表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が描いた絵が62億円で落札された‥だと!?  作者: 角山亜衣
第1部 結城編①

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/36

1-6.逃走者の気持ち

 峰岸さんに正式に調査を依頼して、探偵事務所を後にした。

 調査状況がどうであれ、三日後には連絡をくれるそうだ。


 まだ何の問題も解決してないけど、肩の荷が少しだけ下りた気がした。


 昼過ぎの駅前通り──


 歩道の脇に並ぶ駐輪自転車を避けて歩きながら、調査依頼の前金として10万円を電子マネーで支払ったことを思い返す。


(ちょっとずつ手を付けちゃってるよなぁ。もしも、『入金先を間違えたから全額返金してくれ』って言われたら……、マズいよなぁ……)

 

 しかし、改めて考えてみると、俺が描いた絵が落札されて、その代金が俺の口座へ振り込まれたのだから──


(あの46億円は、普通に俺のものってことで良いはずだよ……なぁー。足りないのは、大金を使う”勇気”なのか?)


 普段は見向きもしない時計店の前で立ち止まった。

 ショーウィンドウには、お高めの腕時計が飾られている。


(あのゴッツイの、10万……となりのが30万! 奥のヤツは68万!?)


 腕時計に興味はないが、金持ちはみんな高級なの付けてるイメージ。

 でもホント、腕時計なんて俺には必要ない。いくら億万長者だったとしても、ね。


 ふと──ガラス越しに、背後に怪しげな男が立っているのに気付いた。


尾行(つけ)られてる? どこから?)


 芹沢さんが撃たれたというニュースを思い出す。

 頭の中には非常警報が鳴り響く。


 落ち着け。

 プランだ。プランを構築するんだ。


(こっちが”気付いた”と気取られたらお終いな気がする。即座に実力行使に出てくるだろう。しかし、そもそも本当に尾行なのか? それを確かめるために、不自然にならない程度に、行ったり来たりしてみよう。そしてコンビニとかに入って、様子を見るんだ。よし)


 体感3秒。

 素知らぬふりをして、その場をあとにした。


 商店街の店を物色するように振る舞いながら、背後の男に意識を集中する。


 やや大きめの黒っぽいスーツ。

 がっしりとした体格。

 薄めのサングラス。

 オールバックに決めた髪形。


 ──怪しさしか感じられない。

 

 商店街は昼下がりにも関わらず、大勢の人でごった返していた。


 コンビニエンスストアに入る。


 店内から入り口を警戒していると、スーツの男はコンビニには入らず、普通に通り過ぎて行った。


(……自意識過剰……過敏になってるだけかな……)


 何も買わずに店を出るのは気が引けるので、店内を物色していると、文房具コーナーで防犯ブザーを見つけた。

 念のため、買っておこう。


 ──コンビニエンスストアを出て、これからどうするか考える。


 峰岸さんのところへ戻ってみるか。


(いや、危険を持ち込んじゃダメだ。男として……)


 では、警察に相談してみるか。


(ストーカー問題とかでは、実害が出ないと警察は動けないらしいから、時間の無駄だろう……口座に振り込まれたお金の話とかに飛び火したら厄介そうだし……)


 そのとき、後ろから声をかけられた。


「あー失礼。キミぃ、結城昇ゆうきのぼるくん、だよねぇ? 少ぉし聞きたいことがあるんだけどぉ、ボクと一緒に来てもらえないかなぁ?」


 振り向くと、グレーのスーツの上着を羽織り、赤いシャツに白ネクタイ。

 長髪を後ろで束ねた男が、あからさまな作り笑顔で立っていた。


(っ!?)


「な、なんでしょうか……てか、何で俺の名っ……いや、人違い、では?」


「はっはっはっ、まぁ、そう警戒せずに。ウチのボスがキミと話をしたいだけなんだ。あまり時間は取らせないから。さ、こちらへ」


 男が誘う先には、黒いセダンが停まっているのが見えた。


(あれに乗せられたら……ダメだ。絶対ダメだ。逃げなきゃ!)


 男の誘いに乗る振りをして油断させて、防犯ブザーの紐を引いた。


【ギャアアアアアアアアーーーーーー!!!】


(なんでホラーな叫び声!?)


 俺も驚いたが、男も十分驚いたようだ。周囲の目を気にしてオロオロしている。


 その隙に、俺は脱兎のごとく逃げ出した。


 さっきまで俺を尾行していたグラサンの男が、騒ぎを聞きつけて戻ってきた。

 今度はあからさまに俺を追いかけてくる。

 ここまで騒ぎになったなら、もうなりふり構っていられないってところか。


 防犯ブザーはスーツ羽織りの男のところに落としてきてしまったので、今はとにかく逃げるしかない。



 しかし! 人混みがっ! 邪魔でっ! 上手く走れないっ!!


 自然と人混みを避けて、人気のない路地裏へと向かっていた。


(ドラマとかで、どんどん人の少ないほうへ逃げてくヤツ……こういうことだったのか)


 よくあるパターンでは、この先行き止まりだったりする。


「待ちやがれーっ!」


 ついに本性剥き出しで追いかけてくるグラサンの男。


 後ろを気にした瞬間──


 ガッ!!


 何かに躓いて派手に転んでしまった。


(ってーー……)


 人だ。路地に転がっていた人に躓いたんだ。

 ホームレスか? 生きてるのか!? まさか死体じゃないよな!?

 

 地面の男はムクリと上体を起こして、キョロキョロと辺りを確認している。

 よかった。生きていた。


「あ、あの、すみません! 蹴とばしちゃって……あの、大丈夫──ですか?」


「んぁあ?」


 男は寝ぼけたように、脇腹を摩りながら大きく欠伸をかいた。

 そこへ、グラサンの男が追いついてきた──


「さぁ、もう鬼ごっこは終いだ。一緒に来てもらおうか。にぃちゃん」


 慌てて立ち上がろうとしたが、足首を捻ったようで、ガクンと尻もちをついてしまった。

 その場から這うようにして後ずさるが、グラサンの男が目の前に迫ってくる。


「さぁ、悪ぃようにはしねぇから、おとなしく──」


「……おい」


 地面の男が、ノロノロと体を起こした。

 ぼさぼさの髪、無精ひげ。コートは何年も着込まれたようにくたびれている。

 迷彩柄のパンツに軍隊が履くようなブーツ。

 ただのホームレスではなさそうだ。


 グラサンの男は一瞬だけ戸惑ったが、すぐに男を睨みつけた。


「なんだよ、オッサン。関係ねぇ奴は黙って寝てろ」


 地面の男──いや、立ち上がった男は、俺とグラサン男の間に割って入った。


「この状況──黙って見過ごしちまったら、得られるもんは何も無い。がしかしだ、オレを蹴ったにぃちゃんを助ければ、どうだろう? 飯くらいはありつける。そうは思わないか?」


「はぁ? 何ワケのわかんねぇこと言ってんだ? さっさとどけ、コラ」


 グラサンの男が闘う姿勢をとった。


 立ち上がった男の表情は見えないが、微動だにせず俺とグラサン男の間に立ちふさがっている。


 しばしの沈黙──


「……っち、今日んとこは勘弁しといてやるよ。にぃちゃん」


 舌打ちして、グラサンの男は引き返していった。


(助かった……のか?)


 立ち上がった男は、俺の方を見下ろして、優しい声で呟いた。


「立てるか?」


 足首が痛んだが、歩けないほどではないようだ。


「は、はい……! ありがとうございます、助かりました……!」


「そいつぁ良かった。そんじゃ、行こうか」


(ぇ……この人も、俺狙い? 単に手柄の奪い合いだったとか!?)

「ど、どこに──」


「どこって……飯、奢ってくれんだろ?」


 立ち上がった男は、そう言って、くったくのない笑顔を見せた。


 ・

 ・

 ・


 悪い人では無さそうだし、助けられたってことで良いんだよな?

読んで頂き、ありがとうございます!

「★★★★★」「ブックマーク」「いいね」頂けると嬉しいです!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ