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俺にチートはないようです。  作者: 滝Daisuke
9/10

新婚さん

普通に寝たな、疲れは…微妙。

まぁなんとかなるか。

「ふぁぁ、ん…おは、よう」

「あぁ、おはよう。お前朝弱いだろ」

「む、昨日は、寝れなかっただけだ。顔洗ってくる」

「寝れなかった、ねぇ」



「さて、行こうか。」

「おう」

「おはようございます」

「あぁ、トースクさん」

「疲れはとれましたか。」

「ええ、おかげさまで」

「そうでしたか、それは良かった。もう出られるので?」

「はい、もう」

「それはそれは、しかし。こんな若い男女がまだ冒険者を始める何て、いいですねぇ。お二人はお付き合いになって?」

「どうでしょう?」

「…」

今のはルナの台詞だ。ワンチャンあるのだろうか。




その後二つの街に宿泊した。

なんとなく思ったことがある。

これは、勇者が通った後のRPGだ。向かう先々の街の問題を解決して。感謝されて、旅だった足跡。俺たちはその足跡をなぞっているだけ。だから何の問題も起こらないし、街の人々はみんな幸せ。

その勇者ムライを、俺は追いかけているらしい。



ユロー王国に着いた。旅に出てから初めての国。森の中のポツポツとある街よりも、遙かに大きな土地だった。

「しかし、意外と早く着く物だね」

「確かに、それにしても。やっぱでかいな」

「国、だからな」

「入国に条件とかあるのか?」

「ない、魔族と魔物以外なら誰でも入れる」

「危ない人間も入って来るんじゃないか」

「王国の警備隊がいるからな。基本大丈夫だ」

「なるほどな。入ろうか」

「あぁ」



「それでこの街では何するんだい?」

「金を稼いで、金を稼ぐ」

「所持金は?」

「金貨一枚」

「きついな。主に稼ぎはクエストだな、気を引き締めよう。この辺りの魔物は、フロー王国の魔物より強い」

「まぁ大丈夫だろ」

「油断するな」

「お前がいる」

「………そう」

「照れた?照れたな!?」

「! [焦がせ]フレイm」

「まーて待て待て。ごめん、ごめんなさい」

「…ギルドに行こう」

「あい分かりました、隊長」

「それやめろ」




「こんにちは。どのようなご用件ですか?」

「クエスト依頼で」

「分かりました。あちらの掲示板よりご確認下さい。」

「ありがとうございます」


「ギルドの人は可愛い人多いよな」

「接客業だから、客引きの為じゃないか。というか、俺からしたらこの世界の人間は美男美女が多い」

「元の世界はどんな感じだったんだい?」

「ん?その、なんだ?画風が、違うというか」

「はっ、なんだそれ」

「クエスト、受けるぞ」

「そうだね」

「あっ、ヒロキ!ヒロキじゃないか!」

自分の名前が聞こえて。思わず振り返る。懐かしい…とまではいかないが、久しぶりの顔だった。

「ウス!」

「私もいますよ」

「レイアも」

「誰?」

「俺がフロー王国でお世話になった人達」

「へぇ~あ、初めまして、ルナです」

「オレン=ウスと」

「オレン=レイアです」

「…あれ?」

「俺ら結婚したんだ」

あぁ、お幸せなこって。

「それは、おめでとうございます」

「あ、なんかすみません。初対面の人に」

「いえいえ」

「おめでとう、二人とも」

「ありがとな」

「ウス、誘ってみない?」

「あ、確かに」

「「?」」

「ヒロキ、ルナ。ダンジョン攻略、手伝ってくれないか」

「ダンジョン?」

「この世界のしきたりなんだ、冒険者同士が結婚したら。一緒にダンジョンを一つ攻略するっていう。とは言っても、昔の風習だが」

「レイアがどうしてもやってみたいって。聞かなくて…」

「えへへ」

新婚だなぁ。

「でもそれ、二人でやらないと意味が無いんじゃないのか」

「周りの人にも祝ってもらう形で参加してもらうこともあるんだ。今は10人くらい集まってる」

ルナがこそこそと話してくる。

「ヒロキ、チャンスだ、ダンジョン攻略は良い鉱石がある、掘って売れば大金になるぞ」

「本当か。よし受けよう」

まぁ金以外にも、この二人はこの世界にきて初めての友人だから、手伝ってあげたいのもある。

「手伝わせてもらうよ、足手纏いかも知れないが」

「いや参加してくれることに意義がある、死なせないし、後悔はさせない。早速来れるか?」

「どうする」

「私は問題ないよ」

「じゃあ行こう」

「よしきた」




「ダンジョンって、いくつもあるのか?」

「あぁ、ダンジョンってのは、墓なんだ。大昔のお偉いさんが自分の地位を証明するための物。そこに魔物がたまり始めた物。お偉いさんほど街から遠くに作って。よりいい財宝を置いたのさ。」

「なるほどね」

つまりこの移動時間が長くなればなるほど危険性が高くなるって事だな。どうじに宝の価値も。

その後三十分ほど森を歩いて着いた。、まぁ妥当なところか。

「ここだ」




ダンジョンの入り口は扉の枠組みだけあって、そこに半透明の膜が掛かってる感じだ。前世の漫画で読んだな。こんなの。

「ダンジョンの中に入るのは私も初めてだ」

「まぁ、今ダンジョンの中には冒険者として年季の入った人たちがいるらしいから。そんなに不安になることないだろ」

「そうだな」

「あぁ、ヒロキ。入る前に一つだけ言っておく。入った後、絶対に僕らが良いと言うまで進まないでくれ」

「そりゃもちろんいいが、何でだ」

「死ぬ」

「えぇ…」

「まぁ、入れば分かる」

「ルナ、俺もすっげぇ不安になってきた」

「遅いだろ」



1割の期待と9割の不安を抱えたまま俺は足を踏み出した。

そこはまさしく異界だった。

先ほどまで俺は地下ある扉の前にいたはずなのに。見上げても天井が見れないほど高い。

そこら中に岩が浮いていて、下から削れたような傷がある。見える範囲の上の方には魔物が飛んでいる。今俺がいる所は浮いている岩でなく、壁の中の洞穴の様な感じになっている。後ろを振り向くとさっきくぐった膜がある。

「危ない!」

翼の生えた魔物がこちらに向かって飛翔してくるのが見えた。ガーゴイルだ。剣を抜き、迎撃しようと足を踏み出そうとする。

後ろから思いっきり引っ張られた。

「違う!魔物じゃない!」

「は?」

顔に水飛沫がかかった。その直後

轟音が鳴り響いて、巨大な水流が落ちてきて。魔物を飲み込んだ。

いや、落ちてきてるんじゃない。逆だ

登っている、水流が。

しばらくして、ガーゴイルだったものが肉片となって落ちてきた。

生唾を飲み込んだ。

「さて、ここから数分は安全だ。次の洞穴まで急ごう。岩に飛び乗って進むぞ」

「ウス、こんな怖い仕組み。もっと早く言って欲しかった…」

「言っても信じないだろ?」

「だとしてもだよ…」

「大丈夫さ。俺がいる限りは死なせない。」

流石イケメンだ。言うことが違う。

「レイアさん」

「何?ルナちゃん」

「一緒に攻略する人がいるって」

「あぁ、この先二つ洞穴を進んだ所で野営してるよ。私たちは食糧調達の為に一回降りてきたの」

「なら、急がないとね」

「のんびりでいいよ~」

うん。微笑ましい。レイアは俺相手だと大分よそよそしいが同性だとあんな感じらしい。ルナも少し口調が違うし。男女の壁って厚いよなぁ。

「ヒロキ」

「ん?」

「あれを見ろ」

ダンジョンの壁に光を放つ鉱石が生えている。生えている?生えてるな。

「…やけにキラキラしてるな」

「あれをげんこつ一個分売れば、金貨一枚手に入る」

「ルナ!袋!」

「分かった!」

「マタナイトといって。魔術師の魔力回復に使われる。魔力の密度が大きければ大きいほど効果があがって、その分値段も上がる。見極め方は光の量だ。俺はあんな光るマタナイト見たことない。掘るのは良いが、急げよ。次の水流まであと七分」

「あぁ、急ぐ」

数秒で袋いっぱいに詰めて先に行く。

「重い」

「あ」

「どうした」

「はい、これ」

布を差し出された。

「なんだこれ」

「…この前説明した。自重を軽くする服。これその袋に被せてみろ」

言われた通りに被せて、再び持ち上げる。

「おぉ!軽い」

これならどんどん進めそうだ。

「魔道具か」

「…自作のね」

「作ってるのか!」

「謎の噂があるが、品質は保証するよ」

「すごいね、ルナちゃん」

「一応、売ることもできる」

「後で見せてくれよ」

「! …分かった」

めっちゃ嬉しそう

「見えたぞ、次の洞穴だ」

全員移動した三十秒後に水流がきた。

振り向くと、マタナイトが生えてた。…どうせならもう少しもって行こう。懐に二つほど入れたところで。

「シァァァァァ!!!!」

魚が飛んできた。1メートルくらいある

噛みつかれると思った時にはもうその魚は勢いを失い、死んだ。

斬った?

「油断大敵だぞ、ヒロキ」

「あ、あぁ。ありがとう」

ウスの手には気がついたら剣が握られていた。

抜いたところすら見えなかった…

また水が落ちてきた。

「よし、次で一旦休憩だ」

「行こうか」



しばらく進むと。そこら中から羽音が聞こえた。

ガーゴイルの群れだ。20匹はいる。

「構ってる暇が無い。振り切るぞ」

「「「了解」」」


ただひたすら走る。

洞穴にたどり着いた。見ると中には大量の冒険者がいた。

間に合ったか?

「ガーゴイルは!?」

「まだ追いかけてきている」

「剣士は下がれ、魔術の遠距離攻撃だけで迎撃しろ!水流が来るまでで良い」

ウスの合図で5人以上の魔法使いらしき人が前に出て、魔法を打ち始める。

ガーゴイルは速いモンスターだ。魔法の着弾率もあまり高くない。

ただあの水流を避ける程の速さもない。つまりこいつらはこの洞穴に逃げ込むしかない。

この穴に向かって一直線に飛んでくる。そこを叩く。

地震だ、水流が来る。

まぁ、後ろに大量に魔法使いの方もいるから、大丈夫だろう。

油断だった。先ほど注意されたばかりなのに。

一匹、違う魔物が混ざっていた。フェネクス。翼のついたオオカミのような見た目をしていて。ガーゴイルの数段早い。

そいつが突っ込んできた。ルナめがけて。魔法使い達の死角から出てきたので打ち落とされる事は無い。

「ルナ!」

ルーティアを抜き、伸ばす。直撃はルーティアの腹で受けることで避けた。が、少しかすったのだルナは魔法の杖の先端付近に魔道具を入れた袋をぶら下げている。それをくくる紐はあまり頑丈な作りをしていない

それがちぎれた。フェネクスの爪に切られて。

その袋は宙を舞い、洞穴の外に出る。

ルナは無意識に声を出したのだろう。

「あ」

「おいおいおい、まさか」

彼女は袋を取りに飛びだす。

そしてそのまま水流に飲まれた。

「馬っ鹿野郎!」

荷物を投げ捨て、俺も飛び込む。

ウスの叫ぶ声だけが聞こえた。




苦しい、でも苦しんでる暇はない。辺りを見回す。

いた、ルナだ。泳いで彼女を抱きかかえる

水を蹴り浮力の手伝いとともに水の柱の頂上に浮き上げられる。

「アホかお前!」

「ごめん。ほんとうに、ごめん」

「とにかく、この状況から抜け出さないと。」

「うん…」

まだ天井は遠い。叩き付けられて死ぬまでは時間がある。

「天井を壊すのは?」

「材質の堅さが分からないし。表面を壊しても、叩き付けられるのは一緒だ。」

「だよな。」

「…魔力があれば、この水を全て凍らせることは。できると思う。私の得意魔法だから。」

「なるほど」

上を見る。もう天井が近い。天井には岩針が大量に敷き詰められている。

殺意高すぎないか?そんなことはどうでも良い。とにかく何か助かる方法は

「あぁ、金に釣られてこんなことになるなんて」

ルナが嘆く。確かに、マタナイトを売って一攫千金とか。そう上手くはいかないか。

さっき欲張って懐に入れたのにバチが当たったのか。…ん?

「…魔力が足りないんだよな」

「あぁ」

俺は懐からマタナイトを取り出して言った。

「これあれば、足りるか」

「!、いつの間に」

「二つある」

「上級魔法になるな」

「行けるか」

「私の責任だ。やる。マタナイトを私の手に」

「よし」

「[凍て尽くせ。我が腕に宿りしは極寒の刑]」

下半身の水温がどんどん低くなっていくのを感じる。正直寒い。

ルナが深呼吸をする。

「[これは終わりの兆候、凍て尽くせ。]エンド・ノヴァ」

水流が氷付いた。

「…ありがとう、ルナ。下半身の氷を溶かしてくれないか。寒い」

「…あ、あぁ。でもちょっと休ませて、くれ、ないか」

「…いや、いいよ。だったら俺がやる。ごめん、上級魔法打った後だもんな、疲れるよな」

「…あり、がとう。ごめん…」

おかしい、なんでも顔色が悪すぎる。力も入って無い。

氷を溶かして、彼女を引き上げる。熱とかあるわけではないし、ただひたすら顔が青い。

魔法を打っただけでこんなになるのか

「ごめん、ちょ、っと」

組んでいた腕を離される。そのまま

吐いた。




運良く近くに洞穴があった。

「気持ち悪い…」

「大丈夫か、何かして欲しいこと。ない?」

「ん、大丈夫。頭痛くて、吐きそうで、目眩がする」

「絶対大丈夫じゃないだろ。次の水流が終わったら、ウス達と合流するぞ、ここで待ってろ医者を呼んでくる」

「待って!」

「…?」

「一人に、しないで」

「…うん、分かった」




しばらくして、ウス達が合流してきた。

「馬鹿野郎!何してんだよ!そばにいてくれないと守れないだろ!死ぬ気か?」

「…すまん」

「もうあんなことするなよ?」

「あぁ、約束する」

「ならいい」

「それより。ルナを様子を看てくれないか、様子がおかしい」

「! わかった」

5分後

「これは、魔力中毒だな、マタナイトを使ったろう?」

「あぁ」

「魔力中毒はその本人が元々保有できる魔力量を体内の魔力量が越えると起きる、ここのマタナイトは純度が高い。いや高すぎる。並の魔術師じゃ、大抵は魔力中毒を起こすだろう。もっとも、トライやスワロスの様な魔術師はそんな事起きないだろうがな。安心しな、時間経過で楽になるよ。」

「………………」

「よかった」

「ルナが回復したら。攻略を続けよう。」

ルナが悲しげな表情をしていた。




その後攻略は滞りなく完了した。それなりの財宝を分けてもらい。次の街に行くための準備も整った。ウスとレイアもルナの魔道具を買っていったり。

街の宝石商にマタナイトを売ろうとしたら、断られた。純度が高すぎて売り物にならないらしい。荷物になるのでなんとかしなければ。

それに、魔導書が手に入った。魔導書とは、そのダンジョンを作った人間固有の魔法らしく。一度読めば、その中に書いてある魔法がほんの一詠唱で使えるようになるらしい。

古代の魔法なので、有用性の高い魔法は少ないらしいが、当たりの魔法は現代魔法を越えているらしい。読もうとしたら。ルナに止められた。

「たまに永続型のデメリットが大きすぎる魔法に当たる」らしい。

どうしようも無くなったらあけよう。




「そろそろ、次の街に行こうか」

「あぁ、そうだな。食料も、装備もある。金も」

「しかし、また徒歩か。なにか、移動手段とかないのか」

「金が掛かるが…馬車がある、あとは龍車とか、普通に空飛んだりだな」

「そんな壮大な何かじゃなくても。もっと身近な…あ」

「?」

「あぁ、そうか。」

「ちょっと、何」

「…」

「さっきからどうした」

「…お前、物に前に進ませる能力を付与させることできたよな?」

「あぁ、できるが」

「こういうもの、作れるか」

俺は紙に設計図を書いてルナに見せた。




エンジンにハンドル。タイヤを二個くっつけた機械。そう、バイクである。


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