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掌編007『おおさかかいだん』

作者: 綾野祐介

『おおさかかいだん』

                綾野祐介


 気は流れる。高い処から低い処へ。良い気

も流れるが悪い気のほうが顕著ではないだろ

うか。そして高い処と低い処を繋ぐ階段は地

上と地下の異世界を繋いでいるのだ。


 大阪駅を降りる。ホームから出るには上が

ることも下がることも出来るが上がって行く

と新しく作られた駅舎で迷ってしまうのでい

つも下がることにしている。下がると見慣れ

た風景なので安心するのだ。

 改札を出て地下街へと向かう。短めのエス

カレーターを降りるとそこから地下街なのだ

が少し下り坂になっている。地上が坂なのだ

ろうか、地下街の床は下っていく。

 本当なら地上を歩きたい。どの階段を昇れ

ばいいのか分からないからだ。しかし今ちょ

うど阪神百貨店が工事をしていて通れないの

で仕方なく地下を歩いている。

「このあたりか。」と当りを付けて昇ってみ

たが思っていた場所には出られなかった。も

う一度昇った階段を下りる。階段が回ってい

る所為もあって方向感覚が狂う。

 地下街と地上を繋ぐはずの階段。なぜだか

それが別世界への門のように感じる。どうし

ても思った地上に出ることが出来ないのは昇

ろうとした瞬間に別の地上に繋がってしまう

からだ。何か、或いは誰かが目的地に着く事

を拒んでいるかのようだ。

 梅田駅、西梅田駅、東梅田駅。名前だけだ

と近く思うが歩くと遠い。大阪駅からはどの

駅も地下の坂を下るのだ。下った後に階段を

昇る。目的地には着かない。階段を昇るのが

いけないのだ。解っていても昇らないと着か

ないのだから仕方なく地下の坂を下ってまた

階段を昇る。そしてまた着かない。

 こうして私は目的地に着けないまま、大阪

駅に戻る。たどり着けない所為で今年は結局

年末ジャンボが買えなかった。何か、或いは

誰かが私の当選を阻止しようとしているのだ。


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