第十八話 お出かけ
「せんぱいー? 準備できましたか?」
ちょうど着替え終わったところで、白鳥さんがドア越しに聞いてきた。
僕に関しては着替えて寝癖を少し治すだけでいい。しかし白鳥さんは女の子だ。外に出るにも準備の時間はかかるだろう。
「僕は終わったけど白鳥さんはどう?」
「いつでも行けますよー!」
本当か? と少し疑いながらも扉を開ける。
「……準備早くない?」
白鳥さんは先程まで跳ねていた寝癖もなく、これからデートに行くような気合いの入った格好でそこに立っていた。
バカな、僕が着替える五分ほどの時間でここまでの準備を……?
女子とは恐ろしいものなんだな……
「そんなに気合入ってるとこ悪いんだけど、今日はただの買い物だよ?」
それも食料品だぞ?
「ついでに色々見ましょうよー。せっかくせんぱいとお出かけできるんですから」
「まあ、予定はなかったしいいけども」
「それでこそせんぱいです!」
いいように荷物持ちとして使われそうな気もするが、目をつぶろう。ここまで嬉しそうにされると、なんか照れる。
お互いに支度は済んだ、ということで僕達は近くのショッピングモールに足を進めた。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「ひとまず日用品はこれくらいかな」
一通りの買い物を終え、時刻は昼過ぎ。このまま帰るにはお腹が空きすぎている。
二人だしいいか。
「ご飯食べていこっか」
「え、いいんですか!?」
みどり荘の食費を管理しているのは僕だ。そして管理し続けて早二年。このくらいの出費は問題ない。
「うん、好きな物食べていいよ」
僕がそう言うと、白鳥さんは近くにあった見取り図を見て物色し始めた。
僕は特に食べたいものはないし、彼女と同じにしよう。
「それなら……お寿司!」
「えっ!?」
「と言うのは冗談で、ハンバーグとかどうです?」
いきなり何を言い出すのかと思ったが冗談らしい。食べたいのは本当みたいだが、流石にそこまでの予算はない。
でも、今度お寿司でも食べさせてあげよう。
「いいね、ハンバーグ」
「じゃあ行きましょー!」
そういうことでフードコートにあるハンバーグ屋に二人で向かう。
僕もみどり荘で作る手作りハンバーグばかりだったからお店のは久しぶりだな。
ほんの少しだけ楽しみにしながら注文口に向かうと、
「いらっしゃいま、って司?」
はい、ハルが立ってましたとさ。




