序幕─Side 奏─
ここは日本国内に無数に存在する神社のひとつ「風蘭神社」。
大昔に建てられた、美しき音楽の神を祭る神社だ。
ここに住む狛犬の片割れ、奏はふわぁとあくびをした。
長き時を経て神の使いとなった奏は、もう片方の狛犬と共にこの神社を見守ってきた。
しかし、時がたつにつれて神社の存在は忘れ去られ、今では閑古鳥が鳴くどころか大合唱をしているのが現実だ。
奏はピクリと耳を動かし、社を見る。
神が祭られている社は、白い光を発していた。
「神様っ!?」
奏は驚いて社に頭を下げる。
こんなときに限って弟がいない。その事に不満を抱きながら、奏は社をチラリと見た。
「風蘭の狛犬よ」
「は、はい!!」
「今、忙しくてそちらに行けないのが残念なのだが……そなたら今、暇であろう?」
「いや、暇では……」
「暇であろう?」
厄介事の臭いがしたので断ろうとしたのだが、神の有無を言わさぬ物言いでは断れない。
この神、いつも我が儘が過ぎるのだ。こっちの気持ちも考えて欲しい。
結局、心の中で泣いて、奏が折れた。
「暇、と言えば暇──」
「それではそなたらに命ずる。これから風蘭の狛犬は相談係を務めさせる。変化の力を授ける故、妾の期待を裏切らぬように」
「変化!?」
パッと笑顔になる奏。
途端に煙が立ち、人の姿に変わる。
銀髪に赤い目の少女の姿だ。
元日本人の奏にとっては馴染みの薄く、違和感のある姿だが、不満は言えない。
何十年も変化の力を取り上げられていたのだ。また取り上げられたりなんて、冗談じゃない。
社から光が消えた。神は去ったようだ。
するとふと、冷静になった。
「え、相談係って……何?」
変化の力に釣られて受けてしまったが、本当に良かったのだろうか?
相談係とかよく分からないし。
うじうじと考えていたら、ふっと気が緩んだ。
「きゃっ」
どろん、と煙が立ち、奏が元の狛犬の姿に戻る。
「……こ、こんなの、どうすればいいのーっ!?」
奏の心からの叫びは、誰にも聞かれず、山々に吸い込まれていった。
♢♢♢
夕方。
なんとか変化を保てるようになった奏の元へ、少女が近づく。
奏は銀色の髪をなびかせて問う。
「もしかして、相談ですか──?」
新しい作品となります。
序幕ですので文章は短いですが、近いうちに第一幕を投稿しますので、続きが気になった方はぜひ、ご覧ください。




