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鳥黒圭とゴンちゃん


目が覚めた。

時刻は午後7時半。

零はかけていなかった布団がかけられていることに気がつき、


「後でお礼を言わねえとな」


そう呟くと、


「だ〜れに?」


椅子に座り、ニコニコしている聖奈がそう言う。


「いるならいるって言ってくれ。恥ずかしいだろ!」

「いるよー」

「遅えよ! まあいいや。布団ありがとな」

「うん! ご飯にする?」

「いんや。先ず課題終わらすわ。腹減ってるだろうし先に食ってていいぞ」

「ううん。待ってるよ。零くんに温かいご飯食べて欲しいし、一緒に食べたいから。あっ! 課題わからないのあったら言ってね! 私がわかる問題なら手取り足取り教えるからね〜! わからなかったらお手上げだけど」


零は手を挙げ元気にそう言う聖奈の頭を軽くなで、


「ありがとな」

「うん」


心底嬉しそうにそう答えた。


そして零は出ていた英語の課題である単語調べをやり始めた。

単語調べるだけなので難しさというものはなかったが、単語が多く思ったより時間がかかってしまった。

終わる頃には時計の針は午後8時を超えていた。


「やっと終わったぁ〜」


零がグッと背伸びをしてそう言うと、


「零くんお疲れ様!」

「サンキュー。しっかし、単語量多すぎだろ。これテストで出ると思うとゾッとするってもんだぜ」

「本当だよね〜。私達は毎週末に単語試験だよ! 嫌になるよね〜」

「流石特待生クラス…怖すぎる」

「しかも合格ライン八割で受からないと、受かるまで再試験なんだって〜」

「やべえな」

「ね〜」


軽く愚痴のような会話をして、腹が減っていたのを思い出す。


「ってか腹減ったな」

「そうだね! ご飯にしようか」


そして食事をする部屋へと向かう。

因みに、今回は聖奈が一緒だったので、迷うことなく着くことができた。

晩御飯はハンバーグだ。

これがまた、とてつもなく美味かった。

好物の1つであるハンバーグを完食し、零は風呂へと向かう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


今日もマーライオンのある風呂に浸かっていると、聖奈がやってきた。


「背中流すよ〜」

「お、おう」


若干慣れつつある自分に疑問を覚えつつ、そう答えた零の背中を聖奈は流し始めた。


「今日はお疲れですね〜」


零は真っ赤な顔のまま答える。


「まあな。聖奈もじゃねえの?」

「私もです〜」

「今日は早めに寝るとするかな」

「じゃあ私も」

「別に合わせなくていいぞ。予習とかあるんじゃねえの?」

「全部終わらせてるよ〜」

「流石すぎる」


そう答えた零はうとうとしていた。

それに気がついてか、


「零くん凄くお疲れですね〜。えい!」


聖奈はそう言うと大きな胸を零の背中に押し付けた。


「ぶっ! おま、なにやってんだよ!!!」


背中にとても柔らかい感触が伝わり、零は顔だけでなく、身体中が熱くなる。


「何って、今日こんなに疲れるまで頑張った零くんへのご褒美だよ!」

「マジで離れてくれ!」

「いや!」


聖奈はそう言うと両手を零のお腹に回す。

ひんやりとした聖奈の手が、熱く火照った身体に気持ちいい。


「ねぇ、零くん。エッチなこと考えてるでしょ」

「考えてねえよ!」

「嘘。だってそれ」


聖奈が指をさしたのは零のタオルテントを張った股間だった。


「あーーーー! もう! この状況でエロいこと考えない男はいねえ! いいから離れろ!」


そして無理に聖奈を引き剥がしたのだが、目の前のあられもない姿の聖奈を見てしまい、思わず顔を隠す。

しかし、同時に腰に巻いていたタオルが床に落ちる。


「わお!」

「もう、殺せよぉぉぉぉぉ!!!!!」


顔を真っ赤にした童貞の悲痛な叫びが風呂中に響き渡っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


風呂での事件の後、零はすぐに寝ることにした。

聖奈への怒りはあるが、何が地雷となり、死に繋がるかわからないため、吐き出すことも出来ない。


「零くん、零くん。ごめんね」


布団をゆさゆさと揺らす聖奈に、


「本当だよ…悪ふざけが過ぎるってもんだよ…」


軽く文句を言ってみた。

まあ、返しはだいたいわかってはいるんだけどな。


「私的には悪ふざけじゃなかったんだけどね?」


ほらこうなる。


「うーん…」


どうしたものかと考え、零が出した答えは、


「もう怒ってないから気にするな。それより俺は明日に備えて寝るぞ」


諦めることだった。


「私も寝る!」

「おやすみ」

「おやすみなさい! 零くん愛してるよ」


聖奈はそう言って恒例のキスを頬にし、零の手を握って来た。

零はため息を吐き手を握る。

そして、寝るまでの間考えるのだ。

自分と聖奈の関係について。


「(俺はどうすればいいのか? 聖奈との関係はどうケリをつければいいか? 俺と聖奈のこれからは…)」


そうこうしているうちに、零は睡魔に負け意識を夢の世界へと連れて行かれる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


翌日。

聖奈の声で目を覚ます。

しかし、聞こえてきた聖奈の声は落ち着きが無く、


「零くん! 零くん! マジでやばい! 遅刻だよ〜! 寝坊しちゃった! 後30分でホームルーム始まっちゃうよ!」

「マジかよ!?」

「車用意してもらったから早く行こう!」


零と聖奈は大急ぎで着替え、外に用意されていた車に乗り込み学校へと向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ま〜たギリギリかよ! 夜お楽しみだからかぁ?」

「流石!誰とお楽しみだったんだよ!」

「まさか昨日の聖奈ちゃんか?」

「ヒューヒュー!」


なんとか間に合ったのだが平岡達にからかわれた。


「うるせえぞお前ら!」

「既に彼女持ちとかお前とあいつくらいだぜ?」


平岡が指をさしたのは、入学式に零の隣で寝ていた少年だった。

彼の横にはクラスでも可愛い方の女子がいた。

おそらく彼女が付き合ってる相手なのだろう。

確か名前は、川島直葉かわしますぐは

少年の方は、


「鳥黒…なんだっけ」


そう呟くと平岡が、


鳥黒圭とりくろけいだよ」

「リア充は死ね」


反射的にそう言ってそうな核原。


「匠、ひがみすぎだろ…龍二はひがまないよな」

「まあ、好きな子いるしな」

「誰だよ!」

「気になる」


平岡と匠の興味が龍二に向いたので、のんびりと鳥黒の方を見ていた。

直ぐにチャイムが鳴り、鳥黒も零の後ろの席へと戻り、朝のホームルームが始まった。


その後の授業も滞りなく進み、お昼には何故か教室の前で待っていた聖奈と直広を含むいつものメンバー6人で昼食を済ませ、残りの授業を受けることになった。

因みに天馬は、委員会とかで今日は来れなかっただけで、決してハブかれた訳ではない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


本日最後の授業は特別講座の英語。


特別講座いわゆる特講とは、クラスによってあるところとないところがある授業で、自己紹介等を省いた勉強に力を入れまくった授業だ。

噂によると担当教師は学校でも5本の指に入る程怖いらしく、零達生徒は若干ビビっていた。

いつもなら授業ギリギリまでガヤガヤとしているのだが、今回は5分前の今ですら静かで、席を立つ者もいない。


すごい緊張感だ。

事前にやるところは言われているので、みんな予習は完璧だろう。

そうこうしているうちに教室の扉が開く。

入って来たのは、髪を軽く上げ、目付きはお世辞にもいいとは言えない、いかにも怖そうな顔の男だった。


「それでは授業を始める前に自己紹介を。私の名前は市原聡いちはらさとしだ。よろしく」


声もめっちゃ低い。

まあ高けりゃ怖くないわけでもないが。


「それでは、単語帳レッスン1のページを開くように」


そこからは暫く、お手本の発音を聞いてからの復唱したり、ラジカセから流れる英文を追いながら読んだりとひたすらレッスン1とレッスン2のところを読みまくった。

そして、


「それじゃテストを行うから単語帳しまえ。ラジカセで英文を流すから空欄を埋めるように。確認等が終わったものから前に出して帰って良し」


市原先生はそう言うと、単語帳の英文に空欄の空いたプリントを廊下側の列から配り始めた。

静かな雰囲気のままリスニングが始まると思った次の瞬間、


「先生」


零の後ろの方から声がした。

後ろを向くと、そこには高らかに手を挙げた少年の姿があった。

少年の名前は中村正樹なかむらまさき

自己紹介で圧倒的に滑り、圧倒的なインパクトを与え、顔の濃さから1日でゴンザレス(通称ゴンちゃん)というあだ名をつけられた男だ。


彼は特徴が多い。

例えば、毛穴が広く顔にブツブツがあるように見えたり、滑舌がとても悪いのに声はでかかったり、いつもニヤニヤしていたり、まあまとめるとちょっと気持ち悪いのだ。


そのため弄りという名のいじめがすでに行われているのだが、メンタルが強いらしくどうにも本人は元気なのだが。

そんな彼が何故手を挙げたかというと、


「終わりました」


超真面目なゴンちゃんはおそらく暗記していたのだろう。

すげえなぁと思っていると、


「お前、まだ流してないのになんで終わってるんだ?」

「全部覚えてました」


やはりすごい。

しかし、


「それじゃ、リスニングの意味ねえだろ!!! お前残れ」


まさかの展開だった。

ゴンちゃんは悲しそうな顔で、


「はい」


零はかわいそうにと思いつつリスニングに集中した。

その後、零はプリントの空欄を埋め、前の教卓に提出し教室を後にした。

こうして、零達何事もなく2日目の学校生活を終えた。

ゴンちゃん以外は。


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