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ノーマル市民

作者: 駄作制作機
掲載日:2025/12/03

なんか書いたもの

恵まれてるね、恵まれてるね。

僕は恵まれている——そう言われ続けてきた。


親は二人そろっている、三分の四。

奨学金は借りていない、二分の一。

死ぬような思いはしたことがない、三分の四。

家事を過剰に背負う家庭でもない、三分の二。

大学は自分の意志で選んだ、三分の二。


そう、僕は恵まれている。

生きてる同級生の中で、僕の環境はずっとマジョリティだ。

僕と同じやつは山ほどいる。

物語の主人公になるのはいつも少数派。

僕はずっと多数派。モブ。幸せなモブ。


だから、教室でいきなり泣き叫ぶ主人公にはなれない。

駅のホームを飛び出すような一行目にもなれない。


恵まれない子どもたちの募金活動が好きだ。

足りない生活をしている誰かの代弁者になれるからだ。

会ったこともない、名前も知らない、

空想上の“可哀想なアフリカ人”を理由にお金を集められるからだ。


そして帰り道、募金で集めた額以上のお金を

平気で自分のために払い、

“良いことしたな”と自己達成感に浸れるからだ。


その瞬間、僕は“何者か”になれる。

そして、助けない大人たちを責められる。

CO₂を撒き散らす企業を“悪”だと名指しできる。

正義はいつだって、手軽で、甘い。


不足がない。

何もかも足りている。

食うに困らない。歩ける。話せる。大学に通っている。

全部そろってる。

イケメンになれないのは僕のせい。

起業できないのも僕のせい。


「舞台は整ってるのに何者にもなれていないのは、

お前が怠惰だからだ。」

——そう言う声が、いつもどこかで鳴っている。


でも、だからなんだ。


一歩踏み出して何になる。

大学を辞めてバックパッカー? ただの高卒の漂流者。

起業? 借金抱えて終わる未来しか見えない。

論文を頑張る? AIでいいじゃん。東大生には勝てないし。


で、何になるの。


でも“何にも決めないその他”にはなりたくない。

だから、一歩踏み出す“フリ”をする。

プログラミングを触ってみる。

営業インターンをしてみる。

簿記3級を取ってみる。

意識高い系の交流会にひょっこり顔を出す。

就活で大人の前では、ハキハキした学生を演じる。

塾バイトを続けて、「教育で日本を変えたい」と言ってみる。


ずっと僕は多数派。

ずっと僕は恵まれている。

恵まれている。恵まれている。

だから——声をあげるな。

どうせ、お前は死なないだろ。

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