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第十九話:罪

「……俺が、人を殺したのか……? 俺が……殺した……人間を? 違う……俺は殺してない、あいつが勝手に死んだんだ、俺は関係ない、何もしてない!」


ラミレンは地面に座り込み、頭を抱えてブツブツと呟いていた。体の震えが止まらない。


(嫌だ、刑務所なんて行きたくない! 逃げなきゃ、ここから逃げなきゃ! いや……学校だ……教室に戻らないと! 俺のリュック! あの中に俺の私物がある! 着替えて、何食わぬ顔で戻るんだ!)


彼は弾かれたように立ち上がった。頭の中にあるのは一つだけ――証拠隠滅だ。


震える手でポケットからハンターのエネルギーガンを取り出した。必死に自制しようとするが、立っているのがやっとの状態だ。


引き金を引く。エネルギーの閃光が、一階の部屋の壁を貫き、通り道を作った。


ラミレンはその穴へ飛び込んだ。校舎は悲鳴を上げ、炎が梁を舐め尽くしている。彼は半壊した階段にたどり着き、命がけで登り始めた。


四階は、炎の壁と瓦礫の山で塞がれていた。


教室への道は、崩れ落ちた石と燃える木材で閉ざされている。


ラミレンは獣のように唸り声を上げ、素手で赤熱した瓦礫をどけ始めた。皮膚が焼け焦げ、水膨れができても構わなかった。アドレナリンが痛みを麻痺させている。


突破した。


煙の充満した無人の教室に飛び込み、自分の机へ突進する。


「リュック!」


彼は鞄をひったくった。


「クソ、空気が足りない……飛ぶしかない」


肺が焼けるように痛い。ラミレンは有毒な煙に噎せながら、壁の崩落箇所へと走り――下を見ずに虚空へ身を投げた。


着地の衝撃は凄惨だった。


骨の砕ける音が、業火の轟音をかき消した。


「ああああッ! 俺の足が! クソッ……へし折れた!」


彼は地面を転げ回り、苦痛にうめいた。


その時、足音と話し声が聞こえた。


「こっちだ! 誰かいるぞ!」


警察と消防がエリアを捜索している。


ラミレンはパニックに陥った。


(見つかるわけにはいかない! 足よ、治れ、早く治れよ、クソ、クソッ!)


彼は折れた足を引きずりながら這って逃げた。


すると突然、痛みが引き始めた。乾いた音を立てて骨が元の位置に戻り、筋肉が癒着していく。タリスマンが与えた再生能力が、再び彼を救ったのだ。


足が動くようになると、彼は跳ね起き、サッカー場のスタンド裏へとダッシュした。


物陰に隠れ、焼け焦げた服とマスクを脱ぎ捨ててリュックに押し込み、予備の制服に着替える。


身なりを最低限整え、避難している生徒たちの群衆に紛れ込むように走り出た。


不意に、誰かが彼を呼んだ。


マリアだった。彼の姿を見つけるなり、駆け寄ってくる。


「バカ! どこ行ってたのよ?! 心配したんだから!」


彼女は叫び、彼の両肩を掴んだ。その目には涙が溜まっていた。


「心配、ねぇ」


ラミレンは周囲を見回し、自嘲気味に笑った。


「他の連中は俺が生きてても驚いてないみたいだけどな」


「それは……あんたがトイレから警察に通報して、そのまま窓から逃げたって私が言っといたからよ。それだけ」


彼女はボソボソと言い訳した。


「つまり、心配してたのはお前だけってことか?」


ラミレンは彼女の瞳を覗き込んだ。


マリアは火傷したようにパッと手を離した。


「あんたなんかどうでもいいわよ、バーカ!」


彼女は照れ隠しのために、フンと鼻を鳴らして背中を向けた。


「次はあんな無茶しないでよ。危険だったんだから」


「ああ……そうだな。でも他に手がなかった」


ラミレンは自分の手を見た。掌は酷い火傷でただれていた。痛みを顔に出さないよう、眉をひそめる。


マリアが再び彼の方を向いた。その目には安堵の色があった。


「ま、いいわ。無事ならそれで」


「ああ、お前の言う通りだ」


ラミレンは頷き、火傷を隠すように急いで両手をポケットに突っ込んだ。


規制線の近くに、制服姿の男が立っていた。警察のユスフ少佐だ。


「つまり、死者が二名か?」


彼は近づいてきた消防士に尋ねた。


「はい。四階で遺体を発見しました」救助隊員が報告する。「損傷が激しいですが、火災によるものではありません。医師の所見では、致命傷は火事の前に負ったもののようです。炎は痕跡を隠したに過ぎません」


彼は証拠品の入った透明な袋を少佐に渡した。


「それと、この者たちは武器を所持していました。非常に……特殊な代物です」


少佐は袋を受け取り、歪んだ金属を観察した。


「なるほど……。例の占拠グループの一味というわけか」


彼は横に立っていた部下に証拠品を渡した。


「ファリド、これを鑑識へ。ネジ一本まで分析させろ」


「了解です、少佐!」


警官は敬礼し、パトカーへと向かった。


「情報は以上か?」ユスフは再び消防士に向き直った。


「今のところは。引き続き捜索を行います」


「よし、下がっていい」


消防士が去る。少佐はその場に残り、燃え落ちていく校舎を思案げに見つめた。


「興味深い状況だな、ここは……」


彼は独りごちた。


そこへファリドが戻ってきた。


「少佐、報告があります」


「何だ?」


「現場検証班からの情報です。校舎の裏庭で、大量の血だまりが発見されました。それと争った形跡も。何らかの衝突、あるいは戦闘があった可能性があります。奇妙ですよ、ユスフ少佐」


「ふむ……裏庭に血だまりか?」


少佐は顎をさすった。


「結論を出すには早すぎるな。だが、ただの事故でないことは確かだ。署に連絡しろ。この件に関して特別捜査班を立ち上げるよう私が命じたと。真実を解明せねばならん。このまま終わらせるわけにはいかない」


彼は一呼吸置き、尋ねた。


「医師は人質を診たか? 何か情報は?」


「一般的な証言のみです。強盗団が学校を占拠し、何かを探していたが見つからず、放火して逃走したと」


「負傷者は?」


「いますが、大半は煙の吸引と軽度の火傷です。民間人の死者はゼロ。入院した者もいずれ退院できるでしょう」



「捕まえた賊についてはどうだ? リーダーについては吐いたか?」


「いいえ。まるで魚のように黙りこくっています。『リーダーはいない、ただ身代金が欲しかっただけだ』と、判で押したような作り話を繰り返すばかりで。すでに本部へ移送中です。尋問は向こうで継続します」


「きな臭いな……」ユスフは首を振った。「まあいい。俺の命令を本部に伝えてくれ」


「了解です、少佐!」


ファリドが去っていく。ユスフ少佐は特殊部隊の喧騒の中に一人残された。その眼差しは、より一層厳しさを増していた。


「必ず真実を突き止めてやる」


同時刻、組織「ハティ」本部にて。


薄暗い部屋。巨大なスクリーンには、学校火災のニュース速報が流れている。


机の上の電話が震えた。


「ボス、ハンターは一命を取り留めました。現在、集中治療室にいます」受話器から声が報告する。


「そうか。他のメンバーは?」


影の中にいる男は、スクリーンから目を離さずに尋ねた。


「警察に拘束されました」


「まあ、それは想定内だ」ボスの声は落ち着いていた。「タリスマンは……手に入らなかったようだな?」


「残念ながら」


「分かった。全員に達せ。『第一段階』はすでに始まっていると」


「御意、ボス」


通話が切れた。


男は椅子の背もたれに体を預けた。顔は闇に隠れているが、その声には不吉な興味の色が滲んでいた。


「そういうことか……。面白いじゃないか、新しいタリスマンの継承者よ……」


彼は指で机を叩いた。


「我々の精鋭の一人を退けるとはな。奴をあそこまで追い詰められる者は、そうはいない。見事だ」


「必ずお前に辿り着いてみせる」


彼の唇に笑みが浮かんだ。彼にとって、これは終わりでも敗北でもなかった。大いなるゲームの始まりに過ぎなかった。


夜の街は、濡れたアスファルトに反射するネオンの光に沈んでいた。


黒いモノリスのような摩天楼が低い雲を貫き、その頂は電気を帯びた霧の中に消えている。巨大な広告スクリーンが毒々しいピンクや冷たいブルーの光を通りに溢れさせ、夜を終わりのないライトショーへと変えていた。


雨で滑る屋根の上を、一つの影が疾走していた。少年は冷たい空気を貪るように吸い込み、換気ダクトを飛び越えながら、野生動物のような怯えを瞳に宿して何度も背後を振り返る。


追ってくるのは、白髪の男。獲物を追い詰める捕食者のように、滑らかに、音もなく迫ってくる。


少年は急旋回し、拳銃を構えた。震える指が引き金を絞る。


マズルフラッシュが短く闇を切り裂き、乾いた発砲音が夜の静寂を破った。鉛の弾丸が空気を裂き、煉瓦の壁を砕いたが――標的は消えていた。


「クソッ!」


逃亡者は悪態をつき、血眼になって敵を探す。


不意に、目の前の空気が揺らいだ。


男は闇と雨の中から湧き出したかのように、少年の鼻先に現れた。その速度は人間の知覚を超えており、目はブレた残像を捉えることしかできなかった。


師の拳が、岩のように硬く、少年の顎を打ち抜いた。


鈍い打撃音が雨音にかき消される。逃亡者の視界で世界が反転した。足が地を離れ、彼は濡れたコンクリートの上にボロ袋のように叩きつけられた。


力が抜けた指から拳銃が滑り落ち、カシャンと音を立てて屋根を滑っていく。


白髪の男の反応は神速だった。流れるような動作で、止まる前の武器を空中で掴み取り、その銃口を倒れた少年の額へと正確に向けた。


一秒の静寂。


男は銃を下ろした。その唇には、父親のような微かな笑みが浮かんでいた。彼は空いた手を少年へと差し伸べた。


「前回よりは遠くまで逃げられたな。上達しているぞ」


少年は助けを借りて、うめき声を上げながら立ち上がり、すでに青く腫れ始めた顎をさすった。


「あなたを超えるなんて無理ですよ。特に走ることにかけては……先生」


「だが、ヤバい状況になったとき、その速度なら敵から逃げ切れるだろう」


センセイは頷いた。


彼らは屋上の出口へと向かった。白髪の男は器用に指で拳銃をくるりと回し、グリップを前にして持ち主に返した。


「だがいずれにせよ、速度の訓練が最重要というわけではない。敵との戦闘において肝要なのは、力と知性だ。相手が人間であろうと、化け物であろうとな」


「肝に銘じます、カイラカン様」


少年は恭しく頭を下げ、武器をホルスターに収めた。


「堅苦しいのはよせ。俺だってお前のことを『若きパダワン』なんて呼ばないだろう、アナール」


「……先生」


そこへ、赤毛のショートヘアの少女が近づいてきた。彼女は屋上の端で腕を組み、どこか冷めた目でスパーリングを眺めていたのだ。

あとがき


最後までお読みいただき、誠にありがとうございます!

これまでの物語の展開はいかがでしたでしょうか?

物語の緊張感はさらに高まっておりますが、ラミレンは自分を待ち受けるさらなる危機に、まだ気づいてさえいません。

これからも彼を待ち受ける運命を見守っていただければ幸いです。

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