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第四話 甘くて苦い恋日和****


チョコレートの池で

タルトの船に乗り

睦まじく微笑み合う恋人たち


一方で


ぽろぽろと雫をこぼし

繋いだ手はほどかれ

枯れていく恋心


今日は青色の金平糖が、


悲しげに明滅しながら


天へと昇っていった


「先生」


「どうした?」


「金平糖って、どうしていろんな色があるんですか?」


先生は、軽く目を見開いた後、微笑んだ


「それはね、恋にも色々あるからだよ」


「色々?」


「そう。金平糖は、恋の思い出の結晶の様なものだからね。どんな想いだったかによって色が変わるんだ。」


赤、青、黄色の3つの色を基調として、

混ざったり、薄くなったり濃くなったりした色の金平糖があるらしい。


今日もまた、ひとつ新しいことを教えて貰えた。

それだけでなんだか心がポカポカしてくる。

それからしばらく談笑したあと、先生と別れ、

箒で部屋を掃除する


こうして先生の身の回りのお世話をするのも、私の仕事


「あっ!」


いけない、机に足をひっかけてしまった


弾みで転がり落ちたグミ


ぽよん、ぽよん


はねながら、転がっていってしまう


急いで追いかけると、グミはドアにぶつかって動きを止めた


拾おうと屈んだところで、


ガタッ


部屋の中から、物音がした

驚いて顔を上げる


ドアは、少しだけ開いていた


ここは…

この部屋は、先生のプライベートな部屋で、私も入ったことがない


いけないと思いつつ、少し開いた隙間に誘われるように


そっと、中を覗いてみた


そこには、予想通り先生がいた


先生は、どこか憂いを帯びた瞳で、

瓶に入った金平糖を見つめている。


それは、見たことのない


真っ白な、金平糖だった


「…!」


私は、気づいてしまった

その金平糖が、誰の恋の結晶なのか


慈しむような

懐かしむような


そんな瞳で、先生は金平糖を見つめていた


わたしはその目に見覚えがあった


昔の恋の話をしていた時の、オーナーと同じ瞳

墓参りに訪れる人たちと、同じ瞳


あれは、きっと…絶対…


先生の、恋心だ


その瞬間、私は初めて感じる気持ちに苛まれていた


真っ黒に焦げてしまったクッキーの

苦みがくちいっぱいに広がるような


たとえるなら、そんな気持ち


考えてみれば、別におかしな話ではない。



先生も、昔、誰かに恋をしていたのかな…?



たったこれだけの事実に、私は酷く動揺していた


胸の奥がモヤモヤとして、居てもたってもいられなくて…


気づくと、私は足早にその場を去っていた


どうしてこんなに悲しいのか

どうして涙が止まらないのか


分からないままベッドに深く沈む

ふかふかだったマシュマロのベッドは、すっかり濡れて萎んでしまった


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