第一話 定められた道(さだめられたみち)
第一章:異質な夢
人間とは何だろう。
自分自身の欲望の迷宮をさまよう影か。
それとも、自分では到底理解できない、もっと大きな何かのための器にすぎないのか。
人は、自分で道を選んでいると思いたがる。
自分の一歩一歩は、自分の意志だと信じたい。
だが、その意志が、生まれて最初の息をするよりもずっと前に、誰かによって書き込まれていたとしたら?
運命という、首にかけられた見えない首輪は存在するのか。
それとも、無限で無関心な空虚の中で、自分が重要な存在だと思い込みたいだけなのか。
「……全能」
声は外からではなかった。
頭蓋の内側で反響し、こめかみを脈打たせる。
それは、廃墟のただ中に立つ、疲れ切った男の重い声だった。
ラミレンは自分の体を見ていなかった。
彼はただ、自分のものではない視界に閉じ込められた観客だった。
周囲には、崩壊した都市が燻っている。
黒い建物の骸骨が空へと伸び、その空は、太陽を知ったことがないかのようだった。
すべてが暗く、世界そのものが永遠の夜に沈んでいるようだった。
記憶――もしそれが記憶と呼べるのなら――が、波のように押し寄せる。
他人のもののはずなのに、冷たく、それでいて恐ろしいほど馴染んでいる。
場面が唐突に切り替わった。
今度は、血が凍りつくような叫びが聞こえた。
「やめろ! やめてくれ! 止まれ!」
ラミレンが今、視界を共有している人物が叫んでいた。
何か恐ろしいものへと手を伸ばしている。
だが、それが何なのかは分からない。
闇が細部を覆い隠していた。
閃光。
別の光景。
森。
あるいは森に似た何か。
葉の代わりに、裸で歪んだ枝だけが広がっている。
「……意味のある存在になりたい……」
声が囁いた。
哀れで、同時にひどく切実だった。
これは誰の言葉だ。
誰が言っている。
なぜ、ラミレンの胸は、自分のものではない渇望に締めつけられるのか。
再び、男の声。
重く、掠れた息に途切れ途切れになりながら、まるで肺が灰で満ちているかのように。
「……なりたい……」
何に?
答えは血の霧の中に溶けた。
深紅の靄が地面を這い、足元を包み込む。
鉄と湿った土の匂いが鼻を突く。
霧の向こうには、闇があった。
濃く、触れられそうな闇が。
新たな幻視が、平手打ちのように襲ってくる。
まだ幼い少年が、頭を抱え、指を髪に食い込ませている。
顔は見えない。
だが、その姿勢だけで、純粋で獣じみた恐怖が伝わってくる。
「どうすればいい?! どうすれば……」
嗚咽まじりに、彼は呟いていた。
追い詰められた獣の恐怖。
吠え出したくなるほどの、逃げ場のない絶望。
「……全能に」
その言葉は、墓石のように落ちた。
同じ男の声。
重い溜息。
そして沈黙。
次の瞬間、万華鏡はさらに速く回り始めた。
顔の断片、光の閃き。
少年が人々の輪の中に立っている。
笑い声。
目に突き刺さる太陽の光。
暖かさ。
喜び。
それらは、太陽にきらめく鏡の破片のようだった。
眩しいが、ほんのわずか。
なぜなら、光の一瞬の後には必ず影があったからだ。
濃く、粘つく闇が前方で待ち構え、その笑顔を飲み込もうとしている。
ラミレンにはそれが分かった。
闇のほうが多い。
闇が勝つ。
彼は、自分のものではない目を通してこの世界を見ていた。
理解できたのは一つだけ。
嵐が迫っている。
「――ああああああ!」
叫びは、目覚めたと理解するより先に喉から飛び出した。
体が跳ね、目を開く。
崩壊した都市の代わりに、巨大な木の葉擦れが頭上にあった。
ざらついた幹に背を預け、彼は座っていた。
木漏れ日が差し込み、目を眩ませる。
「……何だったんだ……?」
掠れた声が漏れる。
手が震えていた。
夢の中の血や灰が付いている気がして、掌を見る。
だが、そこには何もなかった。




