手のやりとりは会話で和解を図れるものというのが相場ですね。
「慇懃無礼ですが、あまたのドラゴンを絶やしてしまったのは私です。しかし、相手からの攻撃を受けたことに対する反撃だと理解してください。この世は強き者がすべてです。今まで、村を荒らしたり、人を襲ったりということに驕りを持ったそちらが、私のような異端になめてかかってきたのですから。
しかし、あなたはラッキーだといえます。私がドラゴンのいる情報を人間の街で流したら、討伐隊が結成されます。そして、命乞いも無意味です。
ですが、私は仲間もいない哀れな魔導士ですから、少し対価を要求しますので、それを飲んでくれれば、町に戻っても吹聴することはないですし、あなたの身の安全も守ります。どうでしょうか。」
さて、これはいい条件といえば条件ですが、どうするのか、ドラゴンの長よ。