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報告と受験


天気が良く、日差しが差し込む窓際で、茶髪のメガネをかけた少年が不機嫌に、声を荒げる。


「なんっで!! 連絡つかねえんだよあいつはよー!?」


少年の名前は核原匠かくはらたくみ


「誰も連絡つかねえんだよなぁ」


頭をかきむしりながら、しなやかな筋肉をもつ少年が困った顔でそう言う。


「龍二やタクはともかく、俺が連絡つかねえんだから相当だぜ」


平岡が焼きそばパンを片手に歩ってくる。

時間は少しだけ戻り、舞台は、零と聖奈が退学した翌日の三桜学院お昼休み。

零と連絡のつかないことを心配した友人が、自然と核原の机付近に集まっていた。

打ち合わせてをしたわけでもないが、全員がコンビニで昼食を買って来ていて、移動の時間を減らし、少しでも話を出来るようにしていた。


「クソッ! 大丈夫なのかよ!?」


核原がイライラしていると、教室の扉が、ガラガラと開く。


「悪い、遅れた」

「生徒指導の先生いて、走れなかったんだよ」


栗原直広と高橋天馬が合流する。


「連絡はついた?」


平岡が尋ねると、2人は無言で首を横にふる。


「やっぱりか」


直広が隣の席の椅子に座り、


「このタイミングで悪いとは思うが、追加ニュースだ」

「どうした?」

「今朝、担任から知らされたんだが、聖奈も昨日退学してるらしい」

「「は!?」」


核原と龍二2人の声がハモる。

天馬が空いてる席の椅子を借り、


「俺らも今朝聞いたばかりで、よくわからないんだけど、聖奈の方は自主退学みたいだね」

「ま、そうだろうな」


落ち着いて平岡がそう言うのを見て、


「なんか知ってたみたいじゃんよ」


龍二が尋ねる。

平岡が少しため息をつき、


「知ってたわけじゃねえけど…聖奈の依存の度合いを知ってたからなぁ」

「それは薄々わかってたけどさぁ…ちょっと過剰じゃねえか?」

「まあ、確かだね。イジメが起こる前まではめっちゃ普通の女の子だったんだがな」


そう言う、平岡は焼きそばパンを口に押し込む。

なんとも言えない顔の直広を見た平岡が、


「まあ、人は何がきっかけでどう変わるわからねえってことだな」

「それはそうなんだろうけど、一緒に辞めてどうなるっていうんだよ」

「さあな」


平岡は、龍二の問いにそう答えた。

だが、平岡は他の友人とは持っている情報量が違う。

唯一、聖奈の連絡先を持っている。

まあそっちも連絡がつかない訳だが。

それでも、連絡がつかない件の理由も一緒に辞めるメリットも検討がついている。

大方、独り占めするためだろう。

2人の時間を邪魔されない様に、零の方も自分のアカウントも学園関係の人をブロックしてるいると言ったところだ。


「まあ、何はともあれどうしようもないってことだな」


平岡がゴミを片手でグシャッとまとめつつそう言うとチャイムが鳴り、休み時間が終わる。

結局この日も連絡は帰っては来なかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


約1ヶ月後


「1ヶ月くらいたったよな? 何してんだよ! あいつは!」

「落ち着け落ち着け」


声を荒げる核原を龍二がなだめるが、


「優真! 小中の付き合いなのに、なんで家がわからねえんだよ!?」

「いやいや、知ってるよ。なんなら行ったけど、引っ越してたんだよ」


平岡が紙パックのイチゴ牛乳を飲みつつ答える。


「引っ越し先は!?」

「聞く前に退学したんだよ」


これについても平岡は知っている。

聖奈の家にいることを。

だが、


「聖奈の家知らねえしなぁ…」


小声でボソッと呟く。


「聖奈ちゃんの方は?」

「片っ端から話しかけて聞いたが、誰も連絡先すら知らねえらしい」

「まあ、あの子浮いてたからなぁ…」

「なんなんだよぉぉぉぉぉ!!!!!」


特待組の返事を聞いた核原が叫ぶ。


「ってかよ。なんでそんな全力なんだ? 俺やなおは付き合い長いし、過去の件での負い目も合ってめっちゃ心配なわけだが、タク達は言っちゃあなんだが、そこまで心配するような関係か?」


などと、平岡がよく考えればなかなかの発言をする。

核原は「はぁ?」みたいな顔をしてから、


「ダチだからだろ。付き合いの長さとか過去のうんぬんとかは関係ねえよ。ダチはダチだろ。それによ…せめて俺は自分の周りの人らくらいは大事にしたいんだよ。もちろんお前らにもなんかあれば、俺は本気でキレる」


少し間を開け、


「恥ずい発言なのはわかってるけどよ。これは個人的なルールなんだよ。高校が決まった時からのな」


核原は恥ずかしさ、悲しさ、怒りなどのさまざまな感情が混ざった顔をしてそう言う。


「その通りだな」


龍二が肩を組みつつ同意する。

天馬は口笛を吹きながら頷き、直広は笑いながら、


「ほんとにお前の周りはいいやつが集まるな…零」


そう言って少し笑う。


「かっけえなぁ……すまん、クソすぎる質問だったな。タクの言う通りだ。今の発言は俺の黒歴史にするから忘れてくれ」


平岡がそう言うと、


「気にすんな」


核原が肩を軽く叩く。


「とは言え、どうしたもんかね」


全員が頭を抱えつつ、お世辞にもいい雰囲気とは言えない状態となっていたその時、


「くっらーい!!」


元気な黒髪のショートヘアに左目の下に2個の黒子ほくろを持つかわいい女の子が、平岡と龍二の間に突っ込んで来る。


「外崎!」


平岡がそう言うと、彼女はニコッと笑いピースをして、


「外崎明日葉ちゃんです!」


元気に自己紹介をする。

外崎明日葉。

女子のカースト上位に君臨し、学園の美少女5本指に1年にして数えられる。

ちなみに5本指は、学園の裏掲示板にて匿名アンケートで、半年に1回くらいのペースで決まっている。


「えーと…?」


困りつつある直広と天馬を見て、核原が、


「うちのクラスの自慢の女子の外崎明日葉さんだ」

「自慢とか恥ずい!」


外崎はそう言いつつ、手を前に出し、


「よろしくねー! お2人さん!」


2人と握手をする。


「俺は高橋天馬、こっちは栗原直広。俺らは特待組なんだ。よろしくね」

「おー! 天才さんだったか!」


場の空気が変わる。

沈みがちの空気は消し飛ばされ、自然な笑顔がちらほら出始める。

こういうのも才能の1つだよなと思いつつ、


「それで、どうしたんだ?」


平岡が尋ねると、


「そうそう! 零くんの連絡先くれないかな? 私からも連絡してみたい!」

「えっ…いやそれは…」


平岡が言葉に詰まると、


「ダメ…かな?」


外崎が下から覗き込む様にそう言ってくる。

正直即答で渡したいくらいかわいいのだが、渡せばどうなるかわからない。

平岡も外崎もそんでもって零も大変な目にあう可能性がある。


「うーん…」

「ダメなのー?」


悩んでいると、


「なんだよケチる必要ないだろ? 明日葉ちゃん、なんなら俺から渡すよ」


それを聞いて、理解する。


「あっ、別にバレねえか」


平岡からとバレる心配も別にないことに気がつく。

彼女に言われない限りは。


「あーごめんごめん! あげるわ! これIDね」


平岡はそう言ってIDを書いた紙を渡す。


「もし返信があって、誰にこのアカウント聞いたかって言われたら内緒って言っておいてくれ!」

「はーい! あっ!」


外崎はそう言うと、平岡のメモ帳を破り、サラサラと書き込む。


「これ私のね! みんな追加してよー!」


そう言って紙を机に起き、ひらひらと去っていった。

言うまでもないが、みんな追加しました。

核原なんか泣きながら、


「零…退学してくれてありがとう…!」

「前言撤回。ゴミ野郎だ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その日の夕方。

この日の授業は短かった。

現状部活にも入っていない外崎は、自転車を立ちこぎし、いつもより急いで家へ向かった。

玄関の鍵を開け、学校支給のローファーを脱ぎ捨てると、階段を駆け上がり、2階の自室へと向かう。

着替えることもなく、ベットに飛び込み天井を見上げ、スマホを取り出す。


「なんて送ろう…」


そう独り言を呟き、文を考え始める。

考えて打ち込んでは消してを繰り返し、やっと送る文が完成する。


「零くん? 久しぶり! 三桜学院の外崎明日葉だけどわかる? 平岡くんにアカウント教えてもらっちゃった! みんな返信来ないって心配してるよ? もちろん私も…もし、良かったら会えないかな? 連絡待ってるね」


何度も何度も確認をして、


「いっけぇぇぇぇ!」


そう言って送信ボタンを押す。

平岡の名前が出ていたことには、送信後に気がついたが、


「聞かれていったわけじゃないから…セーフ……かな?」


などと自分を納得させた。

悩み抜いて送ったメッセージだったが、返事が来ることはなかった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


こうして舞台はこのメッセージが送られた、次の日の聖奈の家に戻る。


「という事です」


電話越しに透き通るような声が聞こえる。


「そう。じゃあ、特に害はないの?」

「はい。身辺調査の結果では、現状友人にすら満たないレベルかと思われます」


聖奈はスマホを片手に、紅茶を優雅に嗜む。


「念のために、監視は続けますか?」

「別にいい。そんな小虫放っておく」

「かしこまりました。聖奈様、先日の依頼のものが本日届く予定ですのでご確認ください」

随分ずいぶん早いね。流石は本邸メイド長と言ったところかな?」

「恐縮です。ところで、愚妹はどうでしょうか?」

「姫花ね。例の件もあるし、そろそろ返そうかと思ってた」

「準備は万端です。完璧に叩き込んでおきます」

「ふふっ、お願いね? それじゃ、ご苦労様でした。パパとママにもよろしくね」

「はい。失礼いたします」


通話が切れると、廊下をドタバタ走る音が聞こえる。


「お荷物届きましたー!」


案の定姫花だ。


「ありがと」


スマホの入った箱を預かる。

中のスマホは最新型……なのだが…GPS、録音、盗聴、遠隔無音録画撮影機能付き、などのストーカー御用達の機能が満載の改造スマホである。


「零くんは?」

「まだ寝てますね」

「渡すついでに起こすことにするわ」

「そう言えば、お嬢様よく許しましたね」

「あの女の件?」

「ですです」


聖奈はニコッと笑いながら、


「普段なら零くんにきついお仕置きをした上で、あの女にも即制裁を下すところね」

「ですよねー…」

「でも、機嫌がいいのよ。零くんとずーっと一緒だから。1回くらい浮気を見逃す気にもなるわ」

「な、なるほどー」


浮気ではない気がするが、当然そんなことは言わない。

聖奈はご機嫌で部屋を後にする。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「寝顔かわいい〜」


零の寝顔を愛おしそうに眺めている。

すると、寝返りをうち顔がこちらを向く。


「あーもう無理!」


聖奈はそう言うと零の唇に吸い付く、


「んんっ!? んんーーーーー!??」


そんな叫びと共に零は起床する。


「はぁ…はぁ…おま……なんてことを……」


息の切れる零とは違い聖奈は艶々の顔で、


「おはよ♡」

「お…おは…よう…」

「はい、これ!」


聖奈はスマホを渡す。


「お…おう、あの不自然な後の残る形で壊れたスマホ治ったんか」


やっと息が整う。


「落としちゃってごめんね?」


明らかに握りつぶした跡が残ってたのだが、これでゴリ押されてる。

もう諦めた。


「これ最新のに変わってね?」

「うん!」

「ありがたいが、中のデータとかは?」

「消えた」

「そ、そうか…聖奈、平岡の連絡先とかは…」

「ない」

「いやでも前にやり取りしてたよね」

「ないって言ってるんだけど?」


ニコッとしてるのに凄まじい迫力。


「はい…」


完全に尻に敷かれている。

いや、まあこうなるのはわかってたけどね。


「それに今日から勉強するんだから、そんなのいりません」

「はい…」


こうして、何故かとてつもなく難しい勉強が始まった。

受験の範囲など軽々と超えているが、それを淡々とやらされていった。

教えるのが上手く、割と直ぐに解いていける。

スパルタということはなく、甘々なので、特に苦ではない。

そうこう勉強をしていき、時は過ぎ…


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


3月

海月家


あれからめちゃくちゃ時は過ぎた。

軽く思い出してみよう。


海やプールは他の女の人が多いので行けず

プール付きの別荘に周防さんを含めた3人で8月まで在住

帰宅後、周防さんが黒服達に連行

躾の時期とのこと


地元で行われる有名な花火大会を見ることはなく、勉強地獄

なぜかこの時期はめちゃくちゃ勉強させられた

月見のみしか休みがないほどに


クリスマスは無事晴れのため、貞操は守れた

年末年始は一族の集まりに参加のため、聖奈と本邸へ

すごくバタバタしていて、聖奈のお父さんとお母さんには会えず

聖奈も忙しいようで、久しぶりに聖奈から解放される

周防さんのお姉さんである周防凛花すおうりんかさんのお世話になる

血の繋がりがあるのか?ってくらいに有能な方だった

年末年始は勉強はほぼなかった

そのための秋だったようだ

ちなみに周防さんはまだ帰って来てない


そして…


「冬は勉強ほぼしてないし、受験の範囲無視してたけど受かってる気しかしない」

「ずーっとやってた勉強は、受験の範囲の知識を応用する感じのところだからだよ! あのレベル問題は楽勝だったはずだよー!」

「なるほど」

「高校入ってからも、勉強には困らないと思うよ!」


そんな話をしていると、時間となった。


「さあ! 零くん、クリックしちゃって!」


聖奈に促され、2つのパソコンをクリックする。

しばしのロードの後、同時に合格の文字が表示される。


「よっしゃー!!!!!」


零は大きくガッツポーズをする。


「また学校行けるね」

「おう!」


こうして、再び三桜学院に入学することが決まった。

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