あなたの水掻き
最近、こういうの描いてしまう。
てのひらで掬いあげようとしても
指のあいだから零れていくんだと
あなたは嘆く
流れを掻いて泳いで行こうとしても
細い指じゃ掴めないやって
あなたはうちひしがれる
そんなあなたのゆびのすきまを埋めるように
水掻きが張ったのなら
あなたはどんな顔をして喜ぶだろう
てのひらで掬いあげたら
きっとうまく汲めるはずだし
流れを掻いたら
強く 掴むように遡って
どんな上流まででも 想いのままのはずだ
ねえ あなたはそれで幸せになれた?
欲しいものを 残さず掬いあげられて
行きたいところに どこまでも泳いで行ける
水掻きを手に入れたあなた
そんなあなたの 指のすきまを埋めて
膜を張る 水掻きのことを
あたしは恨めしそうに見る
欲しいだけ 掬いあげて
行きたいところに あなたを泳がせて行ってしまう
あの水掻き
あれのせいで
あたしは あなたと指を絡めることができなくなった
あれのために
あなたは あたしと指を絡めておくより
そのすきまを埋めてしまうことをえらんだ
あたしがのばした手に
もしもまだ あなたがこたえてくれたって
水掻きの張ったゆびのあいだには
もう すきまひとつないから
そこから あなたにはあたしの顔はのぞけない
あたしは あなたの水掻きが大嫌いだ
とっとと
好きなものを好きなだけ掬いあげて
さっさと
どこへでも行きたいところに泳いで行けばいい
あたしは 水掻きのあるあなたなんて大嫌いだ
大嫌いなんだから!
描けるようになったのです。