プロローグ
衝撃的なニュースが飛び込んできた。人気男性アイドルグループ『Spring』が、突然解散を発表したのだ。
「僕たちSpringは、解散します」
ドームツアーの最終日。大歓声の中で最後の曲を歌い終わると、彼らはセンターステージで横一列に整列し、その言葉を発した。客席では、ファンの悲鳴や泣き声、ただ彼らSpringメンバーの名前を叫ぶ声が響き渡っていた。
「Springは、藤奏多、梅田修斗、菜原龍之介、春田和樹、弥生奨太。そして、かつてのメンバーである村崎桜輝の六人で結成されました。様々なことがある中で、ずっと僕たちに着いてきてくれたこと、本当に感謝しています。改めてファンの皆様、今まで僕達にたくさんの愛を与えてくださり、ありがとうございました」
解散、その二文字が大きく映し出されたモニターを背景に、Springのリーダーである弥生奨太は淡々と告げる。彼がマイクを下ろすと、メンバー全員で、深々と頭を下げた。
客席のどよめきも、事前に呼ばれていたであろう報道陣のシャッター音も鳴り止まない。
ステージ上から彼らがいなくなり、退場を促すアナウンスが流れても、会場内にはその場に崩れ落ちた人々、泣き叫ぶ人々、呆然として固まってしまった人々で溢れかえっていた。
騒がしくなったのは、解散発表の現場となったライブ会場だけではない。テレビやネットニュース、SNSでもSpringの解散を伝える速報が一斉に流れた。
連日のように、彼らの今後の活動についての予想や、彼らの口から告げられなかった解散の理由について議論され、嘘か本当か分からない噂も真実かのように広がっていった。