旅出
7.旅出
誕生祭の次の日。俺はルナとギルドの前で落ち合った。
「さて、取りあえず。これが私のギルドカードだ」
そう言われ見せてもらう
力 D
速さ D
魔法技量 B+
知力 A
運 E
スキル
魔道制作者[マジックメイカー] Sランク
運気とスキルは関係あるらしいが。反してルナのは良いスキルだった。
「お、力と速さと運は俺が勝ってるな」
「なぁ、ヒロキ腕相撲しないか?」
「何だって急に、いいぞ」
ルナと手を会わせる。
まぁ力では俺が勝ってるし、速攻でケリをつけよう。
「[ 我に立ち上がる力を与えよ]モアアップ」
「は?」
ルナの右手が光っている。
「よーいスタート!」
「え。ちょ、まっ」
力を込める。がビクともしない。その直後、俺の右手は机に叩き付けられた。
「私の勝ちだな」
「おいおいおい、納得できねぇ。そりゃ魔法か?」
「ご明察、モアアップ。身体能力が込めた魔力量に比例して上がるっていう魔法さ」
「ずるいだろ、それ」
「この世界の人間は基本魔法が使えるからな、だから正直魔法技量が一番重要なんだ。」
「とことん俺はこの世界に向かないのか…」
「まぁ安心してくれ、私は中級魔法までなら全て使える。この旅が続いている間は私が君の魔法使いになるよ」
「ありがとう、すげぇ頼もしい。」
「そう言ってくれると、嬉しい」
「あ、そういえば。クエストの報酬は半々にして、食費と宿代は俺が出すって事で良いか?」
「食費はいい、自分で出す」
「ん、そうか」
「それより、一応確認しておくが。ギルドルートで行くんだよな?」
「ギルドルート?」
「……もしかして、君何も調べてないな?」
「…そういえば俺何も知らねぇ」
《クソ長説明パート。読んで欲しいけど一ページ後の後半にまとめがあるから読み飛ばしても可》
界の構造を話そう。まず、この世界は`森`に囲まれている。」
「馬鹿だな、君。何も知らないで旅出るつもりだったのか。まぁいい、歩きながらこの世「森?」
「あぁ、私たち人間界では[ユグレイの森]と呼ばれている。この森は世界全体を覆っていると言われていて、その中に人間界、竜界、魔界、獣界、妖精界、巨人界。の六つの
`世界`が存在している。`世界`はユグレイの森にそれぞれ分断されていて、`世界`ごとに魔力の質、地形、生活、文化、何もかもが違う。別の界に行くことはあまりおすすめしない。人間が嫌いな種族もいるからな。それに、[ユグレイの森]は未開の地なんだ。森を越えて別の`世界`に行こうとするのは自殺行為に近い。」
「色んな種族が
ここからはわかりにくい話になるんだが、人間界の中でも、国ごとに森で分断されている。
とは言っても
君は勇者ムライを追いかけるんだろう?なら魔王城が最終目的地になるはずだ。それなら私たちはキンカン王国に行くことになる。キンカン王国には、[ユグレイの森]に通じる道があって、その道を通っていけば魔王城に着く。」
「んーと、俺らがいる世界含めて六つ世界があって。キンカン王国って所から[ユグレイの森]に出て、魔王城に向かうってことか。」
「ああ、そういうことになる」
「ところで、世界が違うんだ、魔王城は遠いんだろう?移動手段はどうするんだ?」
「…魔王城は遠くない、元々[ターミナル]という森の中にある街があったんだ、そこはあらゆる世界から徒歩三日もあれば着く街で、全ての世界の冒険者が集う場所だ。主に森の未開拓エリアを進むための最終準備をする冒険者で活気づいていた。」
「過去形ってことは」
「ああ、魔王軍はある日そこを急襲。そして一夜で滅ぼした。そしてそこに魔王城を建てた。さっきも言った通り、ターミナルは全ての世界に三日で行ける。そして、ターミナル支配から一週間で、人間界以外の世界は。滅ぼされた。」
「は?ちょっと待て。滅ぼされた?魔族に?」
「あぁ、だから今私たちが過ごしてるこの世界が唯一、平和に暮らしてられる世界だ」
どれだけ恐ろしいんだ魔王というのは。それとあいつは戦おうとしてんの?大丈夫か?
「二つ質問していいか?」
「構わない」
「まず、今の話を聞く限り人間界から魔王城に行くまでの道のりは魔王城以外に魔王軍の手が伸びている所がない。だがムライはこの辺の新聞を見る限り魔王城に乗り込んでいる訳でもないのに魔王軍を倒しまくっているって言う話だ。これはどういうことだ?あとどうやって世界を行き来してるんだよ」
「それは、勇者ムライは五つの世界を、全て解放しようとしているんだ。だから、森を通って、色々な世界で魔王軍を倒して回っているんだ。手段はわからない。」
「…あいついつそんな化け物になったんだ?」
「それを私に聞かれても困る。でも彼が初めて魔王軍幹部を倒したのは、彼が転生してから三日という話だ。」
あいつ、絶対チートもらったな。
「つまり俺らがまっとうに進んでいけば、あいつらより早く魔王城に着くんだな?」
「あぁ、まぁ私たち二人で魔王城に入って行くなんて自殺行為だから。一番いいのが、勇者パーティーと合流して行くのが良いだろうな」
「なるほど、じゃあ次だ。何故人間界は支配されて無いんだ?竜界とか巨人界とか、どう考えても人間界より強いだろ。」
「キンカン王国には、最強の魔術師がいる。たった一人で魔王軍が攻め込むのを防いだ魔術師。名前はトライ・カーロス。そんなことは無いと思うが、敵になったらまず間違いなく国一個が滅ぶレベルだな」
「えぇ…」
「まぁ、そうそうお目にかかれるものじゃないさ。まず会うこともないだろう。それで、」
「まぁそうだな。よし、ありがとう。おかげで色々分かった」
「ん、そうか」
今の話をまとめると、
ここには六つの世界があるが人間界以外は魔王に支配されている(人間界、小人界、竜界、巨人界、獣界、魔界。)
人間界はトライ・カーロスという魔術師のおかげで無事。
六つの世界は全て[ユグレイの森]というクソでかい森によって隔てられている。
[ユグレイの森]は未開の地であり。作られた道以外を通るのは危険。
人間界も[ユグレイの森]によって国毎に隔てられているが、世界毎を隔てている森とは違い開拓されていて、通ることも可能。
他の世界に渡るには[キャラバン]という全ての種族が暮らす国に行き、その国から通じる道を通っていく必要がある。
しかし、そのキャラバンは現在魔王軍が本拠地としており、通れない為、他の世界に渡る手段はない。
ムライは支配された世界を解放して回っている。どうやって世界を渡り歩いているのかは不明。
俺らはキンカン王国というキャラバン、現魔王城に道が通じる国を目指している。
キンカン王国を出たら魔王城に向かっていくのでなく、ムライを探して、合流してからあいつの魔王撃退を手伝えたら手伝う。
こんなところか。大分曖昧だが、仕方が無いだろう。
「あ、そうだ。大事なことを言ってなかった」
「ん?」
「キンカン王国への道のりだが、二つある。安全に、この国、フロー王国からキンカン王国まで一本道で行けて誰でも使えるマーケットルートか。危険でいくつもの国を経由、冒険者しか使えないギルドルートか。マーケットならキンカン王国まで直通、ギルドなら次の国はユロー王国、ママト共和国、キネ国、…スワロス王国。などなど…になるな。君は強くなりたいんだろう?だったら」
「あぁ、もちろんギルドルートだ」
「よしきた。それでその入り口が、目の前だ!」
「…死ぬかも知れない道なのにずいぶんと派手だな」
目の前には塗料で彩られた大きなアーチがあった。書いてある文字は「ようこそギルドルートへ」なんか遊園地の入り口みたいだ。
「この道に対して夢を持って冒険者になる人間は多いからね。かくいう私も、憧れていた時期があった」
「諦めたのか?」
「あぁ、オークションの日にな」
「…すまん」
「いいんだ、もう気にしていない。それに諦めた夢が、今から叶う。さぁ、行こう!入ったらすぐ死ぬかも知れない。だけど私たちがこの道を踏破したら、きっと一回りも、二回りも成長しているだろう!一緒に乗り越えようじゃないか!」
ルナの機嫌がかつて無いほど良い。俺もそれにつられてテンションが上がってくる。
「そうだな、行くか!」
拳を前に出す。ルナも応じて拳を差し出す。
ごつん、と鈍い音が鳴り響いた。
「「痛った!」」
互いの手の長さを見誤った。