ビデオボックス―1
「まぁ、あなたがそういうのであれば
ちょっと聞いてみようと思うけど、」
私は彼女のほうを向いて顔を上げて
話しの続きを聞くことにした。
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なにから説明していいのかわかんないし、
なんの説明をしたらいいのかもわかんない。
本来、こんなプロセスをいちいち他人に話をするものじゃないでしょ?
だって、そんなことは親密な関係にある二人だけの間のことであって、
なにかに照らし合わせて全く別の他の関係や何かと比較しようがないじゃない。
だって本人同士の問題なんだから、一番は相手に尋ねるべきでしょ?違うの?
それができないのであれば一緒にいる必要なんてないじゃない。
人生にはもっと有意義な時間の過ごし方が沢山あるのよ。
それにね、一番はやっぱりココロとカラダの問題なのよ。
だってね、今日あったばかりの人の肉体を心から愛せるのかっていう話でしょ?
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性的な感覚は様々な刺激で発動するので、もう、人それぞれだと思う。
パートナーにはなるべく近い感覚であってほしいと思うけど、
必ずそうであるとは限らないし、そこが違うと思って話し合いで解決しないなら
爽やかにお別れした方がいいでしょう。
お互いに譲れないところもあるでしょうし、お付き合いが始まる前に
いちいちそんなことを具体的に確認し合うなんてないんだから。
彼女はそのことを怒っているのかもしれない。
ただ、AVなんかの出だしをみて、
これは絶対ありえないな、、っていう感想しかないんだけど
どうなのだろう。
華やかなショウビジネスであって、
みんな実際にこういうものだなんて
おもってないよね。
あんな導入ないし、あんなステレオタイプに男性を誘う女は今でもいるのだろうか。
もしあれを参考にしていたり、ああいうものがセックスだと思っているのだったら
そもそもセックスなんてそんな幸せな事じゃないだろ。
その話を聞きながら、私の頭の中にはずいぶん昔の記憶がフィードバックされて、
この記憶だって、まぁ、別にどうでもいい話だなとか考えながら
思い出と一緒に彼女の話をうんうんと聞いていた。
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確か、中学3年の春だったか、、。忘れた。
担任の男性教師は28歳で、今思えば若いけど中3の私たちからしたら
ずっと大人の男性だった。
何の話の流れだったか、お昼休みに教室の隅に集まっていた私たちの輪に
担任の男性教師が混ざってきて、それこそ爽やかにお勧めしてくれたのが
AV鑑賞だった。
「○○(←私の名前)、今のうちからどういうものかちゃんと見ておいた方がいいぞ。」
「え?映画じゃだめですか?」
人気の俳優さんもたくさんいたし、彼らのテレビの露出も多かったし、
様々な趣向に合わせての商品紹介とか、そんなものを見てしまうと
年頃の男子生徒はなんとなくどういうものか興味が出るので
近くのレンタルショップから興味本位で何本かレンタルして鑑賞会を開くっていう
そういう会は男子生徒主催では行われていたのは知ってるんだけど、
なに、うちら(女子生徒)にも勧めてくんの?先生。
すかさず電気屋の息子のTがじゃあ、俺が明日持ってきてやるからって名乗り出てくれて
翌日20本くらいの違法にダビングしたビデオを学校に持ってきてくれて、
性教育だって言われてどっさり渡された。
そのあと他のクラスの男子生徒とすれ違って、Tと仲のいいOから、
あいつからだろ、それ外人ばっかだろ?ってなんかよくわかんないけど
Tの趣味であれば外国人の俳優さんがメインだという内容の説明と、
あいつんちは電気屋だから、ビデオデッキを改良して違法のダビングを
何本もできるんだという説明をダブルで受けた。
その日は土曜日で、学校に一番近くに自宅がある私の家でクラス女子の鑑賞会が
行われることになったんだけど集まったのは確かクラスの女子7,8名だった。
とりあえずビデオデッキに突っ込んで一本流し始めるけど、
思っていたものとは全然違って、本当につまらなかった。
一斉にみんなテレビから離れて私の部屋で漫画読んだり庭の犬と遊んだり
向かいの土手で草遊びをし始めた。
でも1名はずっとその映像を見ていたと思うんだけど、
家の向かいの土手をクラスの男子がやっぱり7,8名チャリンコで走ってきて、
私の家に女子生徒が沢山集まっているようだったいうので
自転車から降りておーーいと声をかけてきた。
庭でうちの犬と遊んでいた子が、
今、Tから借りたビデオ鑑賞をしているけどつまらないので誰も見ていない、
ただ、∇▽ちゃんだけが見てるっていうと
やめて!と言って
鑑賞用に使っていた2階のテレビのある部屋の窓から
彼女が怒って出てきた。
ビデオの俳優さんは20代とかそれくらいでしょ、
私たちにはずいぶん年上に見えて、
そんな人たちの絡んでいる姿をいいものに見えなかったし、
男性の裸がなんかちょっと汚らしい感じがした。
別に、その映像を見たからと言って
素敵だとも、何か性的に興奮するような高揚感があるとも
そんなことは一切なくて
離脱したみんなが思っていたことは
見なくてよかったなっていう一言だった。
そんなものより、
昼休みの体育館でバレーボールをしている好きな男子の飛び跳ねる姿や、
廊下ですれ違って「おお!」とか言って
じゃれ合ってる方がドキドキしたし幸せなんだからしょうがないと思った。
週明けにTには借りたビデオを全部返却したんだけど、
全部見てからでいいぞと言われた。
でも多分見ないから大丈夫と言って
丁寧にお礼を伝えて全部返した。
あれだったら、深夜番組の特集でも見たほうが
よっぽど興味があるよねっていう話を女子同士はしていたんだけど、、、。
そのあと大人になって
何度か見る機会はあったんだけど、
しらけるばっかりで、
よっぽど邦画の演出の方が
素敵なんだと思った。
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そういうことを思い出しながら彼女の話をうんうんと聞いていた。