魔術師
[ユグレイの森]ただの森と言っても。ギルドが定めている道である。まぁほぼ山道みたいなものだ。まぁ、こちらを殺しに来る魔物がいる山道だが。
「っと」
「初戦闘だな」
「サポート頼んだ」
「了解」
敵は、異世界定番のスケルトン。フロー王国にいた頃何度も狩った。こいつは殺しても血が出ないから精神衛生上的にもいい。ただ、如何せん数が多い。俺一人じゃ少しきつい。
「[立ち上がる力を与えよ]モアアップ」
一人なら。
俺の全身が少し光ってすぐ消えた。行くか。地面を蹴った。
想像の三倍跳んだ。制御しきれない?いや分かる、自分の身体の使い方が分かる。
スケルトンの群れの中に着地して、ルーティアを伸ばす。一気に三体切り伏せる。
そこから一歩、二歩。蹴りを入れる。牽制のつもりが倒してしまった。
さて、残りは
「[焦がせ]フレイム!」
目の前が燃えた、熱い。炎が消えるとスケルトンは全員消し飛んでいた。一瞬である。
「…俺必要か?」
「あぁ、必要だ。魔法使いは魔法を打った後の隙がでかい。モンスターを打ち漏らすと普通に死ねる。」
「でもお前の呪文すげぇ短いじゃん。あとイメージ方なら即打てるし」
「そうだね、数秒で次の魔法が打てる。でも、その数秒で人は死ぬ。」
「なるほど」
「ちなみに私の呪文は短いんだ。私にしか多分できない、イメージ法を使いたくなくて編み出した。」
「あー、例のスワロスが編み出したんだっけ?イメージ方は。そりゃ使いたくないわな」
「…まぁ、そうだね。でもそれと追加呪文でこの前の氷みたいに、途中で爆ぜさせたりできる。これはイメージ方じゃできないし。呪文法でも私しか多分できない。」
「…お前もしかしてすごい?」
「魔法は得意だと思ってるよ」
俺たちは先に進んだ。
道中、いくつか戦闘を挟んだが、特に支障は無かった。魔法の便利さを実感した。
しばらく歩くと、森の中に街があった。初めての冒険にしては実にあっけなかった。
「ドラクエみたいだな」
「なんだって?」
「あーなんでもない。日が暮れる前に着いて良かった」
「そうだな、夜は魔物も活性化する。街は基本魔除けの結界が張ってあるから安全だ。」
「とりあえず、宿を探そう」
「あぁそれに飯だな」
街を見回すとずいぶんと活気づいている。
もう暗くなりそうなのになのに子供は外で遊んでいて、ほとんどの家庭が外でパーティーをしている。ほとんどの人が笑顔ではしゃいでいる。ご近所同士で食料を分け合ってたり。なんか全部の家がアメリカのホームパーティーみたいな。
「…活気づきすぎじゃないか?」
「確かに」
「あぁ、旅の皆様ですか。こんばんは。ここは活気の街フリア。私は案内人のトースクです。」
「活気の街?」
「ええ、つい三ヶ月前までは近くの洞窟に潜む魔物とその子分のせいで畑を荒らされたり、人が攫われたり、様々な被害が出ていたのですが、勇者ムライ様がその魔物を一撃で!それ以来もう連日楽しくて仕方ないですよ!ははははは!」
「なるほど、勇者が」ルナが返事をする。
「とても優しくて、勇敢な青年でした」
あいつもフロー王国から出たと考えると、最初の街はここだろう。
最初の街で問題をあっさり解決か…
しかも三ヶ月前ってことは特訓とか多分して無いしなぁ
「どうした?」
「いや、遠いなぁと」
「気にするな、追いつこう」
「あぁ」
「旅の方々、どうぞ疲れを癒やして下さい。宿はあちらです」
「ありがとうございます」
「いらっしゃいませ、宿屋フリアです」
「何部屋空いてますかね?」
「4部屋空いてますね。一部屋あたり銀貨一枚です。」
「二部屋お願いします」
「待て待て待て」
「ん?」
「君今所持金いくらだ?」
「金貨三枚と銀貨六枚と銅貨4枚。」
「絶対途中で尽きるだろ。」
「でも嫌だろ?」
「そんなこと言ってたら、旅なんてやれやしない。一部屋で大丈夫です」
「かしこまりました」
「さ、いこうか?」
「お、おう」
これは、期待していいのだろうか。ルナは可愛い。そういうことを誘われているのだとしたら、遠慮する理由はない。
扉を開ける前に言われた。
「言っておくが、手を出してきたら、燃やすぞ」
そう言ってルナは杖を回す。
「分かってるよ」
…女怖い
「ベッドは…一つか、安宿だからな。私は床で寝るよ。」
「待て。どうしてそうなる。俺が床で寝る。」
「それじゃあ、君の疲れは落ちないだろう」
「お前だってそうだろ。」
「…じゃあこうしよう」
「添い寝?」
「違う。今日は君がベッド。明日の宿は私がベッドを使う。それでいい?」
「…はい」
「添い寝はしない」
ベッドに倒れ込む。
「あーーーーーー」
疲れたな、この世界に来てから体力作りはしてたが、ずっと歩くって事は無かったな。
ルナが言うにはここからあと二日で次の大きな国に着くらしい。
体力は持つだろうか。まぁ足がズタズタになろうとも前に進むつもりだが、とにかく。今日は休もう。それに、少し、ねむ…
「おーい、おい、起きろ」
「ん…あぁすまん。寝てた」
「まぁ、この街は平和そうだからいいが、気をつけて。宿屋荒しもいるんだ」
「気をつけるよ、俺も風呂行ってくる。………」
「ん、…どうしたじっと見てきて」
「いや、なんでもない」
「そうか」
部屋を出てため息をつく。
ダメだ、風呂上がりの女子が同じ部屋にいるという状況に圧倒的に慣れない。
しかし
「雰囲気変わるよなぁ…」
彼は疲れていたのだろうか。
そりゃそうか、彼にとっては初めての冒険だっただろうし。
私も、初めて屋敷から出たときは…
やめとくか
それにしても彼、さっきは何を見てたのだろうか。
鏡を見る、特におかしい所はない。髪も乾かしたし、寝巻きも割と気に入ってる物だし。
…おかしい所がないからか?
………………
「いや、まさか」
自惚れは良くない。容姿はいいらしいが。
私は奴隷だったのだから。
「うし、上がったぞ」
「おかえり、寝ようか」
「おう」
「おやすみー」
「はーい、おやすみ」
寝られるわけがない、寝られるわけがないだろう。添い寝ではないにしても、美少女と一つやねの下だぞ。
身体、休めないと、寝ないと。
こんな時ラジオを聞いてたな、この世界にラジオってあるのかな。あとテレビとか、漫画とか映画とか、家に帰r…