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勉強合宿


「みなさんおはようございます!」


元気に挨拶をしたの担任だ。


「今日からの勉強合宿頑張りましょう!」


朝のホームルームが終わり1時間目の授業となった。

そうは言っても勉強合宿の説明の時間なので楽だ。

鼻歌を口ずさむ零に核原が話しかけてくる。


「随分機嫌良いな」

「楽しみだからな」

「この内容のどこに楽しさを見出せるんだよ…」


そう言った核原が手に持つプリントにはこう書かれている。



6時起床7時まで自主勉強

7時より朝食

8時学校へ向け出発

8時15分到着

9時授業開始

17時授業終了

17時30分学校出発

17時45分到着

18時より19時30分まで自主勉強

19時30分夕食

20時風呂

21時より23時まで自主勉強

23時就寝



楽しげな要素は皆無である。


「こいつは家にいなくて良いってだけで嬉しいんだよ」

「平岡うるせえぞ」

「普通家のが良いけどなぁ」

「そこ! おしゃべりしてないで話聞きなさい!」


叱られてしまった。


「怒られちまったじゃねえか」


零が文句を垂れると、平岡は、


「人のせいにするなっての。まあ、だるいけど頑張ろうぜ」


そうこうしているうちに話は進んでいき部屋割りの時間となった。


「部屋割りですが仲の良い人だけで固まるのも良いですが、新しくお友達を作って欲しいということで私が決めました!」


これは想定外の発表だった。

当然のようにブーイングが起こる。

しかし、決定は揺るがぬようで、部屋割りのプリントが配られる。

この内容によっては流石の零も楽しくない。

零は神に祈りプリントを見る。

零のところに書かれていた名前は2つ。

菅野祐すがのゆう、高野龍二。


「龍二一緒じゃねえか!」

「うぇーい」


零と龍二はハイタッチを交わし、喜びを共有する。

一方平岡と核原はと言うと、


「一緒だなー」

「よろしく!」


どうやら2人も一緒のようだ。

しかし担任の話からすると全員バラバラかと思ったが案外固めてくれていたようだ。

まあ、無理にバラけさせてもいいことはないだろうという判断だろうか。

他の組も思いの外固まっていたが、各班に1人浮き気味の人が入っている感じのようだ。

どうにか仲良くなれと担任からの無言の圧力だろう。

直ぐに班であつまり話をすることになった。

仲良くなるための時間らしい。

意図を読み取った零は、菅野のところに向かい、


「よろしくなー」

「あっ、うんよろしく」


ちょっとマスクをしている辺り風邪でも引いているのだろうか。

龍二も呼び、菅野の席の周りに集まり適当に話をしたが、どうやら悪いやつではなさそうな感じだ。


こうして1時間目の授業は終わり、真面目な授業へと移行する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


4時間目終了のチャイムと共に零の腹の虫も鳴き声を上げる。

ランチタイムである。

もう当然のように、外で待っている聖奈、直広と合流し、天馬の待つ学食へと向かう。

この役割はもう確定らしい。

向かう最中は、勉強合宿の愚痴をみんなでワイワイと話しながら向かった。

聖奈だけは別の愚痴になっていたが。

そんなに嫌なのだろうか?

勉強する時間が多いとはいえ、その分課題量も増えてる。

課題だけこなしてればいいだけな気がする。

どうせやらねばならないことなのだ。

どこでやろうと零的にはさして変わらなかった。

学食に着いた後も話題は同じで、


「ほんっとだるいよなぁ…」


核原は相当嫌らしい。

死にそうな顔をしている。


「ほんとそれな。どっかの誰かさん以外は普通嫌だよなぁ」

「誰のことやら」

「どう考えてもお前のことだろ」

「なおも嫌じゃねえよな?」

「ん? まあな」

「マジかよ…」

特待生おれらはいつもちゃんと勉強してるからな」

「嘘乙」

「ひでぇ」


直広は笑いながらそう言うと、聖奈の方を一瞬見て、


「ま、楽しみましょうぜ」

「私は零くんと一緒じゃないと楽しめないわね」

「相変わらずラブラブだね」


核原が恨めしそうに零を見ながらそう言う。

龍二が時計を確認し、


「おっ? そろそろ時間だな戻ろうぜ」

「だな」


零がそう言って立ち上がった時、


「ちょいと話すことあるから残ってくれ」


直広が腕を掴みそう言うので残ることにした。零、直広、天馬以外の他のメンバーは片付けを済ませ、教室へと向かった。


「なんだよ話ってさ」


話を切り出す。


「聖奈のことだよ」

「聖奈がなんかやったのか?」


天馬がちょっと苦笑いのような顔で、


「うーん…まあそんなとこかな」

「端的に言ってしまえばクラスに馴染めてない」

「聖奈浮いてんのか?」

「まあ、浮いてるね。担任もお手上げで委員長の俺に丸投げだよ」


天馬が疲れ気味にそう言うと直広が、


「天馬もいろいろやってるんだがどうにもならなくてな。と言うか、みんなは仲良くしたいんだけど本人にその気がないんだよ」

「それな」

「それは多分…」

「多分俺達に責任がある…か?」


零は無言で頷く。


「それはわかってる。その上で頼みたいことがあるんだ」

「頼みたいこと?」

「お前から話をしてくれないか?」

「………」

「頼むことが都合のいいことなのはわかってる。だけど頼めないか?」


直広も天馬も頭を下げる。

この2人は本当にいいやつだ。

聖奈の為に真剣に悩みこうして頭を下げているのだろう。

正直何が怒りに触れるかわからない現状、聖奈と話すのは若干怖い。

だが答えは決まっていた。


「わかった。今日時間見つけて少し話してみるよ」


直広と天馬は顔を上げ、


「「ありがとう!」」

「勉強合宿なんていい機会があるんだから今日のがいいだろ?」

「そうだな」

「その代わり…」


零は2人に背を向け、


「合宿中は聖奈のことよろしくな」


2人は笑いながら、


「おう」

「任せなさい」


話の終わりとともに授業開始のチャイムが鳴り響いた。


「「「あっ…」」」


3人の遅刻が決まった瞬間である。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


零達3人は遅刻したため、先生にたっぷりと怒られた。

怒られはしたものの、他のペナルティは無かったのは幸いだった。

そのあとの授業も滞りなく進み帰りのホームルームが終わったのだが、バスの時間までまだ少しあったので、零は聖奈に話をする為に特待生クラスへと向かっていた。

塔が変わっても変わることのない普通の廊下を歩いていると聖奈のクラスが何組かわからないことに気がつき、近くにいた女の子に聞いてみることにした。


「ちょっといいかな?」

「えっ、はい」

「海月聖奈ってやつ知らないかな?」

「聖奈ちゃんなら同じクラスですよ。もしかして聖奈ちゃんの彼氏さんですか?」

「えっ、いやなんというか…はっは…」


曖昧な態度でごまかす。


「聖奈ちゃんさっき出て行っちゃったんですよね」

「あっ、そうなんだ。わかった。ありがとね」

「いえいえ〜」


そうこうしていると、


「零くん!」


聖奈が現れた。


「よお」


っと手を挙げると、


「会いに来てくれたの!? 嬉しい!!」


聖奈は何時ものように腕に抱きつき、スリスリしてくる。

目の前についさっき会ったばかりの子がいて恥ずかしい。


「やっぱり聖奈ちゃんの彼氏さんだったんですね!」


聖奈そう言う女の子を、鬼の形相で睨み、


「あなた誰?」

「クラスメイトだぞ?」

「聖奈ちゃん酷い! 初日から話かけてるのに! 中村梓なかむらあずさだよ!」

「興味ないもの」


零はそう言い放つ聖奈に軽くげんこつを落とす。


「いたっ!」

「そういうの嫌いだな」

「えぇ〜!」

「聖奈、良く聞け。俺からのお願いがある」

「なになに?」

「クラスメイトと仲良くしてくれ」

「なんで?」

「俺が安心できるからだよ」

「特に問題ないよ?」

「うーむ」


天才と呼べる聖奈的には困ることなど本当にないのだろう。

どうするか考えていると梓が、


「問題です! 私達は仲良くしたいのですよー!」

「私はしたくないわ」

「そう言わずに!」

「俺はそういうの嫌いだぞ、聖奈」

「うーーー」

「急にとは言わないからさ努力してみてくれないか?」

「わかったよぉ…努力してみる」

「やったー!」

「よし!」


何とか聖奈に仲良くする努力をすることを約束させた零は時間を確認する。


「やっべ! もうバスの時間だ! 俺もう行くわ!」


零は大急ぎでバスへ向かった。

途中一度振り返った時の聖奈は少しフラフラしている気がした。

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