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速確
熱い。
熱波が体を通過する。
爆発の瞬間。
妹が俺を突き飛ばした。
眠っていたはずの妹の早すぎる行動。
そのおかげで軽い打撲以外は無傷だ。
壁に空いた大きな穴から
帝国軍の兵士が銃撃をしている。
弾が妹に吸い込まれている様だ。
妹の体を突き抜けた弾は威力を落として、
背中から飛び出る。
だが、妹は動かない。
何か考えがあるのか。
それとも。
「お兄ちゃん。逃げて。」
妹が声口を開く。
だが、出された声は
弱々しいものだった。
「そんなこと。できるわけないだろ。」
俺は反論する。
しかし、俺にできることは?
妹を動けなくさせる程の攻撃を
俺は耐えられるのか?
死ぬのは。
死ぬ?
俺は今までの訓練を思い出していた。
死ぬことを恐れない。
それが訓練の目標だった。
俺はいったい。
とりあえず、
近くに倒れている兵士から銃を拾った。
壁に隠れて作戦を考えていると、
拡声器の声が響いた。
「今だ。あの女を捕らえよ。」
俺はその声に死よりも深い恐怖を感じた。
「妹だけは、絶対に渡さない。」