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俺にチートはないようです。  作者: 滝Daisuke
3/10

初戦

「あ、ヒロキさん」

「こんにちは、受けれますか?」

「いきなりですね、できますよ。こちらにどうぞ」




「武器はこちらから支給させてもらいます。それ以外は認められません。魔術は自由に使っていただいて構いません。一〇分が経過、または戦闘不能とこちらが見なした場合、またはあなたが終了の意思を見せた場合失格として終了、ゴブリン三体討伐した時点で成功として終了とします。」

「わかりました」

「では、始めます」

「はい」

「始め!」




暗がりから呻き声が聞こえる

まさにゴブリンといった感じだな…

手には二刀、双剣を選んだ。俺に武器の心得はない。だからかっこよさで選んだ。

前を見据える、こいつらはただの踏み台だ、俺があいつを追いかける、ただの踏み台。

俺は囲むように詰めてくるゴブリンに肉薄した。

石斧を振りかぶったゴブリンの攻撃を避けて一閃、叩き切る。想像の三倍ほどの柔肌だった。

続いて2匹目。打ち合う。力は…俺の方が上のようだ、ゴブリンが体勢を崩す。

トドメを------    「っ!!!」

肩に鈍い痛みが走る。

3匹目か!傷がついた、直るのだろうか。刀を落とした。それに、挟まれている。

二匹は同時に、左右から攻撃してきた。

回避を、すんでのところで避ける。耳の隣で石斧がかち合う音が聞こえた。

刀は一本、敵は二体。右から左に渾身の力で振り抜く。二匹とも切り裂けるように。



左の肩が濡れているのは、俺のか、ゴブリンのものか。


「……し、試験合格です」

「ありがとうございました」

「あっ、今傷を治します、じっとしてて下さい」

「分かりました」


治療されるとともに頭が冷えてくる、冷静になった。俺は興奮していたようだ。

傷が治って、ふと振り返る。


血があった、死体があった、当たり前だ、俺が殺した、俺が殺したんだ。俺が殺した?

俺が殺した。


俺は吐いた。




俺は冒険者になった、だが、正直ここから上手くやれるか分からない。多分俺は死体に対する態勢がない、絶望的に

「そりゃあ今までぬるま湯みたいな世界にいたからな…」

俺は今まで魚が捌かれているところすら見たことない、これから慣れていくのだろうか、生き物を殺す。その生き物が築いてきた物を全部ぶち壊しにする。そう思うと身が竦む。

でも、

「行かないと」

なにせ俺には、今日の飯代すらない。





「ゴブリン10体の討伐ですね、承りました。では気をつけて下さい」







国を出ると、草原に出る。草の匂いが鼻孔をつき、深呼吸をするとなんだか懐かしい気持ちになった。おもえば街の外に出るのは初めてだ、迷うか心配だがギルド特製の地図がある、現在地が分かるおまけ付きだ。

地図を見ながら目的地に向かって歩いて行く。


いた、ゴブリンが約10体ほどいる。この前は三体でも傷を負った。油断してはならない

「行くか」

目を見開く、剣を引き抜き、全力で一番手前にいる獲物に斬りかかった。

斬りかかる直前に気づかれるが、遅い。

血が吹き出るとともに開戦のゴングが鳴った、後9体。

草の匂いに鉄くさい香りが混じる、横は見ない、これは奇襲だ、相手が陣形を崩す前に倒せばいけるはずだ。

ゴブリンが石剣を振りかぶってくる、馬鹿正直に打ち合ってはいけない。横から剣を当てて逸らす。もう一本で胴体を切り飛ばす。目の前で腸が飛び散る。

「っっっ!!!」

向き合え、じゃないと超えられない。

すぐにでも倒れ込んでしまいたい、だがそれは許されない。二体同時に近づいてくる。片方は蹴り飛ばす、もう片方は斬り抜く。後七体。

周りを見渡す、地面に転がる同胞の死体など見えていないかのように踏みつけながら3体が俺を囲んでいる。残りの四匹のうち、一匹は転んだまま、さっき蹴り飛ばした奴だ。三体は囲んでいる奴のさらに後ろにいる。前衛が死んだら来るのだろう。前よりひどい状況だ、だが俺は前とは違う。俺は学習するのだ。この中で戦えば確実に傷を負う。だからといってこの囲みから逃げてもダメだ。

だから、戦わない。ひたすら避ける。

一撃目、しゃがむ、上で石の武器が欠けた

二撃目、前転、一匹味方の攻撃で死んだ。

三撃目、避けられない。それでいい、二体なら。それぞれの武器を双剣で受け止める。一匹の足を薙ぎ払う。頭を刺し潰す。もう一匹は腹に剣を突き刺す。

すぐ後ろにいたゴブリンが襲ってくる。転んでた奴も参加して四匹で。

戦法は変えない。数は増えたが、その分ゴブリンも動きにくいはずだ。

一撃目 想像通り二体しか攻撃してこない。前転で避ける。

二撃目 目の前にいた一体の足を切りつける。行動不能。

さんげk_____

吹っ飛んだ。

「あぁ!」

痛みで身が竦む、外傷はない。蹴られた、蹴られただけで吹き飛んだ。何に蹴られた。

前を向く。

「ざけんな…」

本来出るはずのないエリアに強いモンスターが出るのは異世界物にありがちだ。だが

「なんだってキングゴブリンなんか、他のチート持ちの奴らのところ行けよ…」


この世界の本によるとゴブリンは4種類いる。

ゴブリン、ボブゴブリン、ボスゴブリン、キングゴブリン。

名前が変わるごとにゴブリン五体分の強さが増えていく。つまり目の前にいるのはただのゴブリン16体分。必要平均ステータスはC~B+。どう考えても今の俺には勝てないモンスター

つまり、俺では到底倒せるモンスターではない。

「畜生!死んでたまるかよ…!」

俺は逃げ出した。

奴は追ってくる。追いつかれたら俺は死ぬだろう。どうにかして巻かなければならない。

すぐ後ろで衝撃音がした。飛んできたボスゴブリンが振り下ろした斧が地面を砕く音だった。

「早いんだよ!!クソが!」

一心不乱に走る。何だってこんなことに、何だってこんな死にそうな目に遭わなきゃいけない!冒険者になんかならなければよかった!こんな事せずに、ぱっぱと商人にてもなって!まず何で冒険者になろうとしてんだ俺は、なんでこんな馬鹿なことを

「あ。」

転んだ。気づかないうちに地面が濡れていた、水だろうか。地図が落ちてしまった。それより、死が急速に迫ってきている。

「あぁ、そうじゃないか」

ボスゴブリンが斧を振りかぶりながら弾丸のような速さでこちらに迫ってきている

「俺はあいつに会うために、冒険者になったんだ」

俺も意志が弱い、こんな大事なことを忘れるなんて

「その途中で死ぬならそれまでだって、言ったな。俺は」

それでも、足掻いてみなきゃ。

ボスゴブリンが目と鼻の先までの距離まで来た。剣を片方捨てる。剣の柄と峰を支える。ボスゴブリンが斧を振り下ろす。

武器がぶつかり合った。

「あああああああああ!!!!!!」

両手に今まで感じたことのない痛みを感じる。幸い斧は軌道をそらした。左手が折れて、剣が坂みたいになったのが働いてずり落ちたのだろう。水が飛び散って顔に掛かる。

だが左手は折れた。もう動かない。

もう一度打たれたら死ぬな。

そのもう一度を放とうとボスゴブリンが踏み込む

ボスゴブリンが派手に転んだ。

「なんで」

ふと地図が目に入る。

`油田エリア`

俺の運はまだ捨てたもんじゃないらしい。それともあのやたら高圧的な神様に会ったからだろうか。でもそれなら。

まだ勝機はある。

俺は転ばないように距離を取る。

奴はもう起き上がった様だ。こちらに再び向かってきている。

記憶を呼び起こす

「自然よ!魔力は満ちて!我が腕に収束せよ!腕よ!魔力を回せ!魔力よ!火となり爆ぜろ!」

俺の左手から炎が打ち出される。

といっても小さいただの火球だ。効きはしないだろう。普通なら。

あの液体の滑りよう、そしてここは油田エリア。

「くたばってくれよ」

耳を割るような叫び声と共に俺を巻き込んで業炎が巻き起こった。

肉を焦がす音が聞こえる、ボスゴブリンの体はボロボロになっていた、もうじき死ぬだろう。しかし、まだあいつは生きている。奴の目が明確な殺意を持っている

「せめてお前だけでも」

と言わんばかりに渾身の一撃を放とうと跳躍してくる。

あぁクソ!体が動かねぇ!回避もままならない、受けたらもちろん死ぬ。なにか、まだ何かできることは!

腰に差した棒に手が触れる

「結構な勢いで伸びます」

俺はボタンを押した。

伸びた棒は奴の眉間を叩き、奴は完全に動きを止めた。

正直、賭けだった。まずあれが油なのか、どの程度の炎が起きてそれは俺は耐えられるのか、まず奴に炎が効くのか。

その全ての賭けに俺は勝った。これは偶然の勝利だ。体もボロボロ歩くので精一杯。それでも。

「よっっしゃ」

嬉しいもんは嬉しい。

「グルル…」

ああ、畜生。まだ喜ぶべきじゃないか。

数にしておよそ12、ボスの叫ぶ声を聞いてきたのだろう。ただのゴブリンが俺を囲んでいる、この数は万全なときでも負けるかもしれねぇのに。

剣は一本、右手は折れて、しかもさっきの炎で焼けたらしい、右手が火傷で痛んで思うように動かない。今にもぶっ倒れそうだ。

「こいよザコども!良いハンディだ!」

ぶっ殺してやる。

「アイシクルブレイク!」

一面が凍った。

「大丈夫ですか」

俺の元に美少女が駆け寄ってくるのが見える。

助かったのか?あの子は俺にとってのヒロインなのだろうか。そうだったら良いな。

安心感と痛みで俺の意識は切れた。


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