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異世界から息子を迎えに来たとほざく青年(害虫)退治します!

作者: おむまめ

ふと思い付いたので軽くまとめて作ってみました。

気軽に読んでもらえると嬉しいです。


今日は仕事は休み。


息子にねだられたおやつを作ろうと腰を上げればインターホンが鳴った。


「はーい。少しお待ち下さいね」


エプロンを外し玄関でサンダルを履いてドアノブを捻った。


でもね次からはドアを開ける前に鍵穴を覗くよ…。


皆もドアを開ける前に一度深呼吸してから鍵穴を覗く事をオススメします。





さて私は息子を一人で産んだ事を後悔はしていない。


例え家族から絶縁を告げられ、近所の住人から白い目で見られようが、私と息子は貧しく挫けそうな時もあったけど、中古だけど庭付きの一軒家を購入し幸せを掴みかけ始めた。


なのに何故…。


今になってこんなに酷い事が起きようとしているの?


「ッ…理解はしたくありませんが、貴方様のお話は分かりました。

ですが!だからと言って貴方のお話に首を縦に動かす事は絶対にありえませんので、どうぞお帰り下さい!!」


この場にあの子が居なくて良かった心底思う。


けれど私達に不幸を持ち込もうとする、男はやれやれとため息を吐き出し、私の想いを受け入れたりはしない。


「ふぅ…私もね貴女のお気持ちは痛いほど分っておりますよ。

ですがね…先ほども説明しましたよね?

貴女が腹を痛め産まれた御子は我が皇国の第一継承者なのですよ。

もう一度説明しますけど、本来の母君であられた聖女クラウディア様は、激化する戦争の最中命に関わる大傷を負ってしまいました。

ですが瀕死の状態で有りながら聖女クラウディア様は、腹に宿った皇帝陛下の御子をお守りするため、自国ではない平和な世界で健やかに育って欲しいと願い、最後の力を振り絞り転移魔法をお使いになられた。

聖女クラウディア様の切なる祈りが叶い、この日本セカイにクラウディア様の御子が貴女の腹に転移させたのです。」


胡散臭そうな男だが嘘は言って居らず、全て本当の事を言ってるんだろう。


それに転移魔法という台詞に、あの日に私の身体を襲った出来事に納得もできた。


私は26歳の時あの子を産んだ。


しかもいい歳過ぎてオタク気質で干物女…。


挙げ句にBLが好きな腐りきった女に当然彼氏が居るわけがなく、仕事をしながらも体調を崩し、段々と大きくなるお腹に流石に違和感を感じ病院へ駆け込んだ。


不安に苛まれる中診察が終り医師は私に診断を下した。


にこやかに笑いおめでとうございますと告げる医師。


診断は妊娠7ヶ月であり、堕胎するという選択は出来ない状態だった。


父親不明の子を孕み最初は寝ている中強姦されたのかを疑った。


しかしそれだけで妊娠しないと私は知っていた。


何故知っていたのか?


私は性交渉に緩い時代に産まれた。


それに25年間も生きてれば彼氏の一人や二人位は出来る。


最近は学生でも避妊しない人も多く、私もコンドームが苦手だったし避妊しない方が多かった。


なのに妊娠しなければ当然自分の身体に疑問を抱く。


23歳になった頃将来の事を考え医療機関で身体中を調べてもらった。


結果はある程度予想していた。


医師は言いにくそうに私の身体は妊娠しにくいのではなく、子供が出来ないのだと告げる。


正直悲しくはなったが、駄目なら早く考えを切り替えするしかない。


私は思い描いていた人生設計を組み直しする事で現実から目を背けた。


より一層BL本やゲームにのめり込み、薄い本でも出してみようかと考え始めた頃身体に異変を感じ、色々あった事を思いだしていた。


「さて私は何度でも言いますよ。

貴女は聖女クラウディア様の御子を守る器だったのですよ…。」


「聖女ね…。」


聖女クラウディアがどれ程偉いのか知らないが、あの子は私が腹を痛め産み愛情を注ぎ育て来た。


それに今さら返せだとか見ず知らずの男に言われても、はいどうぞと渡す親が何処に居るんだと言ってやりたい。


本音を言えば確かに聖女様には感謝しているよ。


子供が産めないはずだった私に母親をやらせてくれた。


でもねぶっちゃけ言わせてもらえば、ふざけんなと大声だして罵ってやりたい。


聖女様が子を思い平和な世界で健やかに育って欲しい気持ちは確かに分かる。



でもね体調に違和感を抱いて病院に行けば、性行為の覚えがないのに妊娠してて、七ヶ月と告げられた時の気持ちを聖女もこの男にだって絶対に分からないはずだ!


そして誰の子か分からないけど妊娠してしまった事実を隠しとく訳にいかず、素直に家族に告げれば売女と罵られ父親に絶縁を言い渡された。


お互いに毛嫌いしてた兄に汚物を見るよな視線を向けられたり、母はその場で踞り自分の教育が悪かったと泣いていた。


親を泣かせ切り捨てられた時の私の気持ちが本当に分かるのか!!


幸い社会人になってから実家を出て一人暮らしだったから、住む家には困らなかったけどもう二度と実家の敷居は跨ぐ事は出来なのだ。


それに出産するにはお金は掛かる。


一応貯金してたけど沢山お金が有るに越したことはない。


身重になり周りに迷惑をかけてギリギリまで働いた。


それだって決して楽じゃないし同僚からは嫌味だって言われ、上司には遠回しに仕事を辞めろと言われる中頭を下まくって産休を取らせてもらった。


産休中にベビー服や必要な物を揃えながら、通帳とPCと睨めっこしながら、子育ての知識を頭に叩き込みつつ、自宅で出来る内職に勤しんだ。



ちなみに胎教に悪いとは思ったが、息抜きに薄い本を読んだりゲームをして気分を紛らわせたのは許して欲しいので、それだけは聖女様に謝ってやる。


すまんかった、ごめんなさい…。



おおよそ妊婦とは思えない生活をしながら、産休を取り半月ほどすると破水した。


1日中に味わった事がない激しい痛みに耐え、声にならない悲鳴を噛み締めて、私は文字通り命懸けであの子を産んだ。


産声は聞こえたもののその場で対面する事は叶わず、痛みから解放されると真っ先に子供がどうしたのか聞いていた。


体重が2500gに満たない子供は未熟児と言われる中で、我が子は1460gしか体重がなくしばらくの間、保育器で育てる事になり、私は硝子越しであの子と初対面した。


我が子はお人形みたいな陶器のような肌に白金色髪をしていた。


一目見て父親は日本人じゃないと分かり、私は外国人に強姦されたのだとこの時思い込んだ。


子供の体重も増え医者から許可が貰え、初めて腕に抱いた時は涙を流してしまった。


父親が憎いとかそういった感情を一切感じる事はなく、私の心に幸せをもたらせる我が子をノエルと名付けた。



一人暮らしの家に家族が加わると、沢山苦労もしたけどノエルが日々成長していく姿を見ていると、辛くて嫌な事を忘れ楽しく生活出来た。


私に笑いかけママと呼んでくれだけで毎日が幸せで、ノエルが無事に成長しいつか社会人になり私の元を巣立っていくと考えると寂しくなる。


けれどまだその日は遠く、しばらくは幸せがずっと続いてくと信じていたのに…。


何故…。


何で私から子供を‥。


ノエルを奪おうとする。


神が助けてくれないなら、悪魔にでも魂を売って自分自身で守るしかない。


「私から子供を奪おうとするアンタは一体何様な訳?」


がらりと雰囲気が変えた私に男は眉を潜めた。


「うちの子供が聖女と関係有ろうがさ、この世界に存在しない皇国の第一継承者だっけ?

そんな危険地域にハイそうですかと頷いて渡す親は先ずいないしさ、アンタ…私が女だからって舐めてんじゃないよ!」


それに我が家のモットーは売られた喧嘩はきっちり買って倍にして返すのが流儀なんだよね。


「アンタが息子に話しかけたり指一本でも触れるようなら容赦しないよ」


「ふふっ、容赦しないとは大きくでましたねぇ…。でもね女の貴女に一体何が出来ると言うのでしょう。

よろしければ今後の為にもご教示頂けませんか?」


涼しげな顔をして小馬鹿にしてくる男。


ならば後悔すんなよ!


ニヤリと口角を上げて悪人顔を作り男を見据える。


そしてツラツラダラダラとBL用語や放送禁止用語を織り交ぜ、意味が分からないと怯える男の首根っこを掴むと、PCで画像を見せながら語ってやる。


今まで息子の為にと抑えていた。


萌えと妄想を吐き出す母は強です!


(テヘペロ!)





オマケ


「たっだいま~!

母さん腹減ったんだけど」


「お帰りノエル。

実は害虫駆除してたからまだおやつ用意してないのよ」


「うぇぇ~!

お願いしといたのにさ、瑛士の誘いも断って寄り道しないで帰って来たんだぜ!」


プクリと頬を膨らませているが、我が子ノエルは今日も天使のように可愛ユスです!


ご機嫌斜めのお顔も可愛いがやっぱり笑ってほしい。


「なら今日は久しぶりに外食しましょうよ。

瑛士君も誘って焼き肉なんてどうノエル?」


「焼き肉!!

母さんマジ大好き愛してる~♪」


「うふふ、ほら瑛士君に電話してきなさいよ。

母さん二度と害虫が入って来ないようにもう少し作業するからね」


「よっしゃ~!」


はしゃぎリビングを出て行くノエルの姿を眺めつつ、あの害虫が二度とこの家に近付けないように、色々と罠を仕掛ける事にした。




オマケのオマケ


ノエルとその母親が幼なじみだと信じている瑛士は、実は異世界からやって来たノエルの護衛兼監視者だ。


昼間にノエルの母親に接触したらしい新たな部下は、部屋の角で膝を抱えながら顔を青くさせ体を震わせていた。


「てめぇみたいな青二才が、あの御方に絶対関わるなと忠告したよな?」


「ッ‥ですが」


「あぁん?!

てめぇの失態で俺が築いてきたノエルとあの御方の信頼をぶち壊す所だったんだぞッ!」


「ヒィッ!」


ノエルは一応あの悲劇の聖女の子供だ。


国を揺るがした聖女の悲劇を題材にした観劇や本等、今も本国で涙なしでは語れないほど人気がある。


命を掛けて違う世界に託された皇子の帰還を心待にしてる人間は確かに多くいる。


しかしだ言ってしまえばある意味聖女の身勝手で皇子を託されたた人間は不幸でしかないだろう。


そう言い出したのは俺ではなく、ノエルの父親である皇帝陛下だった。


市井では聖女はあの悲劇もあり神聖化され評価は高い。

しかし逆に貴族の世界では聖女への評価は頗る悪いのだ。


勿論皇帝陛下も聖女には良い印象を抱いて無かったが、当時皇太子だった陛下は国そして民を想い聖女を正妃として迎えた。


だがそれこそが皇国の安寧を揺るがす事になるとは陛下も誰も想像していなかっただろう。


一時期魔女と噂が流れた聖女は、悲劇の事件があったからこそ、今も死んでなお聖女として祭り上げられいるが‥。


聖女が死に皇帝陛下の御子が誕生しなくて良かったと考えている貴族は多い。


もし聖女が生きながらえ陛下の御子を出産していたなら、ノエルを廻り再び戦火に巻き込まれ皇国は滅びていたと考えられる。


しかし現実では聖女は天に召され、陛下の御子ノエルはあの少し変わった母親の元で、毎日幸せそうに笑い暮らしている。



「もし全てを知った時、皇子はどんな答えを選ぶんだろうな?」



おまけのオマケ(終)






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