第3章 激動は来る
現在編集中ですのでつじつまの合わない箇所があります。
帰社してからおよそ一時間弱が経過し、休憩時間が来た。
勇治はオフィスを後にし、恐る恐る会議室へと出向いた。
控え目にノックをし、「どうぞ」の返事が入ることを確認してから「失礼します」との挨拶で入室する。
だだっ広い部屋の中央に長方形のガラス張りのテーブルが位置しており、その向こう側に座っている彼がアナジェネシス社代表取締役こと倉持現社長だった。
CMに登場した通りの澄んだ瞳はこちらの心情を見透かしてしまいそうだ。
人懐こそうな目で「座ってくれたまえ」と促す。
半ば緊張した面持ちで謙虚にテーブルに近づいてきて座る勇治に「アポ取りに四苦八苦しているようだね」と早速語りかける。
「はい………思うような結果が出せなくて」
「はは、別にいいんだよ。他の社員ならともかく、君に関しては特に実績を打ち出すことを求めているわけではないんだ」
一気に気持ちがダウンしていくことが表情に表れたのか、「いやいや、悪い意味でのことじゃない」と教え諭す社長。
「東条君が頑張っていることは十分承知しているさ。私が言いたいのは、ある意味において君は特別な存在だということだ」
いきなり変わったことを伝えられて困惑する勇治。
結果を出せていなくて、それでも自分が特別な存在であるということは、一体どういうことなのだろう?
一人迷走していると、社長は勇治にとって思わぬ言葉を口にした。
「ところで君は知っているかな?昔の時代に生きた人物が言い残した、ある格言のことを」
格言?一体全体いきなりこの人はなぜそんな話題を振り出すのだろう?教訓としてもっと業務に励めという激励をしようとでも?
「唐突でびっくりすると思うが、君の家にはある家訓があるはずだよね」
家訓?そう言われれば遥か昔の時代に自身の祖先が言い残した、我が東条家における独自の名言あるいは戒めとして言い伝えられている伝承は、確かにある。
「は、はい………存じておりますが」
「どんな言葉だったかな?」
不意に促されてさらに困惑する。言われるがままに記憶を頼りに目を瞑る勇治。
「え~と、どうだったかなあ~?確か、『さざ波も津波に変わらずは』………とかだったかな?その続きは………」
「『人は知れず』、だったよね」
先を答えた社長の目をまじまじと見つめる。
「どうしてそれを?」
悠々と語り始める社長。
「前代表取締役がいつも口にしていた言葉でね。………そう、もう一つの彼の口癖と一緒にね。『激動は来る。必ず』、と」
まさか………?
頭の中で閃きそうになるその先の答えを出せずにいる勇治に社長が答えた。
「君はある意味で特別な存在という意味がもう分かったかな?」
「つまりは………」
「そう、その通り。私の前に就任していた元代表取締役社長、その名前は東条和毅。つまり君の父親だよ」