俺じゃない
どうもお久しぶりです
「俺じゃない」
彼は叫んだ。
「俺じゃないんだ」
彼の前には幾人もの村人。
小さき部屋に立ちし案山子が無数と並び荒く息づく
窓から差し込む光が大気に舞う塵や埃に交え星となる
「信じてくれ、俺じゃないんだ」
懇願する彼へ向けられる視線はどれも怒りと悲しみに満ちていいる。
焦りと怒りを露わに彼は叫び続ける。
「頼むから信じてくれ」
叫ぶ声は懺悔のように壁へ、地へ、人へ、と吸い込まれる。
しかしそんな彼の願いを聞き入れる者は誰もいない。許す者など初めからいない。
どこかで水の音がする。
雫となった水が落ちる音、清らかな命の音。
雫は大地に吸い寄せられては地に触れ、小さくはじける赤いしぶきが主へと帰る。
どれだけ清らかな音を奏でても、どんなに主へと帰ろうとも、もう戻りはしない。
もう戻れない、鮮やかな時の流れ
そこにあるのは人の形をした入れ物。生を失い魂の抜けた肉の塊。
光を宿さぬ虚ろな二対の瞳。意思あるかのように重なった冷たい手
虚ろな瞳がみるは朱と染まり紅が滴る銀の刃。
彼の手から新たな雫が落ちる。
いつからか聞こえるすすり泣きの声。
彼にはまるで道化師が歌っているかに聞こえる。
嘆きに満ちた詩に、悲しみに溢れた旋律、いつしか重なる歌声。
彼には響かない、心には届かない。
「俺じゃ、、、ないんだ」
彼は静かにそう告げた。
雫がゆっくりと地に落ちる。
長いこと執筆から離れていましたのでリハビリがてら短編集でも書こうかと