お月見団子
「このお団子はどうやってできているのかなぁ」
うさぎさんが横に置いてあるお月見団子を見て言いました。すると、近くのススキに隠れていたコオロギさんが、
「月をよく見てごらん。ほら、うさぎたちが餅つきをしているだろう」
うさぎさんは月をジッと見ました。
「本当だ、あのうさぎさんがこのお団子を作っているのかな、でも、なんで月なんかで餅をついているのだろう。ねぇ、コオロギさんは知ってる?」
「いやぁ、知らないよ。君こそなんでうさぎなのに月にいないんだい?君以外のうさぎは最近見たことが無いよ、だってみーんな月の住人に連れ去られたじゃないか」
そういうと、うさぎは眉間にしわを寄せてコオロギさんを睨みつけました。
「余計なことを言うんじゃないよ、あーあ、せっかく忘れかけていた頃だったのに。コオロギさんのせいで思い出しちゃったじゃないか」
悲しそうな声でうさぎさんは言いました。
「ごめんよ、うさぎさん。でも本当に不思議なんだ。君だって家族や友達がいる月に行きたいんじゃないのかい?ここにはなーんにも無いじゃないか。」
「私は別にここに残りたかっただけよ。それに、月で餅をついているだけの生活なんてまっぴらごめんだわ。15夜の日に人間がお団子を食べるだけの為に働くなんておもしろくないじゃない。だから連れ去られそうになっても逃げてきたのよ、コオロギさんもそんな生活、嫌でしょう?」
コオロギさんはうーん、という顔をして悩んでいました。
「僕の場合は鳴くことが仕事だからね。それに、僕たちが鳴かないと人間も秋を感じることができないじゃないか。そんなに長くも生きてはいられないからね。」
「そっか、もうすぐしたら君も居なくなってしまうんだね。じゃあ一緒に月にでもこっそり遊びに行こうか。君が居なくなる前に他のうさぎたちが何をしているか見ておきたいよ。」
「そうだね、僕も気になっていたところだよ。一緒に遊びに行こうか、僕の使いを呼んでおくよ。」
「使い!?使いってまさか月の!?君、まさか月の住人だったのかい?」
うさぎさんは驚いています。
「バレたら仕方がないね。そう、僕は月の住人さ、君がいつ月に行くかずっと監視していたんだ。その為に近くにいたのさ。」
「あぁ、そういうことだったんだね。コオロギさん、君を信用するのは間違いだったよ。じゃあね、」
と言ってうさぎさんはピョンピョンと飛んでいきました。
コオロギさんは落ち着いた声で
「君がどこにいようとすぐに僕の仲間が見つけてくれるよ、だってみーんな月にいるからね」