本日の予定
ここは忘れられた平原、あらゆる者達が不要な「もの」を捨てていく場所
夜が明けると眩い光が寂れた金属部品に反射して銀世界を作る、そんなゴミ捨て場の山の上、ぽつんと錆びれた机に肘を付き、カバーの煤けたソファに腰を下ろしながら針を布に通すシルクハットの男が忙しなく手を動かしている
仮に彼を〖帽子屋〗と呼ぼう
帽子屋が何やら作業をしているとがちゃり、がちゃり、彼の山の麓から金属同士がぶつかる音が響いてきた
???「ゴメンクダサイ」
帽子屋「どうぞ、上がってください」
がちゃり、がちゃり、足音がすぐ側まできて男が音へと首をまわすと驚く事に錆が酷く壊れたバイクがあった
バイク「スミマセン、アサハヤクカラ」
帽子屋「いいんです、丁度私も休憩をとろうと思いましてね」
帽子屋は一口、割れたカップの紅茶を啜り言葉を継いだ
帽子屋「して、どんなご用件で?」
するとバイクはヘッドライトの錆びた部品を掻きながら話し始めた
バイク「スコシ、コマッテイマシテ、ワタシ、ドコカニ、ブレーキ、パーツオトシタミタイデス」
帽子屋「つまり、パーツを探す手伝いをして欲しいと?」
どうやら、このバイクは自分の部品をどこかへ落としてしまったようだ…無理もない、錆びていながらに半分以上のパーツがボロボロでいつ捻じ切れてもおかしくないものもある
バイク「ハイ、マサニ、ソノトオリデス」
帽子屋「しかしこうも言ってはなんですがね、貴方は錆びているのでブレーキは必要無いのでは?今も普通にとまれていますよね?」
バイク「ソレハ、ワタシガステラレルマエ、オモイデノモノ、ダカラウシナイタクナイ」
帽子屋「なるほど、わかりました。私が協力致しましょう」
バイク「アリガトウ、モシカスルト、ダレカ、モッテイッタカモ」
帽子屋「その可能性もありますね、では休憩がてら探しに行きましょうか」
がちゃり、がちゃり、1人と1台分の足音がガラクタの山を下って行く音が夜明けのゴミ捨て場に響いた
こうして、帽子屋の本日の予定が決まった