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学校生活の始まり


目が覚めると横には当然のごとく聖奈がいる。

零はそれを確認し、昨日のことは夢ではないことを再確認し、聖奈を起こさないようにそっとベッドから起きると、スタンドミラーで寝癖の確認をする。


「夢じゃねえんだよなぁ」


聖奈を起こさないようにしたのは良かったのだが、どうすればいいかわからなかったので、結局聖奈を起こすことにした。


「聖奈、聖奈! 起きろ!」


聖奈はパッと目を覚まし零の首に両手を回し、キスをしてくる。


「何すんだよ!」


慌てて離れそう言うが、


「おはようのちゅー?」


当然でしょって顔で聖奈はそう言う。

こっちは赤面なのにな。


「そういうことするなよ!」

「なんでぇ? 私達夫婦じゃん」

「ちが…」


そこまで言いかけたところで気がつく、地雷だと。

昨日のである程度は理解した。

真正面から否定すると死ぬ可能性が浮上してしまう。

上手く否定しよう


「?」


不思議そうな顔をしている聖奈に、


「あのな? 俺はまだ15だ。聖奈も15だろ? この国では結婚できる年齢に制限があるだろ? 男は18女は16だ。つまり俺達はまだ夫婦ではないんだよ」


これが上手い方法かはわからないが、とりあえず冷静に説明してみた。


結果は…


「そっか! 将来的にそうなるとしても今は違うんだね! じゃあ今の私達はラブラブカップル?」


何とも言えない結果だ。


「………ま、まあそんなところか」

「じゃあちゅーとかしていいんじゃない?」

「わかった。じゃあ、人前でだけはやめてくれ」

「なんで?」

「恥ずかしいから」

「私は平気なのに」

「俺が平気じゃない」

「わかったよぉ〜」


聖奈は頬を膨らませなんとか了承してくれた。

というかカップルなのだろうか?

聖奈は好き好き言ってくれているが、正式に告白された訳でもない。

仮にあの好き好きが告白だったとして、返事をしていない。

正直な自分の気持ちはどうなのだろうか?

零は気持ちの整理が出来ずにいた。


「先にご飯食べようか?」

「そうだな。トイレしてから行くわ。昨日のところだろ?」

「ちょっとゆっくりしててもいいよ〜。サッと作ってきちゃうから」

「えっ、聖奈が作るの?」

「そうだよ〜」


そう言えば昨日の場所は厨房も一緒だったことを思い出す。

しかし、


「大丈夫か?」

「零くん失礼! 私上手いんだから」

「本当か? じゃあ期待しちゃうぞ?」

「いいよ! 任せて」


こうして零と聖奈は一度別れた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


部屋に残される形となった零は、トイレを済ませ、スマホを見て時間を潰していると、平岡から連絡が来ていた。

内容は、今日一緒に行こうぜと言った内容だったのだが、


「これ、どうするか」


間違いなく聖奈と行くことになるのだが、そこに平岡を連れて行くことは、出来るのだろうか?

問題点はそこだった。

どうするかとしばらく悩み、零の出した答えは、平岡にごめん今日はきついと送ることだった。

リスクは減らすに限る。

平岡すまん、本当すまん。


平岡に連絡を取った後に、昨日の場所へと向かった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


一応着いたのだが、2回は別の部屋に着くという方向音痴なところを披露した。

広すぎるのが悪い。

そんな無駄な動きをしていたので、既に軽く疲れていた。

そもそも、体はそこまで休まっていなかったのかもしれない。

あんま眠れてないし。


零が席に着くと、ごく普通の朝食が出てきて、ある意味驚いた。


「ギャップやばいな」

「手の込んだのは土日とかに作るよ。 学校のときは時間ないから許して!」

「許すも何も、変に緊張しなくていいのは助かるよ」

「それなら良かった!」


そう言って抱きついて来る聖奈を無視し、食事をとり始めた。

卵もベーコンもご飯も全てが、普段食べていたものより格段に美味く、またもや驚く事となった。


「うめ! うめぇな!」

「良かったぁ〜」

「てか絶対パンだと思ってた」

「零くんご飯派でしょ?」

「ん? ま、そうだな」

「いつも朝はご飯だったし」

「いまなんて?」

「なんでもなーいよ! あっ」


聖奈はそう言うと零の口元についていた米粒を取り、


「ご飯粒見つけた!」


そう言って笑顔でご飯粒を口の中へと放り込んだ。

この仕草にドキッとした零は目をそらし、


「今日から授業始まるのだるいな」

「そうだねぇ。でも、最初は自己紹介みたいだよ〜」

「そういや聖奈、お前のクラスって特待生クラスなんだってな?」


そう聞くと、聖奈は下を向き、


「そうなの…」


元気をなくす。


「なんで暗いんだよ。凄いことじゃねえか」

「でも、零くんのクラスから遠くて」

「あー、それなんだが学校ではこの関係秘密にしてくれね?」

「なんで?」

「さっきも言ったけど恥ずかしいからだよ」

「何が恥ずかしいの?」

「あー、うー……」


追い込まれた零は少し考え、


「俺と聖奈のラブラブを見せるのは恥ずかしいし、嫌なんだよ」


聖奈はドンッとテーブルを叩き、


「なんで!」


怖すぎと思いつつ、昨日寝れずに考えていたカードを切る。


「2人の時間を邪魔されたくないからだよ。わかってくれるか?」

「嫌。絶対に嫌なの!」

「頼む」

「そんなに私といるのが恥ずかしいの?」

「えっ…いやそんな…」

「なら死ぬ」


そう言うと聖奈はフラッと立ち上がり、厨房より包丁を取り出し、


「零くんの事殺して私も死ぬから。天国でなら恥ずかしくないよね」


切ったカードは悪手だったらしい。


「待ていろいろとおかしい! 天国なら恥ずかしくないってわけでもないし、俺を殺すのはやめようってか死ぬのもやめろ」


近寄ってきた聖奈と距離を取るが、一瞬でそれは詰められ、ナイフが零の顔の横の壁に突き刺さる。

零は心の中で悲鳴を上げ、


「わかった。落ち着け。恥ずかしくなくなったから外でもイチャイチャしよう。むしろしたい! させてください!」


助かるために必死でそう言ってしまった。


「本当?」

「本当本当!」


首をぐわんぐわんと揺らし答える。


「良かった〜」


聖奈はそう言うと包丁を手放し元の席へと戻っていった。

そして零は察した。

自分のことを好き好き言ってくれる可愛い女の子と一つ屋根の下、しかも金持ちだから全てが豪華。

案外いいのかもしれないと思っていたが、


「(死ぬリスクありかよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!)」


そう、死ぬか生きれるかは零の選択次第なのだ。


朝食の後すぐに着替えリムジンという目立つ車にて三桜へ登校することとなった。

死にたかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


三桜学園は3個の塔がある。

A塔、B塔、C塔と呼ばれている3階建ての建物だ。

それぞれの塔は連絡通路にて繋がってはいるが、基本自分のクラスがある塔意外に用はない。

購買も食堂も3個の塔に用意されているしな。


聖奈とはクラスが違うので入り口で別れた訳だが、


「悪目立ちしすぎだろ」


下駄箱で頭を抱えていた。

因みに聖奈はA塔で、零や平岡はB塔。


「見ろよ、あいつリムジンで来やがったぜ」

「私あんなの初めて見た」

「金持ちむかつくわー」

「目立ち過ぎだろ」


否が応でも耳に入ってくる、自分より金持ちどものひそひそ話を聞いてしまい、零はがっくりと肩を落として教室へと向かっていった。


そんな零の後ろに、零の背中をじっと見つめる黒髪の少女の姿があった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ー教室


「うっす」


明らかな悪目立ちをしてしまい落ち込む零に話しかけてきたのは高野龍二たかのりゅうじ

龍二はカラオケで顔を合わせていた数少ないメンバーの1人だ。


「うっす」

「どうしたよ。落ち込んで」

「噂になりゃわかることだが…」


零は今日の事情を省略し伝えた。


「わっは! マジか! リムジンとかやばいな! 今度俺も乗せてくれよ」

「だから俺のじゃねえんだよ。俺の友達のなんよ」

「その友達特待生でなおかつ金持ちとかやばいわ! 今度紹介よろ」

「今度な〜」


そんなことを話していると、


「なんの話?」


平岡が話に入ってきた。


「聖奈のことだよ」

「あぁ」


龍二はちょっとテンション上がりつつ、


「女の子なのか!」

「まあな」

「俄然楽しみ」

「ははっ…」


テンションの上がる龍二とは逆に、聖奈を思い出し気が滅入る。


「聖奈となんかあったのか?」


龍二が席に戻ると平岡が、肩を組みつつ話しかけてくる。

説明の面倒だった零は、


「ま、いろいろだよ。おいおい話すことにするわ。今は寝かせてくれ」

「気になるな〜。ってか寝不足かよ」


平岡はニヤニヤとしている。

零は、それを見て不機嫌そうに、


「寝不足だよ」

「授業初日からそれじゃ先が思いやられますなぁ」

「大丈夫だよ。知ってんだろ? 俺が授業中に寝たことないの」

「知ってる。絶対寝ないよな」

「損するからな」

「さいですか」


零は授業中に寝ないのだ。

何故なら遊びたいからだ。

零は授業中に寝てしまい、試験前とかに家で勉強を必死にやるくらいなら、普段からきちんと授業を受けて、家でやる勉強の時間を自由に過ごしたいと考えている。

なのでこれまでの9年間の学校生活で居眠りをしたことはなかった。


時間を確認し、席に戻る平岡を見送った零は静かに目を閉じる。

すぐに机に振動が来て目を覚ますと、


「あぁごめんね! 起こしちゃった?」

「ん? あー、寝てなかったから大丈夫だ」


目の前には黒髪のショートヘアの少女が焦り気味に話しかけてきていた。


「そっか、良かったぁ。 それじゃあね」


少女はそう言うと自分の席へと座る。

具体的には零の前だった。


零は再び目を閉じ、昨日の自己紹介より名前を思い出していた。

確か…外崎…外崎明日葉とざきあすは

左目の下にある2つの黒子ほくろが特徴かななどと、名前と顔の一致のために覚えようとしていると、


「おはよう」


担任の声が聞こえてきた。

それと同時に目を開け、話に耳を傾ける。

だるくて仕方のない学校生活の幕開けである。

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