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速兄
夕日が沈む方角に歩き続けている。
妹にはアテがないわけじゃないようだ。
だが、時間はするすると過ぎていった。
その間を使って行われる、
妹のトレーニングは全て死に関係したことだ。
命の危険を感じる時もあれば、
瞑想や雑談で終わる時もある。
妹は口癖のように死は怖くないという。
死なない妹に説得力は無かったが。
だからこそ、死ぬのは怖く無かった。
妹が生きていけるなら命は惜しくない。
俺の為に使っている時間で歩いていれば、
妹が目指す場所に着くことが早まるだろう。
それでも、
妹は俺に色々なことを教えてくれた。
本当は方角が分かっているのに、
夕日にならないと分からないという妹は、
作られた。
泣き笑いのような笑顔をしていた。
昔から嘘をつくのが下手だった。
今日も夕日は前にある。
歩き出した俺たちに、砂地には不釣り合いな車が
猛スピードで迫っていた。