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俺決めました。


息は上がっている。

何とかバスには間に合い、今まさに学校を出発するところだ。


「間に合ったー」

「何してたん?」


核原に問われ一瞬だけ悩み、


「ちょっと話をしに」

「聖奈に甘えて来たんだよな」

「平岡、うるせえ」

「聖奈ちゃんにに会ったことは否定しないのかよ」

「ひゅー」


核原と龍二にからかわれる。


「おちょくるなよ。真剣な話だったんだぜ?」

「と言うと?」


零は軽く溜息を吐き、


「あいつクラスでぼっちらしいんだよ」

「マジ?」

「マジでか」


核原と龍二の反応がほぼ同じだ。

仲良すぎだろ。


「マジだよ。だから、少し仲良くする努力をするように話して来たんだよ」

「聖奈は仕方ねえんじゃねえの」

「わからなくもないけど、仕方ないで済ます訳にも行かねえよ」

「お前のそういうとこ凄いと思うわ」

「そうか?」

「あぁ、俺らには出来なかった事をサラッとやるところは、なおに似てるよな」

「なおは俺の目標だからな」


零がそう言うと、


「なおの目標はお前なんだけどな」


平岡はボソッと呟いた。


そんな話をしていると、核原が、


「前から気になってたんだけどさー」

「ん?」

「聖奈ちゃんって昔なんかあったの?」

「あー、なんていうか」

「虐められてたんだよ」

「平岡!!」

「隠しても仕方ねえだろ。このまま付き合い続けてればいずれは知ることだろ?」

「それは…」

「まあそういうことだよ」

「虐め…か…許せねえな」


核原は拳を強く握り、熱の籠った声でそう言う。


「………」


零は核原も何かあったのかなと思い、無言で核原に一瞬視線を向けた。


「許せねえよな」


平岡は自虐気味に笑いそう言う。

零も特に余計なことを言うこともなくこの話が終わった。

同時にバスも目的地である学校が持っている大きな借家?へとたどり着く。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「思いの外でかいな」


零が入り口で呟く。


「だな〜。なんか俺楽しくなってきたかもしれねえ」

「たくはこういうイベント好きそうだよな」

「俺もテンション上がってきたわ!」

「龍二がテンション低い時って今んところ見たことねえんだけどな」

「それな」

「はーい! みなさん聞いてください!」


後ろから聞こえた声で振り返ると、大きく右手を挙げた担任の姿があった。


「ここ、桜花荘おうかそうで私たちのクラスは勉強合宿をします! 勉強漬けで大変でしょうけど、頑張りましょう! では、女子は2階男子は1階の各部屋に荷物を置いて1階の食堂に集まってください!」


担任の話が終わると核原が、


「聞いたか」

「何を?」

「ばっか! 決まってんだろ女子の部屋のことだよ」

「2階だってな」

「行くしかねえだろ」

「中学生かよ」

「いや男だよ」

「はぁ…」

「いっちょやったりますかぁ!」


核原が馬鹿なことを言った直後、


「あっ、不純異性交友は禁止ですよ。お互いの部屋に忍び込みでもしたら即退学ですからねー!」


零は肩を落とす核原を見て、


「ドンマイ」


そう言って肩をポンポンと叩いた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


核原と平岡と別れた後、龍二と菅野と部屋へと向かった。

部屋は階段の横でなかなかの広さだった。

各部屋がこの広さってことは、ここ桜花荘はかなり大きい。


「さて荷物もとりあえず置いたし食堂に向かいますかぁ」

「だな!」

「筆記用具持って行った方が良いかな?」

「そうだな。ま、俺はいつも持ち歩いてるけどな」


零はそう言うとポケットからシャーペンを取り出す。

零は筆箱を持ち歩かない。

消しゴム、ボールペン、シャーペン等の必要なものをポケットなどに常備している。


「零のそれ転んだ時とか危なそうじゃね?」

「確かに」

「転ばなきゃ良いさ」


零はそう言うとポケットに手を入れ部屋の外へと出ると、


「あっ、都城くん!」


階段から降りてきた左目の下に2つ黒子ほくろのある黒髪の女子に声をかけられる。


名前は、


「外崎」


外崎明日葉。


「わ! 名前覚えててくれたんだね! 嬉しい〜!」


外崎は嬉しそうな顔でそう言う。


「まあな。そんで? なんか用かい?」

「特別用って訳じゃないんだけどさ! 見かけたから声かけてみたー」


そう言って笑う外崎はとても可愛かった。

可愛い…そう思った時、零の頭には聖奈が浮かび、


「なんで…」

「えっ?」

「あっ、いや、なんでもない」

「そ? 都城くんおもしろいね」

「この会話におもしろい要素あったか?」

「そう言うところ!」

「そう言うところか!」

「ふふっ! じゃあまたね! 合宿頑張ろうね〜!」


外崎はそう言うと食堂の方へ歩って行った。

外崎の姿が見えなくなった次の瞬間、


「このぉ〜!」


後ろから走って来た核原が飛びかかってくる。


「なんだよ!」

「てめぇ、明日葉ちゃんと話してたろ!」

「あ? 外崎か。確かに話してたがそれがなんだってんだよ」

「お前って奴は聖奈ちゃんがいるにもかかわらずー!」


核原の後ろから歩ってきた平岡が、


「外崎明日葉。学園でも五本の指に入る美人で有名なんだよ」

「そうなのか」

「お前はその辺の情報にうといからなぁ」

「ただ話しただけだろ!」


零はそう言って核原を引き剥がす。


「聖奈ちゃんに言ってやるからな」

「それだけはやめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」


零は必死に核原を捕まえ、何とか言わない事を約束させた後、みんなと合流し、雑談を交えながら食堂へと向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


食堂


零達が着いた頃には既に大半の生徒が集まっていた。

しばらく雑談をして時間を潰すと、担任が前に立ち、


「みなさん! これから勉強合宿を始めます! 頑張りましょう!」


勉強合宿がいよいよ始まった。

とりあえずは19時半までの1時間半勉強の時間だ。

誰1人話すことのない無言のままゆっくりと時間は進んで行く。

零も黙々と今日でた課題を処理していたその時、


「ぶぁっくしょん!!!!!」


とてつもなくでかいくしゃみが、静かな空間を破壊した。

みんなの視線が一点に注がられる。

その先にいたのは彼だ。


「ゴンちゃんかよ」


そう、漫画のようなくしゃみをしたのはゴンちゃんだったのだ。

すぐに大爆笑が起き、静かだった空間はどこかへと消えてしまう。

しかし、1人だけ笑っていなかった。

それは偶然にもゴンちゃんの前に座っていた鳥黒だ。


「ふざけんなよ!」


何を怒っているのかと思い鳥黒の方を見ると、鳥黒のノートにゴンちゃんの鼻水が飛んでいたのだ。


「ありゃ怒るのが普通だな」

「だな」


ゴンちゃんは、


「ごめんって」


誤っているようだがその程度で許しはしないようで、


「マジでふざけんなよぉ!」


まさに一触即発かと思った時担任が止めに入る。


「2人とも座りなさい!!!」


担任のその一言で2人は席に座る。

担任が何とか、なだめているようだが、正直零にとってはどうでも良い。

担任が2人につきっきりになってる間にみんなは自由に話を始め、最早勉強をしてる者などいなくなり、静かだった空間は完全に死んでしまった。


零は窓から空を眺め、


「大丈夫かな」


無意識のうちに聖奈を心配していた。

その後は予定通り進んでいき、就寝時刻となった。

だが、どうしても寝付けない零は、こっそり持ち込んだ携帯で核原達とやり取りをしていた。

くだらないやり取りをして笑っていたある時、平岡からこんな文が来た。


「結局聖奈のことどう思ってんの?」

「どうって…」

「好きか嫌いかだよ」


零はしばらくしてから、


「わからねえ」

「まだ悩んでるんだな」

「あぁ」

「ま、実際答えは出てると思うぜ?」

「そうか?」

「あとはお前が素直になるだけだよ」

「素直に…」

「先生来たからまたな」

「あぁ」


その文を送った後、零達の部屋にも先生が訪れることはわかっていたので3人とも寝ることにした。

起きてるのがばれたら怒られるしな。

しかし、零は寝ることは出来ずに先程の答えとやらを考えていた。

聖奈と会った日からのことを思い出していた。

無茶苦茶なことばかりだったけど、どのことを思い出しても零は笑っていた。

そして気がついた。

楽しかったんだと。

昔と変わらず聖奈のことが好きなんだと…


「俺って一途だな」


そう小さく呟き、決めた。

明日聖奈に告白しようと。

もう付き合ってるでしょとか言われて怒られるかもしれない。

でも、きちんと言っておきたい。

きちんと伝えたいのだこの気持ちを。

明日告白することを密かに決めて寝る事にした。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


次の日、聖奈は学校には来ていなかった。

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