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第十四話 ピンチ

「大家さん、どうしたんですか?」


 僕は少しだけ部屋のドアを開けた。廊下にはTシャツを着ただけでズボンを履いていないいつもの大家さん。


 これに慣れてしまった僕も僕だが、大家さんも恥ずかしくは無いのだろうか。一応年相応の男のはずなのにな。


「あのねー、舞ちゃんがまだ寝てるみたいなの。起こしてきてくれない?」


 じゃないとお腹すいてオバサン死にそう、と大家さん。


 良かった。白鳥さんがここにいないか聞かれたらどうしようかと思ったぞ……


「ん、なんで僕なんです?」


「相変わらずニブチンだねー、私からの気遣いよ♪」


 どうやら大家さんは、僕と白鳥さんとの間で間違いがあって欲しいようだ。まあ、今の状況も十分間違いなのだが。


「言っておきますけど、僕と白鳥さんの間には何も無いですよ」


「はいはい、何かある人はそう言うのよ」


 手をヒラヒラさせて大家さんは一階に降りていった。


 とりあえず服を着ろと言って、扉を閉める。


「せんぱい、もう大丈夫ですか?」


「うん、急にごめんね」


 そう言うと、ノソノソと布団から這い出るようにして顔を出した。


 しかし、白鳥さんは頭を出したままで布団から出ようとしない。


「出ないの?」


「せんぱいの匂いと暖かいので出れそうにないです」


 と、惚けた顔で言ってきた。そしてそのまま目を閉じて、


「寝ちゃったよ」


 このまま大家さんに見つかるのも怖いし、白鳥さんを運ぶことにしよう。


 気持ちよさそうに寝ている簀巻きを抱えて、白鳥さんの部屋を開ける。申し訳ない気持ちもあるが、大家さんに勘違いされるよりかはマシだろう。


 前に一度チラ見しただけだったが、白鳥さんの部屋はとにかくかわいい。淡いピンクの壁紙に白を基調としたシンプルな家具の数々。


 ベットには複数のぬいぐるみが綺麗に並べられていて、心なしかいい匂いもする。


「んん、せんぱい……」


「ん?」


 聞き返しても返事がない、ただの簀巻きのようだ。


 しかし寝言でまで僕のことを呼ばれると、流石に勘違いしたくなってくる。でもダメだ、僕はあくまでいい先輩であり続けなくては。


 僕の布団を巻いたまま、白鳥さんのベットに寝かせて部屋を出た。


 このままだと餓死しそうな大家さんのために、朝食を作るべく階段を下りる。


「で、昨晩はお楽しみだったわけ?」


「バレてたんですね」


「流石にねぇ、私が部屋を開けないわけないじゃない」


 それはそうだろう。僕みたいに男ならまだしも、女の人同士ならすぐに部屋を開けてもおかしくはない。


「確かに同じ部屋にいましたけど、大家さんが想像しているようなことはおきてないですよ」


「あら残念、夢の愛憎劇ができると思ったのに」


 大家さんと僕の間には何も無いだろ……それに白鳥さんとも何もないんだし。


 こうして昨日のことを全部言わされることになり、大家さんにはからかわれることになった。


 面倒くさいし、どうにでもなれ……



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