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第十七話:狩人

「そうだな……状況によるかな。どんな愛か、どんな力か……一概には言えない」


(本当は愛を選ぶけどな。でも今それを認めるか? 死んでもごめんだ)


「要するに、分かんないってこと! なんでそんなこと聞くんだよ?」


「ただ気になっただけ」彼女は肩をすくめた。


突然、建物が巨大な轟音と共に揺れた。まるで地下で爆弾が爆発したかのような衝撃だった。


足元の床が抜けそうな感覚、壁が震え、天井から漆喰の雨が降ってくる。耳鳴りが他のすべての音をかき消した。


「何だ?!」ラミレンはよろめいた。


「分かんない……見に行こう!」マリアが彼の手を掴み、廊下へと引っ張った。


そこはすでにパニック状態だった。生徒たちが教室から雪崩れ込み、押し合いへし合い、悲鳴を上げていた。


「火事だ! 火事だぞ!」


誰かが叫び、階段の踊り場から煙が這い上がってくるのが見えた。


「なんで勝手に決めるんだよ?!」階段を駆け下りながらラミレンが怒鳴った。「俺はヒーロー志願した覚えはないぞ!」


「手遅れよ! 走って!」


一階では、群衆が閉ざされた扉の前で立ち往生していた。


「落ち着いて! パニックにならないで!」騒音に負けじと教頭が声を張り上げていた。「配線のショートです! すぐに全員避難させますから!」


(配線のショート? 音は完全に爆発だったぞ……)


不意に、情報処理室のドアが乱暴に開かれた。


そこから一人の男が出てきた。黒いタクティカルスーツに身を包み、目出し帽で顔を隠している。さらに、手には銃があった。


「一歩も外には出さんぞ」


男が大声で告げた。その声は群衆のざわめきを一瞬で押し黙らせた。


続いて二人目が出てきた。同じ重装備だ。


「配線は俺たちが切った。故障じゃない。火をつけたのも俺たちだ。出口はすべて封鎖した。お前らは袋の鼠だ」


同時刻、校長室にて。


「お前は人質だが、だからといって安全は保証しない。余計な動きを一つでもすれば、頭を吹き飛ばす」


二人目の兵士が、銃をもてあそびながら静かに説明した。


校長室には五人の武装した仮面の男たちがいた。


顔面蒼白の校長が椅子に縛り付けられている。その横では、秘書と用務員が重厚な机の脚に粘着テープで固定され、身を寄せ合って震えていた。


学校は要塞へと変貌していた。


一階は武装集団に制圧されていた。二人が廊下を見張り、三人が教師たちを追い込んだ情報処理室を固めている。


その中に、一際目立つ男がいた。


スーツの質が良く、ボディアーマーも新しい。マスクは顔の下半分だけを覆い、冷たく鋭い双眸を晒している。彼がリーダーだった。


男はホールの中心に進み出ると、パン、と大きく手を叩いて注目を集めた。


「私は『グロズヌイ・ハンター(恐るべき狩人たち)』のリーダーだ。単に『ハンター』と呼んでくれ。この学校には、我々が正当な権利を持つ『ある物』が存在する。今から全員、検査のために情報処理室へ移動してもらう。一人残らずチェックする。抵抗する者は即座に処刑する」


言葉の重みを理解させるために、彼は拳銃を掲げ、天井に向けて発砲した。


乾いた破裂音に、群衆が悲鳴を上げて縮み上がる。


「警備員には期待するな」ハンターは冷笑した。「あの老いぼれは最初に片付けた。部下がすでに全フロアを制圧している。お前たちは孤立無援だ」


「言う通りにすれば……解放してくれるんですか?」教頭が震える声で尋ねた。


「ああ。検査が終われば自由だ」リーダーは頷いた。


「ならなんで学校に火をつけたんだ、ろくでなしども!! 何の意味がある!?」年配の物理教師が叫んだ。


轟音が耳をつんざいた。


銃弾が老教師の頭のすぐ横、壁にめり込み、白い粉を浴びせた。


「誰が口を開いていいと言った、ジジイ?!」ハンターの部下が怒鳴った。


ハンターは部下の腕を静かに下ろさせた。


「落ち着け。死体はまだ必要ない。銃を下げろ」


「了解です、ボス……」部下は不服そうに呟いた。


「質問は終わりだ。さっさと部屋に入れ、一人ずつだ!」リーダーが命じた。


ラミレンは人混みの中で、必死に思考を巡らせていた。


(クソッ……動かなきゃ。俺にはブレスレットがある。やるなら今しかない)


周囲を見渡す。警察も消防もいない。


(火事は目くらましだ。通報して、到着して、状況を把握するまでの間に……俺たちは皆殺しにされるか、煙で窒息する)


視線が男子トイレのドアに止まった。


(トイレ! あそこには誰もいない。今、皆が移動してる隙に滑り込めば、チャンスがある)


彼はマリアの耳元に顔を寄せた。


「マリア、援護してくれ。策がある。トイレに隠れて警察を呼ぶ」


「正気?!」彼女は彼の袖を掴み、囁き返した。「撃たれるわよ! 絶対ダメ!」


「待ってたらどっちみち殺される!」ラミレンは強い口調で返した。「火は回ってるんだ。時間がない。やるしかないんだ」


彼女の肩を強く握る。


「頼む」


返事を待たず、彼は身を屈めて壁沿いに滑り出した。


マリアは唇を噛んだが、教師が「ラミレンはどこだ」と尋ねたとき、大声で答えた。


「ここにいます、後ろで靴紐を結んでるだけです!」


ラミレンは影のようにトイレのドアに滑り込み、音もなく閉めた。


心臓が早鐘を打っている。


廊下からハンターの声が聞こえた。


「携帯電話は箱に入れろ! 通報しようとした者は警告なしで射殺する!」


(つまり、時間はギリギリってことだ)


ラミレンはスマホを取り出し、112をダイヤルした。


「もしもし、火事です。でもそれだけじゃない、テロリストに学校が占拠されました。人質に取られています! 急いでください、奴らは武装しています!」


通話を切り、スマホをポケットに突っ込む。


(イタズラだと思われないといいけど……)


手が震えていた。だがここからが本番だ。


彼は腕を上げ、ブレスレットを見つめた。


「頼むぜ……何ができるか見せてみろ」


直感に従い、ブレスレットの金属リングを右に回す。


古代の金属が応えた――青い火花が走り、柔らかな蒼光が手首を包み込む。


瞬間、体が脈打つようなエネルギーで満たされた。疲労が消え去り、五感が極限まで研ぎ澄まされる。


「すげぇ……動いた」


ラミレンはポケットから黒いマスクを取り出した。家から「念のため」に持ってきたものだ(パラノイアもたまには役に立つ)。それを顔に装着する。


(制服が問題だ。身バレする。着替えはリュックの中にあるけど……リュックは三階の教室だ)


(賭けるしかない。ブレスレットが速さをくれるはずだ)


深く息を吸い込み、ドアを蹴り開け、階段へとダッシュした。


ハンターは視界の隅で動きを捉えた。反応は神速だった。


パン、パン!


二発の銃声がほぼ同時に響く。


一秒前まで少年の頭があった場所の壁が弾け飛び、破片が散った。


「外した?!」


リーダーは驚愕して自分の銃を見た。彼が標的を外すことなど、めったにないことだった。


彼は無線機を掴んだ。


「セブンス、エイツ! 誰かが二階へ突破した! 階段で迎撃しろ! ナインス、テンスは三階入り口を固めろ!」


「誰だ、ボス?」無線機が唸った。


「分からん! マスクをしていて、動きが人間離れしている。捕獲しろ!」


ラミレンは階段を飛ぶように駆け上がっていた。足が段差に触れているかすら定かではない。世界がスローモーションに見える。煙の中を踊る塵、二階の踊り場で待ち構える二人の兵士の歪んだ表情まではっきりと見えた。


彼らは銃を構えたが、遅すぎた。


ラミレンは跳躍した。


最初の一人の目元に手刀を叩き込む――兵士は視界を奪われ、うめき声を上げる。二人目の顎へ膝蹴り――骨の砕ける音が響き、男は土嚢のように崩れ落ちた。


空中で身を翻す。最初の一人のこめかみに蹴りを叩き込む。


瞬きする間に、敵は二人とも床に這いつくばり、ピクリとも動かなくなった。


「な……何が起きた……?」


セブンスが血と歯を吐き出しながら呻く。


「動きが……見えなかった……」


「終わった……ボスに殺される……」


エイツが恐怖に喉を鳴らす。


ラミレンは止まらなかった。彼らが落とした拳銃を拾い上げ、さらに上へ、三階へと駆け上がった。


そこではナインスとテンスが待ち構えていた。


二人は即座に発砲したが、ラミレンは前転ですでに射線を外していた。


彼の手にある二丁の拳銃が火を噴く。弾丸は正確に兵士たちの肩を貫き、武器を弾き飛ばした。


ラミレンは速度を緩めず、両足でナインスの胸に飛び込み、教室のドアごと壁に叩きつけた。男は腹を押さえ、壁伝いにずり落ちる。


もう一人、テンスの額に銃把グリップを叩きつけ、体勢を崩した隙に両膝を撃ち抜く。


テンスは絶叫し、左手でナイフを抜こうとあがいた。


ラミレンは冷徹に、彼の右目を撃ち抜いた。


「あああああ! 目が! 俺の目が!」


賊は血の海でのた打ち回る。


ラミレンは彼をまたぎ、無人の教室へ飛び込んだ。ドアを閉め、椅子でバリケードを作る。


アドレナリンが沸騰している。心臓が喉から飛び出しそうだ。


(俺じゃないみたいだ……体が勝手に動いてる。考えられない速度で)


思考が閃く。


(でも、こうするしかなかった)


彼は自分の机に駆け寄り、リュックの中身をぶちまけた。


制服のジャケットとシャツを脱ぎ捨て、黒いTシャツとタクティカルグローブを装着する。ズボンをジーンズに履き替え、スニーカーを履く。脱いだ制服はリュックに押し込んだ。


ドアが衝撃で震えた。


「ぶち破れ!」


外から怒声が聞こえる。イレブンスとトゥエルブスが到着したのだ。


ハンターの無線が入る。


「ボス……」テンスの声は苦痛でかすれていた。「見つけました。あいつです。一分で四人を片付けやがった。悪魔みたいな動きです。顔は見えませんでしたが……間違いなく、探している『モノ』を持ってます。305号室に立てこもりました」


ハンターの動きが止まった。その目が、猛禽類のように細められる。


「了解」


その頃、情報処理室では別の賊が人質たちに命令していた。


「さあ、全員全裸になれ! 何も隠し持ってないか確認する!」


「正気ですか?!」教頭が金切り声を上げた。「そんなことさせません!」


「触らないでよ、変態!」マリアが近づいてきた兵士から後ずさり、叫ぶ。


「中止だ!」


ハンターが怒鳴った。「ターゲットを見つけた」


彼は無線の通話ボタンを押した。


「全隊に告ぐ。一階へ降りて撤退しろ。サーティーンス、フォーティーンスは負傷したナインスとテンスを回収しろ、自力じゃ歩けん。セブンスとエイツは……まだ歩けるな?」


「へい、ボス。重傷じゃありません、移動できます」エイツが答えた。「ですが……人質はどうしますか?」


「放っておけ。証拠隠滅のために火をつけたんだ、それで十分だ。お前たちは行け。俺は少し残る。タリスマンの所持者と思しき奴を、この手で処理しなければならない」


ハンターは無線を切った。彼は情報処理室のドアを一撃で蹴破り、階段へと駆け出した。


教室のドアが木っ端微塵に吹き飛んだ。


「ようガキ、タリスマンはおもちゃじゃねえんだよ」


イレブンスがアサルトライフルの黒い銃口をラミレンの胸に突きつけた。


「大人しく渡せば、命だけは助けてやる」


「学校中を人質に取ったクズどもが、偉そうに命令すんな! 力ずくで奪ってみろよ!」


ラミレンは吐き捨てた。声は震えていたが、その眼には燃えるような怒りがあった。


「なら死ね。チャンスはやったぞ。お前が断ったんだ。ま、どっちにしろ殺すつもりだったがな」


傭兵の指がトリガーを絞る。


銃口から短いマズルフラッシュが走った。


時間が引き伸ばされる。ブレスレットが与えた超常の速度が、鉛の嵐が空間を切り裂くコンマ一秒前に、ラミレンの体を横へと弾き飛ばした。


漆喰が飛び散り、弾丸が壁を粉々に粉砕する。


ラミレンは逃げなかった。一足飛びで距離を詰め、敵の手首に強烈な打撃を見舞う。


握力を失い、ライフルが手から滑り落ちて床を滑る。


ラミレンはバックステップし、ポケットから拳銃を抜き放った――最初に倒した敵からの戦利品だ。


冷たい金属が汗ばんだ掌に食い込む。撃ったことなどない。だが生存本能が彼の手を導いた。


二回、引き金を引く。


銃が跳ね上がり、手首に反動が走る。轟音が廊下を満たし、鼓膜を打つ。


弾丸が肉を食い破る、湿った不快な音がした。


イレブンスが絶叫した。砕かれた膝から血が噴き出し、彼は苦悶にのた打ち回りながら床に崩れ落ちた。


その瞬間、トゥエルブスが反応した。


彼は素早い少年を狙わなかった。脅威そのものを狙ったのだ。


閃光が薄暗い廊下を照らす。


スナイパーのような精度の銃弾が、ラミレンの手の中にある拳銃を直撃した。


凄まじい衝撃で武器が弾き飛ばされ、ラミレンは悲鳴を上げて痺れた手首を押さえた。歪んだ拳銃が隅へと転がっていく。


丸腰になったラミレンは、それでも攻撃を試みた。


全身のバネを使ったハイキックを敵の顎へ放つ。


だがトゥエルブスは熟練の兵士だった。彼は身を沈めて蹴りをかわし、ラミレンのすねを鋼のような握力で掴むと、その勢いを利用して彼を放り投げた。


コンクリートの壁に背中から激突し、肺から空気が強制的に押し出された。背骨に走る激痛が頭蓋まで突き抜ける。


ラミレンは床にずり落ち、空気を求めてあえいだ。


「いってぇ……クソッ……マジで痛え……」


口の中に鉄の味が広がる。


痛みは動物的な恐怖へ、そして恐怖は盲目的な殺意へと変わった。


視線が、弾き飛ばされた拳銃を捉える。数メートル先だ。


限界を超えた瞬発力で飛びつく。


歪んではいるがまだ撃てる銃を掴み、ラミレンは狙いも定めず振り返りざまに乱射した。


ただ引き金を引き続けた。


手の中の暴れる獣が火を噴き、ストロボのように廊下を照らし出す。熱い薬莢が乾いた音を立ててタイルに降り注ぐ。


鉛の雨がトゥエルブスの腹部を引き裂き、ボディアーマーを蜂の巣に変えていく。


一階。


そこは混沌の渦中だった。


「どうすればいいんですか、タマラ・パヴロヴナ先生?」


ゲオルギーは平静を装おうとしたが、声の震えは隠せなかった。彼は縛られた教頭の隣に座り込んでいた。


「もうすぐ消防隊が来るわ。助かるわよ」


女性は答えたが、その目は泳ぎ、パニックを露呈していた。


炎が迫ってくる。熱気は耐え難く、天井からは溶けたプラスチックと燃える瓦礫が降り注ぎ始めていた。


「俺たちみんな死ぬんだ!」


アフトゥンディルが拘束されたまま半狂乱で叫ぶ。


「喚くな、このマヌケ!」


ゲオルギーは軽蔑の眼差しで友人を見下ろし、怒鳴った。


「手が自由なら一発殴って黙らせてやるところだ!」

あとがき


読者の皆様、ここまで読んでいただきありがとうございます!


ついにラミレンにとっての初陣が描かれました。

普段、キャラクター同士の掛け合い(ダイアログ)を書くのはとても楽しいのですが、実はバトルの描写にも並々ならぬこだわりを持っています。今回の激しい戦闘シーン、皆さんに楽しんでいただけたでしょうか?


物語はここからさらに加速し、面白くなっていきます。

ラミレンの成長と、ブレスレットに秘められた力をぜひ見守ってください!


もしよろしければ、感想や評価などをいただけると執筆の励みになります。

次回の更新もお楽しみに!

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